新車価格45万円⁉︎ 超小型「宏光EV」をバラしてみた! 世界で2番目に売れる理由とは

昨今、さまざまなEVが登場しています。なかでも日本で「45万円EV」としても知られる「宏光MINI EV」。名古屋で隅から隅までバラしてるイベントが開催されたといいます。

分解イベント、どのようにしておこなわれたのか?

 分解整備の知識を持った参加者たちは各々自前の工具を持ってきており、車両の分解は予想よりも早いペースで進められます。

 まずはボンネットが取り外され、車両前部に搭載されているバッテリーを充電するためのオンボードチャージャー(OBC)やDC-DCコンバータが取り外されました。

 続いて、電装関係用の12Vバッテリー、フロントバンパー、車両接近警報装置、エアコン用コンプレッサが次々と車体より離されていき、みるみるうちにフロントはフレームのみが残された状態へと変わっていきます。

 次におこなわれたのは駆動用部品の取り外しです。

 ジャッキアップをおこない、モータやバッテリー、差動装置(デフ)の上に位置するインバータが取り外されたのち、各種電子部品関連企業の社員たちによってそれぞれの部品の分解が同時並行でおこなわれました。

解体イベントの様子(撮影:加藤ヒロト)
解体イベントの様子(撮影:加藤ヒロト)

 分解に関わった参加者によれば、インバータなどの部品は非常に効率よく回路が設計されており、そこからもその高い技術力が見て取れたといいます。

 外装と駆動関連の分解だけではありません。内装は某自動車メーカーのディーラー整備士、そして名古屋大学体育会自動車部の部員などの手によって外されていきました。

 ダッシュボード、内装パネル、ディスプレイなどはどれもしっかりと作られており、このパートはこの分解大会で筆者がもっとも驚いた部分でもあります。

 分解を担当したディーラー整備士も、「自社で販売している自動車に引けを取らないクオリティの高さで驚きました」と称賛していたのがとても印象的でした。

 また、車体のサブフレームがパイプフレームのような構造になっていることにも注目です。

 パイプフレームを用いることで、剛性の向上および車体の軽量化が可能となりますが、それがこのような量産品の超小型EVに使われていました。

 今回の分解大会で、この宏光MINI EVがなぜこの低価格を実現しながらも、クオリティを落とさない作りになっているかがよくわかりました。

 一言でいえば、「割り切りの良さ」がカギとなっていたわけです。

 その車両を構成する要素を単に妥協してコストカットするのではなく、不要な部分は不要と割り切って取り除くことで、必要最低限の要素に注力した作りが実現できたことになります。

 航続距離170 km(下のグレードでは120 km)、大人4人が乗れるキャビンの広さで、必要であればISOFIX対応のチャイルドシートをリアシートに装着したり、リアシートを倒したりして荷物をより積めるようにも出来ます。

 それでいて、日本円にして約46万円の超低価格を実現するための開発努力も惜しまない。その設計思想が垣間見えた分解大会でした。

 分解イベントを開催した名古屋大学 未来材料・システム研究所の山本真義教授は以下のように話します。

「テスラ・モデル3は我が国にとって“黒船”と呼ばれていますが、この中国製超低価格EVは“赤船”として、電機業界、半導体業界、自動車業界に大きなインパクトを与えることが予想されます。

 この赤船を実際に分解し、今の中国の電気自動車の最前線を学ぶことで危機感を共有しようという趣旨で今回のイベントを企画しました。

 今後は各種部品を国内でそれぞれの部品の製造を得意とする製造会社が持ち帰り、分析、その結果を、一般社団法人 日本能率協会が主催するセミナーにて共有することとしています」

※ ※ ※

 なお、セミナーは2021年11月30日に愛知県名古屋市のAP名古屋にて開催され、同年12月14日にはオンライン開催も予定されています。

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Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト

下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。

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