マツダが2桁車名の「CXシリーズ」を大幅拡充! 日本は「60・80」導入へ! SUV強化の狙いとは
なぜここまで一気にCXシリーズを強化するのか?
CXシリーズ大幅拡大の理由については、前述したように、マツダが事業拡大を狙う北米市場での対応、さらに日本を含めて中国や欧州でもセダンからのSUVシフトが顕著になっているなかで、それぞれの市場要望にベストマッチするモデルを仕立てる必要があるからです。
これは、ボディサイズやボディデザインのみならず、当然ながらパワートレインについても必然です。
欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が事実上、「2035年までに欧州域内で新車100%をEVまたはFCV化」を決めており、欧州ではメルセデス・ベンツを筆頭に急激なEVシフトが始まっています。
また、中国やアメリカ、そして日本でも、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車を含めた電動化に向けた政策が本格的に動き出している段階です。
そうした状況のなか、マツダの丸本明社長は決算報告などの場面において、「電動化については、国や地域の社会情勢や社会状況に応じて適宜対応する」という基本姿勢を貫いてきました。
そのためパワートレインは、スモール商品群でガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」、ディーゼルエンジンの「SKYACITV-D」、マツダ独自技術の次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」、さらにマイルドハイブリッドの「e-SKYACTIV G」を横置きFFとして設定。
また、ラージ商品群では、欧州では直列4気筒のプラグインハイブリッド車のほか、SKYACTIV-XとSKYACITV-Dを直接6気筒化して48Vマイルドハイブリッドとすることで、欧州の電動化シフトに向けた第一弾として対応します。
アメリカでは、直列6気筒ターボとプラグインハイブリッド車、そして日本では直列6気筒のSKYACTIV-Dの48Vマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッド車を設定します。
まさに、丸本社長がいうように「適材適所」でのモデルとエンジンの組み合わせです。
とくにエンジンについては、マツダと同程度の販売台数や売上げがあるほかのメーカーと比べると、新規設定のエンジンの種類がかなり多い印象があります。
SKYACITVの生みの親で、現在はシニアイノベーションフェローの人見光夫氏もそうした認識があり、そのうえでマツダが提唱してきたMBD(モデルベース開発)が多様な車種とエンジン・モーター開発に必要不可欠であるとの考えを示しています。
そもそも、マツダは限られた生産設備のなかで多様なモデルを作り分けるモデルの混流を、製造ラインでのさまざまな“からくり”を用いて実現してきた実績があります。
一方で、バブル期には多チャンネル化での多ブランド・多モデル化を推し進めたことが、後にマツダ地獄とも称されるリセールバリュー(下取り価格)の低下を引き起こしました。
今回発表された、CXシリーズの大幅拡大は、過去の経験を踏またうえで、マツダがいま直面している“100年に一度の自動車大変革期”を生き抜くためのベストソリューションなのだと思います。
そのうえで繰り返しますが、マツダとマツダ販売店は、国内でのCXシリーズ新転換についてユーザー対して丁寧な説明が必要だと感じます。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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