新車価格の倍の2億円! ジャガー「XJR-15」のテールライトはマツダ「カペラ」の流用だった

日本で長らく過ごした「XJR15」、身内のライバルをはるかにしのぐ落札価格とは?

 今回の「Monteley」オークションに出品された、シャシNo.#028は、ロードバージョンとして製作された27台のうちの1台とされる。

 1991年に完成したこの個体は、標準指定色であるブルーメタリックのボディカラーに、グレーの本革レザーで仕立てたインテリアの組み合わせ。当時まだ好景気にあった日本には、おそらく10台に近いXJR-15が上陸していたが、この#028もそのうちの1台という。

テールライトはマツダ「カペラ」用を流用している(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
テールライトはマツダ「カペラ」用を流用している(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 日本国内のスーパーカーコレクターのもとに納入されたのち、28年にわたって庫内に保管されていたそうで、今回の出品に至るまでの走行距離は78マイル(約125km)に過ぎないとのことである。

 そんな来歴を証明するように、2019年9月に米国へと輸入されたという#028は、XJR-15というモデルのオリジナリティをもっとも忠実に示した1台といえるだろう。

 たとえばカーボンファイバー製のボディパネルの「織り」は、再塗装がおこなわれていないことを証明するように、ブルーのペイントを透かしてきれいに見えている。また、同じくカーボンのモノコックタブは、湾曲したウインドスクリーン下に誇示されるとともに、オリジナルの3ピースOZレーシングホイールも、レース由来のパフォーマンスを示しつつ最高のルックスを醸し出している。

 さらに事実上の新車であることから、グレーの本革レザーが張られたレーシングバケットシートのコンディションも上々。ボディワーク周りの随所に貼りつけられた「JAGUAR SPORT」と「Tom Walkinshaw Racing」のロゴバッヂもすべて正しく残され、ジャガーの歴史に輝く「XJR」シリーズの一翼を担うモデルであることを無言のうちに示している。

 わずか27台のみといわれるXJR-15ロードバージョンの1台であるにとどまらず、圧倒的なローマイレージとパーフェクトコンディションをセールスポイントとする#028は、2021年には現在のオーナーによって、生来のパフォーマンスを取り戻すためのメンテナンスとサービスも実施されたとのことである。

 もとより生産台数の少ないうえに、大方はマニア同士で秘密裏に売買される事例の多いはずのXJR-15が、こうしてマーケットに売りに出される機会は非常に限られることから、目の肥えたジャガーのコレクターはもちろん、スーパーカー愛好家にとっても今回のオークション出品は、かなり注目すべきものだったようだ。

 このジャガーXJR-15に、RMサザビーズ北米本社は175万−210万ドルというエスティメート(推定落札価格)を設定した。この価格はかなり強気にも映ったのだが、実際にふたを開けてみると190万2500ドル、日本円換算で約2億万円という驚くべきプライスで落札されるに至ったのだ。

●「XJ220」との落札価格に違いは何に由来するのか

 ここで思い出されるのが、同じく今年の「Monteley」オークションに出品されていた、「ジャガーXJ220」の存在。同時代に同じくジャガーとジャガー・スポーツのコラボで生産・販売された、いわば身内のライバルである。

 そちらのエスティメートは、45万−55万ドルで実際の落札価格は47万2500ドル、日本円に換算すれば約5200万円だったのだが、このXJR-15の落札価格と比べると、4分の1ほどに過ぎないことがわかる。

 新車時の価格はXJ220が約7000万円、XJR-15は約1億円といわれていたのに対して、現在では大きな差がついてしまった一義的な理由としては、287台が製作されたXJ220よりも希少価値が高いことがあげられよう。しかしもうひとつ考えられる要因として、レーシングカーXJR-9とごく近いXJR-15の「純粋性」も無視できない。

 バブル真っ盛りの1990年代初頭、東京・練馬区某所の小さなガレージになぜか2台が置かれていたXJR-15のコックピットに座る機会があったのだが、カーボンモノコックのサイドシルをまたぐために、筆者はズボンの一部に裂け目を作ってしまった。

 また、消音器が最小限のものであるため盛大なサウンドをまき散らすV12エンジンに対抗して、助手席のパッセンジャーと会話するための無線ヘッドセットが標準装備されるほか、当時まことしやかに語られた噂を信ずれば、100km/h以内で流していると水温がみるみる上昇して、あっという間にオーバーヒートとなってしまう、ともいわれていた。

 いっぽうXJ220は、同じくレーシングカー「XJR11」由来で、絶対的パワー(542ps)でもXJR-15に勝るとはいえ、12気筒と比べてしまうと若干の寂しさもあるV6ツインターボ。フレームはレースカーとは別物のアルミハニカムモノコックと、スーパーカーとしての快適性が開発段階から盛り込まれていたことは間違いあるまい。

 市販されるプロダクトとしての要素を追求したジャガーの判断は正しかったが、30年後の現在におけるコレクター市場での評価とはまた別。それが今回のオークションにおける価格差の、大きな理由と思われるのである。

【画像】日本に秘蔵されていたジャガー「XJR-15」とは(24枚)

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