冬の高速道路はEVにはキビしい!? 長距離ドライブで「電欠」の恐怖も? オーナーが語るEVの実態とは

24時間365日充電器が開放されている日産ディーラーは救世主!?

 充電スポットの数や場所が、BEVオーナーにとっては死活問題といえそうです。

 搭載されるバッテリーは外気温の影響を受けやすく、冬など寒い時期は航続距離が短くなることがあります。

 たとえば高速が大渋滞し、さらに雪などの悪天候も重なり冷え込むと、「電欠」という最悪の事態を招く可能性もあるというのですが、実際はどうなのでしょうか。

EVは充電の問題が常につきまとう
EVは充電の問題が常につきまとう

 最初に断っておきたいのですが、「BEVは使えない」といいたいのではなく、むしろその逆です。今後BEVが普及していくことを想定して、その特徴や傾向、航続距離を伸ばすための対策法などをBEVオーナーの実体験をもとに検証してみます。

 今回BEVでの高速道路体験を赤裸々に話してくれたのは、都内在住のMさん(40代・男性)。

 昔から輸入車好きだったことから輸入車メーカーのBEVを購入。航続距離はフル充電で400km前後(WLTCモード)というスペックで、年末に高速道路を利用して帰省したそうです。

「前日は自宅の家庭用電源から充電しておき、出発時に表示された航続可能距離は300km弱でした。片道200kmなのでこれなら充電なしでいけると期待をしていました。

 当日は外気温が低かったので、AC(ヒーター)も作動させていたのですが、これが良くなかったのか思いのほか電力を消費してしまいました。

 10km程度走行した時点で航続可能距離が20km以上も減っていて、すでにこの時点で軽くドキドキしていました」

 もともとバッテリーは、温度の低下によって性能が悪化するといわれています。またBEVの場合、AC使用はかなりの電力を消費することが早くから指摘されており、シートヒーターやステアリングヒーターなどを標準装備するBEVが多いのもエアコンの使用を減らし電力消費を抑える効果を狙ったものだといわれています。

 ちなみにBEVには、電気式ストーブのような方式の「PTCヒーター」と、家庭用エアコンのような構造の「ヒートポンプ式」があります。

 車種によっては両方搭載するものもあれば、PTCヒーターのみでも大容量バッテリー搭載でカバーするタイプがあるようです。

 ガソリンエンジンは、燃料を燃やすときに出る熱を再利用するため電力はほとんど使用されません。従って、寒冷地では(エンジンの排熱を上手に活用する)HEVやPHEVのほうが適しているといえるかもしれません。

「エアコンを使用した状態で走行していると、バッテリー残量はみるみる減っていきます。残量50%ではまだ次のSAを目指せますが、30%前後になると(それまでの電費を考慮すると)かなり焦りが出てくるのが、ガソリンエンジン車とは大きく違うところです」(BEVオーナー Mさん)

 またMさんが嘆いていたのが、SA・PAにある急速充電器の設置場所です。

 レストランや売店が入る施設よりかなり離れた場所に充電器が設置されることが多く、悪天候や寒い季節では建物に駆け込むまでの徒歩移動が地味に体に堪えるのだとか。

 また設置されていても最大2台程度しかなく、充電は1台で30分程度かかるため、ほかのBEVが充電中の場合は待ち時間+充電時間で1時間近くタイムロスすることもあるそうです。

「BEVで長距離移動する場合、事前に目的地までの道中で充電スポットや充電タイミングを見込んだスケジュールを立てる必要があります。どこで充電するか、また充電中の時間の配分などBEVに合わせる旅程となるのは仕方ない部分です。

 たいていの急速充電器は電圧が400V、電流が70A程度です。30分の充電で航続可能距離が100km程度回復する計算です。

 ただこれまでの経験上、エアコンを使用していると表示される航続可能距離の6、7割程度しか走れないので、時間と走行距離のバランスは悪いといわざるをえない部分もあります」(BEVオーナー Mさん)

 さらに大変なのが、すべてのSA・PAに急速充電器が設置されていないことです。航続距離が50kmを下回ると「電欠」への恐怖が迫ってくるといいます。

「充電器があるSA・PAまでたどり着けないとなると、いったん高速を降りて、近隣の充電スポットを探さなければいけません。

 BEVを取り扱うメーカーのディーラーなら充電器は設置されていますが、定休日や年末年始、お盆などでお店が休みだと充電器も使えないケースがほとんどです。

 その点、日産のディーラーは定休日でも充電器を開放してくれているのは本当に助かります。

 バッテリー残量が減ってきたら、まずは近くの日産ディーラーを目指すのがBEV乗りにとって1番の安全策になっています」(BEVオーナー Mさん)

