100万円切りのスズキ新型「アルト」はコスパ最強! 大幅進化も従来型から変えなかったこととは
新型アルトのコスパの良さは日本一!
新型アルトの車体は、基本的に先代と共通設計でブラッシュアップを受けたプラットフォーム(「ハーテクト」と呼ばれて軽量設計が特徴)に、新設計のアッパーボディを組み合わせたもの。
ただしアッパーボディは左右別々でドア開口部周囲、左右Bピラーを結ぶ天井&プラットフォーム、そしてバックドア開口部の計4カ所をそれぞれ強固な構造で環状に囲む「環状骨格構造」という従来型にはなかった補強の考え方を取り入れることで、全方位の剛性が高まっています。
一方パワートレインは、「ターボエンジン」や「MT」「AGS」といった象徴的なメカニズムは整理され、全車ともCVT+自然吸気エンジンに統一。
「R06A」型のベーシックエンジンに「エネチャージ」と呼ぶエネルギー回生装置を組み合わせたタイプと、新生代エンジン「R06D」型に2.6馬力のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドの2タイプありますが、試乗車は後者でした。
好印象だったのは、日常領域の走りです。街中程度の発進から加速は、自然吸気エンジンとは思えないスムーズな速度上昇を実現。
49馬力の自然吸気エンジンとは思えないほど加速が軽快に感じたのは、わずか700kgほどしかない車両重量のメリットに違いありません。
少し速度域の高いバイパスなどでも、信号待ちから周囲に合わせて加速し、流れに乗って走るシーンであれば不満はないでしょう。
ただ、高速道路の本線への合流や、そこまで速度領域が高くなくても脇道からバイパスに入って強く加速する際などはエンジン音が煩くなるとともに、加速に力不足を感じるのは否めません。峠道の上りなども同様です。
そんな印象から、新型アルトとマッチングがいいのは街中移動が主体となるユーザーでしょう。一方で高速道路や山岳路を走ることが多いのであれば、ターボモデルを用意するワゴンRや「ハスラー」を推奨したいところです。
新型アルトが向いている人と向いていない人がしっかり分かれるのは、そんな走行性能によるもので、今後、もし新型アルトにターボエンジンが追加されれば、それを選ぶのもいいでしょう。
新型アルトの軽自動車のなかでも頂点に立つといっていい、強調すべきふたつの優れたポイントにも触れておきましょう。
ひとつは価格です。新型は衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)に加えてカーテン&サイドエアバッグが全車に採用されて大幅に安全性が高まりつつも、ベーシックグレードで94万3800円からという“100万円切り”を継承。
非接触式キーやエアコン、電動格納式リモコンドアミラー、アルミホイール、そしてLEDヘッドライトを標準装備する最上級グレード「ハイブリッドX」でも125万9500円と抑えられています(さらに11万2200円を加えれば7インチのディスプレイオーディオに全方位モニターまでつく)。コストパフォーマンスの高さでいったら、日本一でしょう。
もうひとつは燃費です。マイルドハイブリッドモデルのWLTCモード燃費は軽自動車トップの27.7km/Lをマーク。
「フルハイブリッドだったらさらに低燃費のクルマもある」と考える人もいるかもしれませんが、車両価格まで含めたバランス(財布へのやさしさ)では驚異としかいいようがありません。
そんな新型アルトは、まさに現代の国民車といえる存在ではないでしょうか。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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