超高級ブランド初のEV! メルセデス・マイバッハ「EQS」はなぜSUVで登場した?

高級ブランドなのになぜEV? なぜSUV?

 では、そんなマイバッハから、なぜ、SUVのEVが登場したのでしょうか。伝統を大切にするブランドであれば、トラディショナルなセダンであっても良かったのではないでしょうか。

「メルセデス・マイバッハEQS」のインテリア
「メルセデス・マイバッハEQS」のインテリア

 そんな疑問の答えは、9月5日に発表されたリリースで、以下のように示されています。

「メルセデス・マイバッハのお客様は、特別なものを求めています。そのため、最高水準のエクスクルーシブ性と個性、エレガントなデザイン、完璧なクラフツマンシップ、そして最先端の技術により、お客様の期待を超えることを目的としています。

 中核市場である、中国、ロシア、韓国、アメリカ、ドイツの顧客は平均的に若くなっており、ラグジュアリーの定義も変化しています。メルセデス・マイバッハのお客様は、デジタル接続率が高く、当社のデジタル・ソリューションに最高のものを求めています。また、選択したブランドが、持続可能な価値観を支持し、環境に責任を持つことを期待しています」

 つまり、「若年化したお客様のラグジュアリーの定義が変化している」「持続可能性と環境への責任を求める」というユーザーのニーズに応えるのが、EVでSUVであるコンセプト メルセデス・マイバッハEQSであるというのです。

 伝統的な価値観でいえば、「V型12気筒エンジンが良い」とか「やはり最高にフォーマルなのはセダン」ということが優先されたはずです。しかし、若くて新しい価値観を持つ顧客は、別のものを求めているというのです。

 また、EVとSUVは親和性の高い組み合わせです。

 高性能なEVには大量のバッテリーが必要となります。バッテリーをたくさん搭載するほど、高出力化と航続距離の延長が可能となるからです。

 そうしたとき、SUVはセダンよりも車体が大きいため、そうした要望に応えやすいのです。また、大量のバッテリーは車体価格を押し上げますが、高級ブランドであれば、そうしたコスト増にも強くなります。

 さらに近年は、世界的大ブームであったSUVトレンドの波が、超プレミアム・ブランドにも押し寄せています。最先端を謳うプレミアム・ブランドが人気のSUVジャンルに、先進のEVを投入するのもおかしな話ではないでしょう。

 ちなみにEVのSUVは、まさに旬のジャンル。メルセデス・ベンツはEQブランドから、SUVのEVである「EQA」「EQB」「EQC」「EQS SUV」を発表していますし、アウディも最初のEVはSUVの「e-Tron」でした。

 また、VWの「ID.5」はデビュー間近。アメリカでは、軍用車にルーツを持つ「ハマーEV」が話題を集めています。トヨタからは、「bZ4X」、日産からは「アリア」が登場しています。近年の話題のEVといえば、その多くがSUVとなっているのです。

 メルセデス・マイバッハのような超高級ブランドでも、やはりトレンドは重要。そういう意味で、今回のEV SUVの導入は、旬を狙った当然の選択だったといえるのではないでしょうか。

【画像】超高級EV登場! マイバッハEQSってどんなクルマ?(18枚)

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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