 BEVの充電にかかる費用はどれくらいなのでしょうか。

 全国で充電サービスを展開している「e-Mobility Power」の会員だと、最初の5分が275円、その後は55円/分で、30分充電すると単純試算で1650円かかる計算となります。

 一方、冬の寒い時期にエアコンを使用しながら高速道路を走行すると、1回の充電量では100km持たないケースが多いとMさんはいいます。

 通常だとガソリンエンジン車よりコストパフォーマンスが良いはずのBEVですが、冬に限ってはかなり劣勢になってしまうようです。

 ただし、下り坂が続くような道などで「回生ブレーキ」を上手に使う、またはエアコン使用をシートヒーターなどで代用することで、もう少し電費は稼げる可能性があります。

「金額以上に辛いのが、充電にかかる時間的な損失です。HEVなら難なく走れてしまう航続距離をBEVの場合は何度も充電しなければいけません。

 また1回の急速充電で最低30分以上はタイムロスしてしまうのも辛いです。充電スポットもまだまだ十分とはいえないので、数も充電量ももう少し向上してほしいです」(BEVオーナー Mさん)

※ ※ ※

 外気温によってBEVのバッテリー性能は大きく左右されるという弱点を露呈したカタチになってしまいましたが、これが現在のBEVをめぐる実情ともいえます。

 現状のBEVは1回のフル充電で走行できる距離内なら大きなメリットとなりますが、遠方への長距離移動を頻繁にする人には、既存のHEVやPHEVのほうが向いているということになりそうです。

 まだ誕生して歴史の浅いBEVだけに、今後の普及次第では大幅な性能向上や充電インフラの充実が期待できます。

 この電費問題がクリアできれば、BEVはもっと身近な存在になるかもしれません。

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4件のコメント

  1. 内燃機関では日本や欧米に追いつけないことを悟ったチャイナがゲームチェンジを狙ってるんですね。
    皆さん、充電スポットやら枝葉の話ばかりですが、そもそもどのようにして電力を確保するのか話題になりませんね。
    石炭火力発電はダメ。石油火力発電もダメ。原子力発電はもっとダメ。では明らかに電力不足に陥ります。
    送電ロスや充電の電力ロスを考えると内燃機関のほうが良いのでは。

    • チャイナばかりか、
      ディーゼル推進に失敗したEUもこのゲームチェンジに率先して乗ってきたものだからたちが悪い。
      バッテリーの生産に伴うCO2排出は問題視せず
      車自体の排ガスゼロでのクリーンイメージばかりを追って問題を歪曲化している。
      いずれCO2排出問題以外にも電力供給源確保に、
      リチウムなどの資源乱獲問題や廃バッテリーのリサイクル再生産性などで
      本当に環境問題の解決になり得るかが問われる不都合な問題が顕在化するだろう
      BEVへの一本化が正しい道筋とは到底思えない。
      経済的には勝ち馬に乗らずして生き残りは謀れないと迎合しがちだが、
      やはりエネルギーミックス、多様化に向けた取り組みは必要でしょう。

  2. 実際問題として
    冬の寒さがバッテリー電力の供給力と消費量双方にとって負担なのは解るんですが、
    じゃあ日本以上に寒い北欧でBEVの普及率高いのは環境問題に関心が高いからだけ?
    実際に北欧でBEVはどう工夫して使われているのか?
    そういった普及してる国々の実情を調べずして
    ただ電力消費量やインフラ整備ばかりに問題点を置くのはちょっと安直ですね、
    北欧などの利用実態を参考に
    日本にもマッチング出来るよう工夫をしていかない様では本格的普及は無理でしょう。

    • 誰かの記事か忘れてしまいましたが、日本とは前提条件が異なる特殊なケースという紹介でした。
      以下のような事が書かれていました。
      BEVの導入前から北欧は寒すぎてエンジンヒーター用のコンセントが駐車場にはついており潜在的に充電環境が整っていた。
      資源国であるが自国の発電は水力発電が主であり元々カーボンフリーであった。充電がカーボンフリーなので、BEVに乗り換えるほど炭素排出が単純に減る状況であった。

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