「bZ」第1弾のトヨタ新型SUV「bZ4X」は退屈さ皆無な「いいクルマ」!? 「トヨタらしさ」溢れる中身とは

スバルとのコラボでどんな技術が盛り込まれた?

「トヨタらしいな」と思うのは、単純に「性能がいい」だけでなく、冬場の航続距離の確保や10年後に90%という電池容量維持率などをはじめとする“リアル”な実用性の追求や、バッテリーの安心・安全を担保する設計・多重監視システムの採用、衝突安全性能追求など、BEVの心配事に対する対策が徹底している所にあります。

トヨタ 新型「bZ4X」(プロトタイプ)
トヨタ 新型「bZ4X」(プロトタイプ)

 この辺りは非常に地味でなかなか表に出てこない部分ですが、「多くの人に選んでもらう」、「普及してこそ」という意味では、非常に頼もしい性能といえるでしょう。つまり、トヨタの安心・安全に対する思想はBEVでも何ら変わらないことの証明です。

 このようにBEVでも実用上の心配はなさそうですが、肝心なクルマとしての魅力はどうなのでしょうか。

 一般的には「電動車は退屈」という意見を持つ人が多いようですが、bZ4Xは「クルマをコモディティ化させない」という豊田章男社長の強い想いが反映されたBEVといえるでしょう。

 そのひとつがBEV専用プラットフォーム「e-TNGA」の採用です。

 低重心化はもちろん、パワーユニットのコンパクト化による前後オーバーハングの低減による慣性モーメントの低減、軽量・高剛性化なボディ構造採用などによる基本素性の良さに加えて、モーター駆動の特性を活かしたリニアでレスポンシブなフィーリングや前後モーター駆動力の独立制御を活かした回頭性/操縦安定性の向上などがおこなわれています。

 さらにトヨタ初採用となるステアバイワイヤシステム(一部車種に採用)も注目のアイテムのひとつでしょう。

 4WDにはスバルの技術が盛り込まれ、4輪の駆動力やブレーキをコントロールする独自技術「X-MODE(新機能のGrip-Contorol付)」も採用。日常ユースからライトオフロード以上の走行にも対応しているそうです。

 トヨタの電動化技術とスバルのAWD技術が融合した走りがどのような仕上がりなのか非常に気になりますが、開発はGR86/BRZ以上に密接だったということなので期待大です。個人的にはスバル版の「ソルテラ」との「味」の違いも興味深いです。

 今回、価格についての発表はありませんでしたが、その前におこなわれた「トヨタ 電池・カーボンニュートラルに関する説明会」でCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)の前田昌彦氏は「BEV普及のためにはコストを低減し、リーズナブルな車両価格でお届けしたいと考えています」と語っています。

 この言葉を信じると、筆者(山本シンヤ)は実質的な購入金額(補助金を考慮)は450万円前後からだと予想しています。

 実は今回の発表に先駆けてメディア向けに説明会がおこなわれましたが、その印象は「満を持してBEVを投入!」と声高らかに叫ぶわけではなく、普段のニューモデルと変わらない温度感だったのが印象的でした。

 それに関して筆者はこのように解釈しています。「トヨタにとってBEVが特別な物ではなく、パワートレインの選択肢が増えたに過ぎない」と。

 つまりbZ4Xのクルマづくりは「BEVだから買う」のではなく、「いいクルマを選んだらBEVだった」という考えなのでしょう。

 そんな控えめな姿勢が逆にトヨタの「自信の表れ」に感じたのは、決して気のせいではないと思っています。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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