「1000円値上げ効果」あった? 賛否両論あった「ロードプライシング」 今後も料金変動はあるか

東京2020オリンピック・パラリンピックの開催期間中に交通渋滞の緩和のために首都高では1000円値上げの取り組みがなされました。この取り組みではどれほどの効果があったのでしょうか。

オリパラ中の1000円値上げ、交通量を減らす効果はあった?

 2020年から1年遅れで開催された東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)は、2021年7月23日にはじまり、9月5日に閉会式が終わり、全日程が終了しました。
 
 この間に、混雑緩和のため、首都高速道路(以下、首都高)では1000円値上げの取り組みを実施。
 
 東京2020大会の期間中では、交通量の減少にどれだけの効果があったのでしょうか。

なぜ五輪開催中には首都高の通行料金は1000円上乗せとなるのか?
なぜ五輪開催中には首都高の通行料金は1000円上乗せとなるのか?

 今回の混雑緩和対策では「交通需要マネジメント(TDM)」の一環として交通規制がおこなわれました。

 TDMとは道路の混雑を緩和するために、クルマの効率的な利用や公共交通機関への転換などを広く呼びかけ、クルマの流入に規制をかけることで、ひとつの地域にクルマの流入が集中することを避けるため、人為的に調整する取り組みのことです。

 今回、東京2020大会では、開催期間中に一般のクルマの流入を抑えることで、選手や大会関係者などの輸送をスムーズにするために、こうした規制がおこなわれました。

 具体的には、首都高の「新都心(さいたま市、上り)」「外苑(上下)」「晴海(下り)」の各入り口を終日閉鎖したほか、2021年7月23日と8月8日、24日、9月5日のオリンピック、パラリンピックの開会式/閉会式では、霞ケ関(内外回り)、新宿(上り)、渋谷(上り)などの14か所が夕方から深夜にかけて閉鎖しています。

 さらに、このほかの入り口でも、混雑状況を見て閉鎖したり、料金所レーン数を制限。

 混雑状況に合わせた措置のため、どこの入り口が閉鎖されたのかについては、規制開始の直前まで利用者は把握することができませんでした。

 また、料金面でも首都高ではオリンピック・パラリンピックの開催期間中、日中の時間帯を中心にマイカー利用の乗用車や軽自動車、二輪車については、通行料金を1000円上乗せする「ロードプライシング」も実施。

 時間は午前6時から午後10時までとなっており、運送業者、事業用のトラック、タクシーなどは上乗せの対象外となっていました。

 一方で、期間中であっても午前0時から午前4時までの深夜の時間帯にETCを利用した車両のみ料金が5割引となる「ETC割引」が首都高全線でおこなわれました。

 こうした対応に、オリンピック期間中、SNSでは「首都高への流入を規制すれば、周辺の一般道が渋滞する」といった否定的な意見があがる一方で、「スムーズな大会運営にはやむを得ない措置」といった肯定的な意見もありました。

 オリンピック期間中の対応に賛否両論が渦巻くなか、2021年8月24日から9月5日の日程で開催されたパラリンピックでも、混雑を緩和するため、同様の規制が実施されましたが実際にどのような効果があったのでしょうか。

 開催期間中の交通規制について、首都高の広報担当者は以下のように話します。

「パラリンピック期間中の交通対策は、オリンピック時同様に、TDM(交通需要マネジメント)、TSM(交通システムマネジメント)、料金施策(ロードプライシング)がおこなわれていました。

 交通量などの増減実績については、国土交通省のホームページの通りとなります」

 国土交通省のホームページに公表されている「オリンピック・パラリンピック期間中の首都高速の料金施策」のデータを見てみると、パラリンピック期間中と2019年の同時期との比較をした首都高速の日交通量では、もっとも減少率が大きかったのは2021年9月4日で、首都高の交通量は32%、33万台減少しています。

 一方で、もっとも交通量の減少率が少なかったのは2021年8月30日の14%でしたが、それでもクルマの台数に換算すると首都高へのクルマの流入は、15万台分減少したことが分かります。

 パラリンピック期間中全体でみても、2019年の同時期を上回った日は1日もないことから、TDM、ロードプライシングといった施策は一定の効果があったとみることができるといえるでしょう。

 ちなみに、オリンピックの開会式(7月23日)と閉会式(8月8日)では、さらに効果が大きく、期間中のすべての日で2019年の同じ日の首都高の交通量を下回っただけでなく、8月8日には、42%(34万台)も減少しています。

 ただ、こうした結果にSNS上では「ロードプライシングがうまくいったと思っている政府関係者が、今後も頻繁にロードプライシングをしてくる気がする」と今後も国際的なイベントがあるごとに首都高の料金が値上げされることを不安視する声もあがっています。

 では、今後もロードプライシングが適用される可能性があるのでしょうか。国土交通省の担当者は次のように話しています。

「2021年8月におこなわれた今後の高速道路の在り方についてを含めた有識者の会議では、オリンピック・パラリンピックとは別の話として、ロードプライシングについて本格的にやっていくべきという話が挙がっています。

 そのため、具体的な場所や日程は決まっていませんが、本格的に進める検討をしています。今後、本格的な導入になった際にはオリンピック・パラリンピックのロードプライシングを参考にしつつ進めるということもあると思います」

※ ※ ※

 今回の「首都高1000円値上げ」は賛否両論あったものの、結果として交通量を抑制する効果はあったようです。今後、どのようなロードプライシングが実施されるのか、注視されます。

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