まさにワークスチューン!? メーカーが特別に仕立てた異色の高性能車3選
市販車をベースに、よりハイパフォーマンスに仕立てるチューニングカーは、ひと昔前まではショップやチューニングパーツメーカーがつくるものでした。しかし、今や自動車メーカー系のチューニングカーも存在。そこで、メーカーが特別に仕立てた異色の高性能車を、3車種ピックアップして紹介します。
自動車メーカーが仕立てた異色のチューニングカーを振り返る
自動車メーカーがクルマの開発をおこなう際には、走行性能や乗り心地、燃費など、さまざまな面をバランスよく仕立てています。
一方で、性能を高めるにしてもコストの関係で実現することが難しく、妥協している部分もあります。
そのため、より自分好みにクルマを仕立てるためにおこなうのがチューニングで、ひと昔前はチューニングショップやパーツメーカーが主体でおこなっていました。
かつて、チューニングというとアウトローなイメージがありましたが、業界団体の努力によって市民権が得られ、近年は自動車メーカーや関連会社がチューニングカーをつくることも一般的になりました。
そこで、自動車メーカーが特別に仕立てた異色の高性能車を、3車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「ロードスター ターボ」
1989年に誕生したユーノス(マツダ)「ロードスター」は、軽量かつ、高出力過ぎないちょうどよい性能のオープン2シータースポーツカーとして代を重ね、現行モデルの4代目もコンセプトを継承しています。
このロードスターで異色の高性能モデルだったのが、2004年2月に発売された「ロードスター ターボ」です。
その名のとおり、1.8リッター直列4気筒エンジンにターボチャージャーを取り付け、特別に仕立てられました。
ターボチャージャーを装着することによって最高出力は160馬力から172馬力に、最大トルクは17.3kgmから21.3kgmに向上。決して大幅なパワーアップではありませんでしたが、低回転域からトルクを発生させるセッティングによってターボラグを最小限に抑え、ターボエンジンながら気持ちの良いアクセルレスポンスを実現していました。
また、出力向上にともなってドライブトレインの強化や、サスペンションのチューニングも図られました。
ロードスター ターボはわずか350台の限定車で、歴代ロードスターでターボエンジンを搭載した唯一のモデルとあって、今ではかなり貴重な存在です。
●トヨタ「ヴィッツ GRMN」
2020年2月にトヨタ「ヤリス」が国内で発売されました。その前身のモデルは「ヴィッツ」で、モデルライフの末期だった2018年に、まさにメーカーならではといえるチューニングカーの「ヴィッツ GRMN」が登場しました。
ボディは高剛性な欧州仕様のヴィッツ(ヤリス)3ドアハッチバックをベースとし、外観は専用の前後バンパーやサイドステップ、リアスポイラーが装着され、よりスポーティなフォルムへと変貌。
そして、一番のハイライトだったのがエンジンで、1.8リッター直列4気筒スーパーチャージャーを搭載。最高出力212馬力を誇り、トランスミッションは6速MTのみの設定です。
このパワーに見合うようにシャシまわりもチューニングされ、タワーバー(フロント)やブレースの追加によりさらなる高剛性化に、専用チューニングされたザックス製ショックアブソーバー、トルセンLSDにフロント対向4ポッドブレーキキャリパーなどが装着されました。
内装では専用のスポーツシートに260km/hスケールのスピードメーター、小径ステアリングによって、機能的かつスポーティに演出。
ヴィッツ GRMNの生産はフランスでおこなわれ、日本に輸入された後、最終的に仕上げられてユーザーに納車されました。
150台の限定販売で、当時の新車価格は400万円(消費税8%込)と、ヴィッツとしてはかなり高額でしたが、チューニングの内容からすると比較的リーズナブルな価格といえるでしょう。
●日産「スカイライン GTS-R」
1980年代から1990年代かけて、日本で絶大な人気を誇っていたレースのひとつが「全日本ツーリングカー選手権」です。
このレースは市販車をベースに改造した車両によって戦われ、「グループA」と呼ばれるカテゴリーだったことから改造範囲は厳しく制限されており、ベース車のポテンシャルや仕様によって戦闘力に大きく影響しました。
そこで、日産は1989年に「R32型 スカイラインGT-R」を発売し、レースで無敵を誇ったことは今も語り継がれていますが、このR32型の登場以前に特別に仕立てられた伝説的な限定車が「スカイライン GTS-R」です。
スカイライン GTS-Rは1987年に800台限定で発売。7代目スカイラインクーペの「GTS」グレードをベースに、ノーマルの状態でレースを想定した仕様にモディファイされ、いわゆるエボリューションモデルとして開発されました。
エンジンは2リッター直列6気筒DOHCターボの「RB20DET-R型」を搭載。レースでは給排気系の変更が許されなかったことから、ターボチャージャーとステンレス製エキゾーストマニホールド、大容量の空冷インタークーラーなどが専用品とされ、高出力210馬力を発揮しました。
また、レースマシンは外観の変更がほとんど許されず、エアロパーツも追加できなかったため、固定式のフロントスポイラー(標準のGTSでは可動式)や、大型のリアスポイラーが標準で装着されました。
そして、1988年シーズンからレースに参戦したスカイライン GTS-Rは、1989年シーズンにチャンピオンを獲得し、R32型 スカイラインGT-R誕生への礎となりました。
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チューニングによって効果が実感できると、その楽しみは大きく膨らみますが、チューニングで性能が向上する反面、犠牲となる部分も少なからず存在します。
たとえば、出力が向上すれば燃費は悪化し、足まわりの強化は旋回性能の向上が図られますが、乗り心地は悪くなるなど、ネガティブな部分が露呈してしまいます。
クルマはノーマルの状態で高度にバランスよくセッティングされているので、どこかの性能をアップするとバランスが崩れてしまうことも覚悟する必要があるでしょう。
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