高性能なだけでなく見た目がシブい! いぶし銀の魅力あふれる大排気量セダン3選
近年、ダウンサイジングターボエンジンやハイブリッドの普及で、数が少なくってしまったのが、大排気量自然吸気エンジン車です。出力的にはターボエンジンに分があり、燃費性能はハイブリッドが有利ですが、大排気量自然吸気エンジンのリニアなレスポンスは大いに魅力的です。そこで、いぶし銀の魅力あふれる往年の大排気量セダンを、3車種ピックアップして紹介します。
失われつつある大排気量自然吸気エンジンを搭載したセダンを振り返る
技術的な進歩は、クルマのトレンドを大きく変えることも可能です。なかでも近年のクルマでは、ダウンサイジングターボエンジンやハイブリッドシステムによって、動力源も様変わりしています。
一方、ダウンサイジングターボエンジンとハイブリッドシステムの普及で、減少が続いているのが、大排気量の自然吸気エンジン搭載車です。
とくに欧州車と日本車で顕著で、次々と姿を消しており、ターボエンジンかハイブリッドに置き換わってしまいました。
しかし、優れたレスポンスとリニアな加速感を持つ大排気量自然吸気エンジン車は、魅力的な存在です。
そこで、往年の高性能な大排気量セダンを、3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「アリスト 4.0Z i-Four」
トヨタは1987年に発売した8代目「クラウン」、そして1989年に誕生した初代「セルシオ」と、立て続けに高級セダンのヒット作を生み出しました。
そして次の一手として、新たなコンセプトの高級セダンとして、1991年に初代「アリスト」を発売。
アリストはラグジュアリーなスポーツセダンとして開発されたモデルで、外観デザインは巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが主宰するイタルデザインが手掛け、ロー&ワイドなフォルムを強調した斬新なクーペスタイルを採用しました。
さらに、アリストの最大の特徴だったのがエンジンで、トップグレードの「3.0V」には最高出力280馬力を誇る3リッター直列6気筒ツインターボ「2JZ-GTE型」を搭載。このエンジンは後に「A80型 スープラ」にも搭載されるなど、トヨタのスポーツユニットでは最高峰に位置するエンジンでした。
その後、1992年にはセルシオと同型の4リッターV型8気筒自然吸気「1UZ-FE型」エンジンを搭載した4WDモデル「4.0Z i-Four」が追加されました。
最高出力は260馬力と3.0Vには届いていませんでしたが、前後トルク配分が前30:後70を基本に、路面状況によってリニアに変化する4WDシステム「EC・HYMATIC II」を採用。リアデフにはトルセンLSDが標準装備され、4WDと相まって高いトラクション性能を誇りました。
また、前後ダブルウイッシュボーンの足まわりには、電子制御エアサスペンションが装備され、4輪のバネ定数とショックアブソーバーの減衰力、車高を走行状態によってコントロールし、優れた走行安定性と乗り心地、さらに高い旋回性能を実現。
初代アリストでは3.0Vに人気が集中したことと、4.0Z i-Fourは518万円から533万円と高額だったため、販売台数は少なく、今ではかなりレアなモデルです。なお、4.0Z i-Fourは2代目の登場とともに廃止されました。
●日産「フーガ 450GT」
かつて、日産を代表する高級セダンといえば「セドリック/グロリア」でしたが、2004年に生産を終え、両モデルを統合した新世代のセダン、初代「フーガ」が誕生しました。
フーガの外観はボリューム感を強調したボディに、ラウンドしたルーフラインによる流麗なシルエットが特徴です。
搭載されたエンジンは当初、2.5リッターと3.5リッターのV型6気筒「VQ型」でしたが、2005年には「プレジデント」や「シーマ」に搭載されていた4.5リッターV型8気筒の「VK45DE型」を搭載した「450GT」が登場。
GTの名にふさわしく最高出力は333馬力を誇り、「450GT スポーツパッケージ」では、19インチタイヤと専用にチューニングされた足まわりに、4WSシステムの「リヤアクティブステア」が装備され、優れた旋回性能と高い走行安定性を両立していました。
また、450GTではV型8気筒エンジンを誇示するかのように左右4本出しのマフラーが装着され、迫力あるリアビューを演出。
内装では本木目と本革がふんだんに使われるなど、日産車のなかでも最高峰に位置するパーソナルカーにふさわしく、ラグジュアリーな装いでした。
その後、2009年に2代目にフルモデルチェンジすると、全グレードともV型6気筒エンジンにスイッチされ、450GTは一代限りで消えてしまいました。
●メルセデス・ベンツ「500E」
かつて、メルセデス・ベンツのトップに位置するモデルは、大排気量自然吸気エンジン車というのが定番でした。
しかし、ミドルクラスのモデルで、かつ異例のスポーティな大排気量車だったのが、1991年に発売されたメルセデス・ベンツ「500E」(後に「E500」に改名)です。
500Eは1985年に誕生した初代Eクラスがベースにポルシェが開発を担当したモデルで、中身はスタンダードなEクラスとは別モノといっていい仕様でした。
エンジンは2シータースポーツカーの「500SL」から移植された5リッターV型8気筒で、最高出力は330馬力を発揮。このエンジンを搭載するためにフロアパネルが新規に設計され、トランスミッションや前後のサスペンション、ステアリングギアボックスなども、500SLのものが流用されました。
ボディパネルも専用に仕立てられており、トレッドを拡大したことで前後フェンダーがワイドになり、専用デザインのバンパーが装着されました。ただし、派手なエアロパーツなどは装着されていません。
一方、性能はまさにスポーツセダンといえ、0-400m発進加速タイムは14.8秒、最高速度は250km/h(リミッター作動)と、優れた走行性能を誇りました。
その後、メルセデス・ベンツの高性能モデルはAMGブランドにシフトし、性能も飛躍的にアップしていますが、500Eの初期モデルはポルシェの工場で作られたというバリューと希少性もあり、今なお数多くのファンが存在します。
なお、500Eは日本にも正規輸入され、当時の価格(消費税含まず)は1300万円と、エントリーモデルの「E220」が580万円だったので2倍以上と非常に高額なモデルでした。
※ ※ ※
大排気量自然吸気エンジン車は失われつつありますが、2021年2月に、5リッターV型8気筒エンジンを搭載するレクサス「IS 500 Fスポーツ パフォーマンス」がアメリカで登場しました。
また、2019年7月に登場した現行モデルの8代目「コルベット スティングレイ」には、6.2リッターV型8気筒OHVが搭載され、まだまだ大排気量自然吸気エンジンの火は消えていません。
しかし、現在進行形で世界的なEVシフトもあり、やはり将来的には大排気量自然吸気エンジンは消滅する運命にあるでしょう。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。