ゴルフ場にクラシックカーを並べてゴルフコンペとコンクール!? 「ピエロ・タルッフィ」にちなんだイベントとは

モントレー・カー・ウィークではゴルフ場にクルマを並べるだけですが、イタリアではグリーン横にクルマを並べて、その横でゴルフコンペしちゃいます。名ドライバー「ピエロ・タルッフィ」にちなんだイベントを実際に取材してきました。

ゴルフコンペとコンクールデレガンスがひとつになった

Writer:野口祐子(NOGUCHI Yuko)
Photographer:Golf della Montecchia

 2021年7月17日、イタリア・パドヴァ(ベネト州)のゴルフクラブ「Golf della Montecchia」(https://www.golfmontecchia.it/)で、ゴルフコンペ&コンクールデレガンス/クラシックカーのイベント「La Volpe Argentata(ラ・ヴォルぺ・アルジェンタータ)」がおこなわれた。

 ミラノから高速道路A4に乗り、ヴェネツィア方面に向かって東に走り、パドヴァで下りゴルフ場へと向かった。走行距離約250km。会場のGolf della Montecchiaは、レストラン、プールなど充実した施設が整い環境問題にも留意している27ホールのゴルフ場だ。

 イベントの主催者はプリスカ・タルッフィ。1950年代、2輪・4輪のドライバー、エンジニアとして活躍したピエロ・タルッフィの娘である。

1951年、ピエロ・タルッフィはフェラーリ「212インター・ヴィニャーレ」でパアメリカーナ参戦し優勝。今年は70周年を迎える
1951年、ピエロ・タルッフィはフェラーリ「212インター・ヴィニャーレ」でパアメリカーナ参戦し優勝。今年は70周年を迎える

●ピエロ・タルッフィとはどんな人物

 父のピエロは、1932年、2輪ノートンで世界選手権(500cc)チャンピオンに、そして4輪ではF1(アルフ・ロメオ、フェラーリ、ダイムラー・ベンツ、マセラッティ、ヴァンオール)、世界スポーツカー選手権(ランチア、フロイド・クリマー・フォード、ルイジ・キネッティ・フェラーリ、マセラッティ)、ル・マン24時間、セブリング12時間、1000km ニュルブルリンク、ミッレミリア、カレラ・パナメリカーナなどに参戦し、また双胴の速度記録車によるレコードチャレンジなど数々の記録を残している。

 1906年、ローマ生まれのピエロ・タルッフィは、イタリアのモータースポーツの礎を作った人物のひとりなのである。

 1960年代には日本を訪れ、日本の警察に運転技法を指導したり、1965年に開設された船橋サーキットのコース設計に関わった。また、書籍『ワークスドライバー、ピエロタルッフィ』の日本語版が出版されている。この本を読んでドライビングテクニックを学んだ日本の方も多いのではないだろうか。

写真左から、タルキーニ・ガブリエレ、ジャンフランコ・クーニコ、プリスカ・タルッフィ、ヴィットリオ・カーネヴァ
写真左から、タルキーニ・ガブリエレ、ジャンフランコ・クーニコ、プリスカ・タルッフィ、ヴィットリオ・カーネヴァ

●タルッフィの娘もレーシングドライバーだった

 そんな父親の元で育ったプリスカ。9歳の時から父親の横で運転の指導を受けていたという。しかし、どこの親も同じように、娘には危険なレースの世界に足を踏み入れることは断固として反対していたそうだ。

 しかし、プリスカの体のなかには父親の血がしっかりと流れていた。幼い頃からいろいろなスポーツに挑戦したが、やはり彼女はエンジンの世界、そしてスピードの虜になった。

 どうしてもレーシングドライバーになりたかった彼女は、親の反対を押し切って遅咲きの24歳の時にヴァレルンガサーキットでおこなわれたルノーカップでデビュー。ヴァレルンガサーキットは父、ピエロ・タルッフィが設計した思い出のサーキットだ。そこでデビューすることになった娘の姿を見ながら母親は「夫だけでなく、娘まで危険な世界にいくなんて」と涙したという。

 その後はフォード「シエラ・コスワース」のステアリングを握り、イタリアのラリーでクラスチャンピオン、ヨーロッパ2位を獲得、アルファ ロメオ、ランチア、ポルシェ、フェラーリなどのドライバーとして数々のレースに参戦。最後は砂漠を走るラリーへと転向し5年間砂漠のラリーレイドで走り続けた。人は彼女を「砂漠の女」と呼ぶ。

 現在はジャーナリスト、ドライビングインストラクターとして活躍し、父から受け継いだ運転技術を後世に伝えている。

 プリスカは「父も好きだったように私もロードレースが好き。勿論サーキットレースもいろいろなテクニックを学ぶことができるので重要よ。その経験とテクニックがラリーの世界でとても役に立ったの」と語る。

 エネルギーに満ち溢れているプリスカは、情熱の赤がトレードマーク。そんな彼女、ゴルフはハンディ4という本格派でもある。イタリアのレディスシニアチャンピオンになったこともあるそうだ。

 父もゴルフが好きだったということから、プリスカはゴルフとクルマのイベントを企画。「父、ピエロ・タルッフィのことを思い出してほしい、忘れないでほしい」と。

 聞くと、ドライバーのなかには結構ゴルフ愛好家も多いという。レースとレースの合間にゴルフプレイ。ゴルファーとドライバー、縁がありそうだ。

 数年前にプリスカはパドヴァのゴルフ場、Golf della Montecchiaの会長パオロ・カザーティと出会い、ゴルフ場に新しい世界をと意気投合し、このイベント「La Volpe Argentata」が実現することになった。2021年で第4回目の開催となる。

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