欧州では車をぶつけて駐車するのが当たり前? まことしやかな噂は本当なのでしょうか?

まことしやかに語り継がれる、「ヨーロッパではクルマをぶつけて駐車する」という都市伝説。これは果たして本当の話なのでしょうか。

「ぶつけて駐車」は本当の話?それとも都市伝説?

 ヨーロッパの一部の地域では、縦列駐車をする際、前後のクルマにバンパーをぶつけるということが当たり前におこなわれているといわれています。 

 日本では考えられないことですが、果たして本当なのでしょうか。

路上駐車が多い! フランス・パリの様子
路上駐車が多い! フランス・パリの様子

 世界の自動車文化には、日本ではちょっと考えられないようなアッと驚くものが少なくありません。

 なかでも、なかば都市伝説のようにいわれることがあるのは「ヨーロッパでは縦列駐車の際、バンパーをぶつけるのが当たり前」というものです。

 日本の場合、どんなに低速であったとしても、故意にぶつけることはまずありません。

 少しでもぶつかった場合は、その後のトラブルを避けるためにも、その場で警察を呼び、事故扱いとして処理することが一般的です。

 しかし、ヨーロッパの一部の地域では、市街地の路上などで縦列駐車をする際に前後のクルマにバンパーを当て、スペースを押しひろげて駐車することが当たり前のようにおこなわれているという都市伝説があります。

 駐車をするクルマのドライバーはもちろん、ぶつけられる側のクルマの持ち主も文句をいうことがないばかりか、スペースを広げやすいようにサイドブレーキを掛けないでおくのがマナーとされているといいます。

 日本の感覚ではにわかに信じられませんが、これは事実なのでしょうか。

 結論からいえば、こういった文化があるのは事実です。しかし、いくつか誤解もあるので注意が必要です。

 例えば、「ヨーロッパでは」という部分については、完全な誤りです。こうした文化があるのは、フランスやイタリアの都心部などのごく一部の地域であり、ヨーロッパ全域というわけではありません。

 フランスやイタリアでは、日本のようにコインパーキングが街中に多くあるわけではありません。

 駐車違反の取り締まりが厳しいわけでもないので、基本的にはクルマをとめる際は路上駐車をするのが一般的です。

 しかし、パリなどの大都市では、交通量に比べて駐車できるスペースが限られているため、必然的に路上は駐車車両でいっぱいになってしまいます。

 それでも、駐車をしたいクルマが続々と現れるため、わずかなスペースを活用するべく、バンパーをぶつけて駐車するという文化が生まれたといわれています。

 あくまで駐車スペースを確保することが目的のため、それほど交通量の多くない郊外などではあえてぶつけて駐車するようなことはありません。

 むしろ、多くの日本人と同様、ぶつけることはありえないことだと感じている人のほうが多いようです。

「ぶつける」という表現も、適切かどうかは議論の余地があります。

 バンパー同士が触れ合う、という意味ではぶつけるという表現も間違いではありませんが、ガツンガツンとぶつけることはありません。むしろ、「触れる」という程度が適切かもしれません。

 また、誰でもどんなクルマでもぶつけるわけではありません。

 日本で販売される欧州車ではあまりないのですが、欧州では無塗装のウレタンバンパーを採用した廉価グレードが設定されているクルマも少なくありません。

 こうしたバンパーはある程度ぶつけることを想定しており、また、修理交換も容易なことから、無塗装のウレタンバンパーが装着されているクルマについては駐車の際にぶつけることもあるようです。

 しかし、ボディ同色で塗装されている一定のクラス以上のクルマについては、ぶつけるようなことはまず考えられず、高級車にぶつけるようなこともありえません。

 さらにいえば、近年ではボディ同色のバンパーも一般化し、なおかつ電気式パーキングブレーキを採用しているクルマも増えていることから、そもそもバンパーをぶつける文化は見られなくなりつつあるともいわれています。

 つまり「ヨーロッパでは縦列駐車の際、バンパーをぶつけるのが当たり前」は100%正しいわけではなく、「ヨーロッパの都市部のごく一部の地域では、クルマによってバンパーをぶつけて駐車する文化がかつてはよく見られた」というのが正確かもしれません。

 したがって、間違った知識を持った旅行者が、ヨーロッパでクルマに乗った際に、誰彼かまわずぶつけていたら、まず間違いなくトラブルになるので注意が必要です。

※ ※ ※

 バンパーをぶつけて駐車する文化が生まれた背景には、都市部の混雑や道路の設計といった要素のほかに、フランスやイタリアが持つ国家的な課題、つまり移民を中心とした貧富の差が激しいことなどがあるといわれています。

 クルマは多くの人々の生活に根ざしたものであるからこそ、クルマに関わる文化は、その国に住む人々の文化と合わせて考えて見る必要があるのかもしれません。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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