なぜ偉い人の車は「黒塗りセダン」多い? 「高級感があるから」以外の理由とは
万国共通で「黒=フォーマル」となる理由
黒という色をどのようにとらえるかは、国や地域によって差があるといわれています。
日本においては、「黒」が求められる場の代表例は冠婚葬祭、とくに葬式の場です。
価値観が多様化するなかで、伝統や格式が重んじられることは少なくなりつつありますが、冠婚葬祭の場において、とくに男性は「黒」のスーツや紋付き袴を着用することが現在でも一般的です。
つまり、日本人は「黒」という色を「フォーマルな色」ととらえていることがうかがえます。
しかし、歴史的に見ると、「黒」が冠婚葬祭の色として定着したのは、それほど古いことではないようです。
むしろ、古来より日本では「白」をもっともフォーマル、厳かな色としていたようです。
神道が盛んな日本では、「神様と人間をつなぐ色」、「生と死をつなぐ色」として、「白」を神聖なものとしてとらえていました。
この時代の喪服は、黒ではなく白が一般的だったといわれており、その背景には、染色技術の発達していない時代でも、「白」であれば多くの人々が用意できたということもあったようです。
その後、江戸時代後期から明治時代にかけて、日本は織物などの繊維工業で外貨を稼ぐようになり、染色の技術も進歩し、色や柄のついた衣服を一般市民が身にまとうことも珍しくなくなりました。
それと同時に、日露戦争や日清戦争、そして太平洋戦争などで多くの犠牲者が出たことで、葬式の回数も多くなりました。
すると、白の喪服は汚れが目立ってしまうため、黒の喪服が使われるようになったといわれています。
つまり、黒をフォーマルな色と見なすようになったのは、明治期以降の比較的最近のことであり、しかも汚れが目立ちにくいという合理性を重視した結果でした。
一方、黒をフォーマルな色とするのは、欧米の文化でも見られることです。
一説によれば、ある王が亡くなった際、臣下の者たちが絶対の忠誠を表す意で、「王以外の何物にも染まらない色」として黒を着用したことで、フォーマルな場では黒が好まれるようになったといわれています。
また、「何物にも染まらない」という黒の特性は、「安定」や「重厚」を表す色、つまり絶対的な権力を示すものとしても受け入れられてきたようです。
現代ではそれが転じて、「高級感」を表す色としても、黒が認識されるようになりました。
このようにして、日本と欧米では、その過程こそ違えど、結果として「黒=フォーマルな色」として見なされるようになったと考えられます。
「エライ人」はフォーマルな場に行く機会が多く、必然的にフォーマルさを求められることになるため、「エラい人」のクルマは黒が多くなったと考えられます。
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「エラい人」のなかでも、皇族や王室のクルマの内外装には、黒のほかに「溜色」と呼ばれるあずき色が使用されたり、「ロイヤル・ブルー」と呼ばれる鮮やかな青が使用されたりと、その国の文化を色濃く映し出した色が使われることも多くなっています。
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