なぜ「携行缶給油」NGのGS増えた? 予備用燃料で重宝するも規制厳格化! 背景には「京アニ事件」か
予備の燃料として携行缶に給油する人がいますが、最近では携行缶への給油を断られることがあります。なぜ携行缶への給油が厳しくなっているのでしょうか。
常備したいガソリン 携行缶への給油はどうしてNG?
2020年12月、関越道で大雪により600台以上が立ち往生した事例がありました。
立ち往生したクルマのなかには、厳しい積雪にもかかわらず、ガソリン節約のためにエンジンを切っていたクルマもいたようです。
こうした状況もあり、携行缶などを予備として持っておくという人もいるかもしれません。
しかし、近年ガソリンスタンドでは携行缶への給油が禁止されている場合もあります。なぜ携行缶に給油できないのでしょうか。

最近のガソリンスタンドでは「携行缶への給油はできません」「自動車以外への給油はご遠慮ください」といった張り紙をしているところも見られます。
ガソリンの保管が目的とされている携行缶ですが、このように携行缶への給油ができなくなった背景にはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
神奈川県のセルフスタンドのガソリンスタンド従業員は、携行缶への給油について以下のように話します。
「冬の時期はスキーやスノーボードなどで山に行くということで、携行缶へ給油したいというお客さまがいます。
しかし、2019年の『京都アニメーション』での放火事件をきっかけに携行缶への給油の決まりが厳格化し、当店では給油をお断りすることになりました」
2019年7月18日、京都府のアニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオ(京都市伏見区)に当時41歳の男が侵入し、ガソリンを撒いて放火するという事件が起きました。
男は犯行前、ホームセンターで携行缶を購入し、現場付近のガソリンスタンドで「発電機に使う」と話してガソリンを給油してもらったそうです。
男が給油したガソリンスタンドは、もちろん何も知らずに適切な対応として給油をおこなったようです。
しかし、事件後の2019年12月20日に総務省消防庁は、危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(令和元年総務省令第67号)を公布。
ガソリンを販売するため容器に詰め替えるときは、顧客の本人確認、使用目的の確認及び販売記録の作成をおこなうことが2020年2月1日に施行されました。
実際の内容として、全国のガソリンスタンドに以下を通達しています。
(1)ガソリンの容器詰替え販売における本人確認など
(2)セルフ給油取扱所におけるタブレット端末などによる給油許可
(3)給油取扱所における屋外での物品販売など
また、携行缶への給油は購入者ではなく従業員がおこなう決まりとなっています。
危険物取扱者の資格を持つ従業員、もしくはその従業員管轄のもと、ほかの従業員が給油をおこなう必要があります。
前出のガソリンスタンド従業員は、この決まりを受けて以下のように話します。
「当店はセルフということで、もともとガソリンや灯油の給油は基本的にお客さま自身がおこなうことになっています。
そのため常駐の従業員数も多くはなく、携行缶への給油中止は安全性や管理の難しさなどを考慮しての決断です。
ただ、近隣のガソリンスタンドのなかには安全性を確保したうえで給油を続けているという店舗もあります。
もちろん、お客さま自身での給油も禁止しており、勝手に給油されている場合には給油機の強制停止をおこなう可能性もあります」
※ ※ ※
このように、とくにセルフサービスでは給油を中止しているスタンドが多く、かつてと比べると携行缶へ給油できるスタンドは減っています。
顧客のニーズに応えたい一方で、安全性の観点から仕方なく携行缶への給油を中止しているガソリンスタンドが多いのが実情でしょう。
携行缶への給油をおこないたい場合は、ガソリンスタンドのスタッフに対応状況をしっかりと確認し、給油を受け付けている場合には携行缶を渡して、身分証を提示するようにしましょう。
使用目的なども聞かれるため、自身の目的はしっかりと明確にしておき、不要な携行缶への給油はできる限りおこなわないようにしたほうが良いかもしれません。
前述したように、携行缶への給油が許可されているのは従業員のみであるため、セルフのスタンドで勝手に給油する行為は厳禁です。
Writer: Peacock Blue K.K.
東京・渋谷を拠点とするオンライン・ニュース・エージェンシー。インターネット・ユーザーの興味関心をひくライトな記事を中心に、独自の取材ネットワークを活用した新車スクープ記事、ビジネスコラム、海外現地取材記事など、年間約5000本のコンテンツを配信中。2017年創業。





















