なぜ「ジュニアシート」使用で死亡事故起きた? 軽乗用車の助手席で5歳男児が被害にあった背景とは
腰ベルトがお腹に食い込んで内臓破裂となった理由は何?
ジュニアシート(学童用)について改めて説明しておきます。
チャイルドシートには乳児用(ベビーシート)、幼児用(チャイルドシート)、学童用(ジュニアシート)の3種類があり、それぞれ子どもの体格によって使い分けます。
そして、4歳から12歳前後の子どもに向けたジュニアシートにはお尻部分だけの「ブースタータイプ」と背もたれや頭周りのサポートがついている「ハイバックタイプ」の2種類があります。
いずれも、クルマのシートベルトが安全に使える身長145cmから150cmまで、シートベルトを子どもの体の適正な位置に補正し、シートベルトを正しく機能されることを目的にしています。
最新の安全基準(ECE R44/04 S11またはECE R129)においては、以下の体格で使うことが義務付けられています。
●座面だけのブースター
身長125cm以上、体重22kg以上
※旧安全基準では「3歳&15kg」から使えると明記されたブースター(ベルト調節タイプ含む)もありますが、確実に子どもを守るため125cm&22kg以上で使って下さい
●背もたれが付いたハイバックジュニア
身長100cm-150cm前後、体重15kg以上
また、ジュニアシートは本体と子どもの体を1本のシートベルトで同時に固定して使用します。(ISO-FIXタイプのジュニアシートでは本体を車両シートにISO FIX固定、子どもの体だけをシートベルトで固定)
今回の事故で亡くなった男児は警察の調べなどによって「座面だけのブースタータイプ」を使用していたことがわかっています。
詳しい着座状況や助手席シート(スライド)の位置などは不明ですが、本来は腰骨をわたるように装着すべき「腰ベルト」がお腹に掛かっていた可能性が高いとみています。
メルセデス・ベンツやVWワーゲン、ボルボなど世界のトップメーカーが純正品として採用するブリタックスレーマー輸入元であり、日本で唯一のチャイルドシート専門店「チャイルドシートラボ」を運営するGMPインターナショナル、チャイルドシートアドバイザーの僧都氏に話を聞きました。ブリタックスレーマーのチャイルドシートには子どもの姿勢が崩れても常に安全な位置に腰ベルトをキープする「セキュアガード」が付いた製品があります。
「欧州の研究機関(CASPER(Child Advanced Safety Project)によると、正面衝突時にジュニアシートを使用した状況でもっとも障害リスクが高い部位は頭部(20%)でも、胸・胸椎(17%)でもなく、腹部(31%)であることが示されています。
骨盤と肋骨の間のちょうど骨が無いところにベルトが食い込むと内臓破裂の可能性がありとても危険です。大人子供に関わらず、正しい位置にベルトが掛かっていないとシートベルトの意味がありません。
また、車両シートをリクライニング(背もたれを倒した)した状態で乗られる人がいますが、この姿勢で強い衝撃を受けると、シートから体が滑り落ちてフロアに潜り込んでしまう『サブマリン現象』が起こりお腹にベルトが食い込む可能性があるので、走行中はシートリクライニングを起こすことが重要です」
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また、筆者が過去に取材した死亡事故では肩ベルトが首や顔にかかる状態で使用して衝突事故に遭い、肩ベルトによって頸動脈が切断された例もあります。
肩ベルトは首に掛からず、腰ベルトはお腹に掛けないように使うことがとても重要です。
命を守るために絶大な効果があるシートベルトですが、ベルトを掛ける位置を間違えると凶器にもなることを十分知っておくべきでしょう。
これは大人でも子どもでも妊婦でも同じで、肩ベルトは鎖骨の間、腰ベルトは両腰骨の間を通すように掛けます。肩・左腰骨・右腰骨の3点で衝撃を受け止めるため、「3点式シートベルト」という呼び名がついています。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
セミバケで4点を標準にすりゃぁいいのに。3点なんかほんま信用ならん。