ゴルフ場にクラシックカーを並べてゴルフコンペとコンクール!? 「ピエロ・タルッフィ」にちなんだイベントとは

イタリアでも一般に人気の「ミウラSV」

 しかしなぜ、このイベントのタイトルが、日本語で「銀狐」を意味する「La Volpe Argentata」になったのだろう。

 イタリアでは「狐」を「Volpe」といい、注意深く賢い、機転がきく、という意味でもある。「Argentata」は「シルバー」を指す。

 実は、ピエロ・タルッフィは若い頃から白髪であり、そして頭脳明晰のドライバーであった。つまり、彼はまさしく銀狐、というわけだ。

左からフェラーリ「250GT TDF」、フェラーリ「166 MMトゥーリング ベルリネッタ」、フェラーリ「212インター・ヴィニャーレ」、アルファ ロメオ「ジュリエッタ・スプリント」
左からフェラーリ「250GT TDF」、フェラーリ「166 MMトゥーリング ベルリネッタ」、フェラーリ「212インター・ヴィニャーレ」、アルファ ロメオ「ジュリエッタ・スプリント」

●2021年の“銀狐”に集まった名車たち

 イベントは、毎回ピエロ・タルッフィの人生に関わったクルマ・バイクを選び、特別企画をおこなっている。

 今年2021年は、ピエロ・タルッフィが1951年、フェラーリ「212 INTER VIGNALE(インター・ヴィニャーレ)」に乗りパナメリカーナのレースで優勝してから丁度70年ということで、それと同じモデルのフェラーリ「212 インター・ヴィニャーレ」が今年のメインのクルマとして登場。

 そして2002年、プリスカがScuderia del Portelloのチームとしてパナメリカーナに参戦した時のクルマ、アルファ ロメオ「ジュリエッタ スプリント 」(1957年)が、その横に並んだ。

 そのほか会場に並んだクルマの一部は下記のとおりだ。1950-1960年代のクルマを中心にトータルで25台の貴重なクルマが集まった。

・フィアット「1100Eギア」(1950年)
・Osca 1600GT Touring(1960年)
・フェラーリ「410スーパーアメリカ」(1958年)
・フィアット「8Vザガート」(1953年)
・フェラーリ「250 GT TDF」(1958年)
・ランチア「アウレリアB52ヴィニャーレ」(1953年)
・ランチア「アウレリアB24 S」(1955年)
・アルファ ロメオ「SZコーダトロンカ」(1962年)
・アルファ ロメオ「TZ1」(1964年)
・フェラーリ「166 MMトゥーリング ベルリネッタ」(1950年)
・ランボルギーニ「ミウラP400SV」(1971年)
・ランチア「ストラトス」(1975年)
・ブガッティ「EB110」(1995年)

 一方、ゴルフの方は、1組4人で40組、イタリア全土から集まった160人がコンペに参加。なかにはラリードライバーのVittorio Caneva(ヴィットリオ・カーネヴァ)、Gianfranco Cunico(ジャンフランコ・クーニコ)、レーシングドライバーのGabriele Tarquini(ガブリエレ・タルキーニ)も参加。

 なかなか目にすることがない貴重なクルマの横をゴルフカーがとおったり、ゴルフバックを担ぎながらクルマを眺めたり。グリーンの周りに並んだ色鮮やかなクルマはゴルフ場に非日常の景色を添えた。

 しかし、もしパッティンググリーンの周りに並べられたクルマにボールが飛んできたらと、ヒヤヒヤしたのは私だけではないだろう。

ピンクのカエルとともに
ピンクのカエルとともに

 また、ピンクのカエルのオブジェがところどころに登場し、見ているだけで心が和んだ。アーティストのロベルト・ベルタッツォン氏は「カエルは自然界にとって必要な生き物なんだ。今、それが存続の危機に陥っている。このカエルを見てそのことに気づいてほしい」と、熱く訴えていた。このイベント中、グリーン上にたくさんのピンクのカエルが置かれていたのだが、このゴルフ場は環境問題に熱心であることにも納得させられた。

 表彰式はプールサイドでビュッフェ形式の夕食中におこなわれた。夜の光に照らせれたプールは鮮やかなブルーに輝き、地元のワイン、チーズ、パスタ、肉など美味しいイタリア料理が並んだ。

 ビュッフェの列に並びながら前後の人と会話が弾んだ。クラシックカーを知らない人も、その美しさに圧倒され、新たな世界に興味を持った人も多かったようだ。

一般投票1位だったランボルギーニ「ミウラP400SV」
一般投票1位だったランボルギーニ「ミウラP400SV」

 それでは、今回のコンクールデレガンスの結果をお伝えしよう。

・ベスト・オブ・ショー/フェラーリ「410スーパーアメリカ」(1958年)
・一般投票1位/ランボルギーニ「ミウラP400SV」(1971年)
・優秀レストア賞/ランチア「アウレリアB52ヴィニャーレ」(1953年)

* * *

 現在イタリアのゴルフ人口は約8万8000人といわれている(https://www.federgolf.it イタリアの場合はゴルフ連盟の会員数)。イタリア全土のゴルフ場は約400。比べて日本のゴルフ人口約580万人、ゴルフ場約2800と比べるとまだまだニッチのスポーツといわれるイタリアのゴルフ界。

 見渡すばかりグリーンのなかでプレイをするゴルフィスタ。ゴルフをしながらクラシックカーと触れ合う機会ができ、クラシックカーが持つ価値、歴史など、新しい発見ができたのではないかと思う。

 これだけの素晴らしい貴重なクルマを集められたのはプリスカの長いクルマ人生あってこそ。2021年10月にはメキシコ人建築家のアルフィスタ、フランシスコ・ロペスゲラアルマダのアルファ ロメオ「ジュリエッタ スプリント」でパナメリカーナに女性2人で参戦するという。

 さて、来年もおこなわれるゴルフとクラッシックカーの祭典「La Volpe Argentata」。この美しいGolf della Montecchia にどんなクルマが登場するか、いまからとても楽しみだ。

【画像】「ミウラ」に「ストラトス」も! ゴルフボールが飛んでこないかヒヤヒヤのイベントとは(44枚)

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