売れない理由が無い? トヨタ新型「カローラクロス」 「普通」であることの凄さとは
カローラクロスは乗るとどうなのか?
パワートレインは、ガソリン車はバルブマチック採用の1.8Lリッター自然吸気(140ps/170Nm)+CVTの組み合わせ、ハイブリッド車は1.8リッター自然吸気(98ps/142Nm)+モーター(72ps/163Nm)+電子CVTになります。
セダンやツーリングに対し制御の最適化とファイナルのローギアード化(タイヤ外径アップの調整)がおこなわれています。
どちらもセダン/ツーリングよりボディサイズが大きい事から物足りなさを感じると思いきや、実際は十分以上のパフォーマンス。実は車両重量はツーリング+20kg(パノラマルーフ付は+40kg)と、見た目より軽量設計が走りにも効いています。
もう少し具体的にいうと、ガソリン車は「凄く力強い」という感じではありませんが、CVTの巧みな制御も相まって街中ではスペック以上に元気で小気味良い印象です。
ただ、高回転はそれほど得意ではなく、あくまでも実用に徹した味付け。
一方、ハイブリッド車は応答の良さや絶対的な力強さはガソリン車より上ですが、セダン/ツーリングと比べると発進時は穏やかな印象を受けました。
この辺りは燃費を意識した制御なのでしょうか。ただ、THSII(トヨタハイブリッドシステム)の欠点であるラバーバンドフィールも上手に抑えられ、アクセル全開にしない限りはドライバビリティも高いレベルです。
フットワークはどうでしょうか。プラットフォームは、12代目カローラシリーズと同じTNGA「GA-C」ですが、リアサスは初となるトーションビーム式(E-Fourはダブルウィッシュボーン)を採用。
トーションビーム式は接地性やハーシュネスなどに課題があるのも事実ですが、開発陣が目標に定めた「気持ちのいい乗り心地」実現のために、大型ゴムブッシュの採用や常用域にこだわったサスペンションのセットアップ。
さらに18インチタイヤには“神タイヤ”と呼ばれるミシュラン・プライマシー4の採用などがおこなわれています。
その走りは、普通に乗っている限りはクロスオーバーというより目線が高いセダン/ツーリングといっていいと思います。
ステア系はカローラシリーズでは採用済みの「第3世代EPS制御」で、操舵力は軽めながらも、スムーズかつ自然で繋がりも良いフィーリングです。
路面からの情報も必要なだけ的確に伝えてくれるので、ステアリングから伝わる安心感やクルマに対する信頼は、トヨタ車のなかでもトップクラスです。
ハンドリングはセダン/ツーリングに対して薄皮2枚くらい入れたような穏やかさがありますが、見た目に似合わない身のこなしの軽快さや操作に対する確かな応答性。
そしてロールを抑えつつも自然なクルマの動きなど、改めてGA-Cの素性の高さを改めて実感しました。
ちなみにクロスオーバー化による素性の悪化(全高や重心など)は、ワイドトレッド化でカバーされているはずです。
快適性はトーションビームによるネガ(ドタバタした動きやアタリの強さ)はほぼ感じず、むしろ凹凸を乗り越える時のカドの取れた優しさやショックのいなし方などはセダン/ツーリング以上に感じました。
後席もチェックしてみましたが、入力の少なさや体も揺すられにくさなどはライバルよりも優位性があると思います。さらにより快適性に有利に働く17インチも試してみたい所です。
ちなみにパノラマルーフ仕様はノーマルルーフ仕様と比べると、わずかに足の動きが渋い&硬めに感じましたが、ルーフの重さをカバーするセットなのか、それとも単なる個体差だったのでしょうか。
ちなみに安全・運転支援デバイスは第2世代トヨタ・セーフティ・センス(TSS)と、セダン/ツーリング/スポーツと共通です。
ただ、すでに第2.5世代TSSを搭載したモデルが導入されていることを考えると、ここに関しては水平展開ではなく最新スペックを奢って欲しかったのが本音です。
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カローラクロスの凄さは「普通」であること、つまり突出した特長はありませんが、総合性能に優れたモデルだと感じました。
ただ、誤解してほしくないのは、昔のトヨタ車のような「そこそこのレベルでの総合力」ではなく、「100点を目指したなかでの総合力」と意味が全然違うということです。
そういう意味では、むしろセダン/ツーリングよりも直球勝負な一台といってもいいでしょう。
そう考えると、戦略的なプライスも含めて売れない理由が見当たりません。今後、12代目カローラシリーズの“本命”になる可能性大です。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
クラウンよりも扱いづらい横幅
C-hrとの対比が書かれていないが(忖度でしょうが)、C-hrがグローバルモデル一歩手前までいったのだが、米国やアジアでクーペスタイルが「値段の割に小さく見える」と嫌われたらしい。欧州では、今も確か8000台/月程度は売れているので一応成功だろうが。
それで、この車を急遽作ったと聞いている。だから、デザインはC-hrの逆。名前も、カローラ臭を嫌ったC-hrに対して、わざわざカローラ臭をプンプンと前面に出しているなど。
T社らしいなと思うのが、C-hrとカローラクロスでパワートレインが重ならないようにしているところかな。
立体駐車場に入らない