もうひと工夫欲しかった! あえなく不人気となった車3選
月に2万台も売れるような大ヒットを記録するクルマがある一方で、ヒットに恵まれなかったクルマも数多くあります。そうしたクルマはすべてがダメなわけでなく、ちょっとしたところの配慮が足りなかったり、マーケットの読みが甘かったりなどの理由で結果が出せなかったケースも存在。そこで、図らずも不人気となってしまった車を3車種ピックアップして紹介します。
ちょっと工夫が足りず不人気となったクルマを振り返る
近年、世界的にSUVが人気となっており、各メーカーとも次々と新型SUVを市場に投入している状況です。しかし、すべてのSUVがヒットしているかというとそうではなく、モデルによって販売台数に大きな開きがあります。
同様の現象は1990年代から2000年代にかけて爆発的に増えたミニバンでも見られたことで、似たようなコンセプトやデザインのモデルでも明暗が分かれました。
ヒットしたクルマとそうでないクルマで、決定的な差があることもあれば、そうでもないこともあり、新型車の開発の難しさがうかがえます。
そこで、ちょっと配慮が足りずに図らずも不人気となってしまったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●ダイハツ「ハイゼット キャディー」
2016年6月に発売されたダイハツ「ハイゼット キャディー」は、「ハイゼット」という名前がついているもののハイゼットベースの派生モデルではなく、軽ハイトワゴンの「ウェイク」をベースとした軽商用バンです。
ダイハツが調査したところ、「タント」や「ウェイク」を配送業務で使っているユーザーが存在し、荷物を満載する事がなく、荷物スペースの広さをさほど重視していないユーザーが一定数いること。
また、室内の静かさや、足元の広さ、乗り心地の良さなどを求める声もあったことから、ハイゼット キャディー誕生にいたったということです。
たしかにハイゼット キャディーは、ハイゼットカーゴよりも積載量は劣るものの、乗り心地や安全面で有利なレイアウトとなっており、デザインもウェイクそのものでカラフルなカラーリングを設定していることから、積載量にシビアではない生花店やベーカリーなどが便利に使える仕様となっています。
しかし、車内は2シーターのみと割り切っており、後部はフラットフロアが採用されるなど、荷物の積載には工夫されていますが、いざという時に3人、4人と人を乗せることはできません。
また、ビジネスシーンで使うにあたって最大積載量150kgは、ハイゼットカーゴの350kg(2名乗車時)から大きく見劣りし、価格面でもハイゼットカーゴより高額なことから販売は極端に低迷。
ハイゼット キャディーは2021年3月をもって生産を終了。5年弱の生産期間は商用車としてはかなり短命でした。
●ホンダ「ロゴ」
ホンダは1996年に、「シビック」の下位に位置していた「シティ」の後継車として「ロゴ」を発売。
最高出力66馬力を発揮する1.3リッター直列4気筒エンジンを搭載し、車重は790kgから860kgと軽量な車体だったことで、ベーシックカーとしては十分な性能でした。
また、運転席用エアバッグを全車に標準装備し、高い乗員保護性能を持つ新設計シャシを採用するなど、安全性にも配慮。
ボディタイプは3ドアとシティにはなかった5ドアを設定し、価格は3ドアの廉価グレード(MT車)で77万円(消費税含まず)からと、ライバルに対して戦略的な価格設定でした。
性能、装備、価格とすべての面でロゴは普段使いに適したモデルのはずでしたが、突出した面はなく、外観のデザインも大きな特徴がない地味な印象は否めず、販売は低迷。
その後、マイナーチェンジで2度、フロントフェイスの変更がおこなわれましたが、販売台数は回復することなく、2001年に生産を終了。
同年にはシャシからエンジンまで新設計された後継車の初代「フィット」が発売され、空前の大ヒットを記録しました。
フィットはデザイン、経済性、ユーティリティの高さ、走りの性能などが高い次元でバランスしていましたが、ロゴの失敗から多くを学んだ結果でしょう。
●シボレー「ソニック」
米GMが有するブランドのひとつ、シボレーのモデルというと、日本では「コルベット」や「カマロ」といったスポーツカーをイメージさせますが、かつてはスズキと提携してシボレーブランドで販売したコンパクトカーの「クルーズ」や「MW」が展開されました。
また、スズキとの合作以外にもコンパクトカーが存在。それが、2011年に日本で発売された「ソニック」です。
ソニックはGM韓国で生産されたコンパクトカーで、ボディサイズはグローバルカーだけあって全長4050mm×全幅1740mm×全高1525mmと日本では3ナンバーサイズの5ドアハッチバックですが、現行のフィットなどと同クラスといえるでしょう。
外観はワイド感を強調した安定感のあるフォルムで、特徴的な丸目4灯のヘッドライトが斬新かつ迫力ある印象です。
内装もスポーティな意匠で、アナログの大型タコメーターとデジタルのスピードメーターを組み合わせたコクピットを採用。
エンジンは最高出力115馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒で、トランスミッションは6速ATのみです。
しかし、日本市場では同クラスに強力なライバルが多く、1.6リッターエンジンは自動車税的にも不利。さらに装備が充実しているとはいえ価格は189万円からと比較的高めの設定で、人気とはなりませんでした。
ソニックは2016年1月に日本での販売を終了。やはり、日本人がシボレーに求めるイメージはスポーツカーなのか、現在はコルベットとカマロの2車に絞って日本で展開しています。
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冒頭で紹介したハイゼット キャディーには、2018年にホンダ「N-VAN」という強力なライバルが出現しました。
N-VANも「N-BOX」系のシャシをベースにしたFFバンですが、単なるビジネスユースだけを強調するのではなく、趣味のクルマという面もアピールし、センターピラーレスの採用や6速MTを設定するなど、ハイゼット キャディーに対して大きなアドバンテージがありました。
また、床面の高さでは不利になるものの、フルフラットに格納できる助手席と後席を設定したのも秀逸なレイアウトといえます。
N-VANは一般的な商用バンに対して荷室の長さでは劣りますが、それを払拭するアイデアが満載で、今も一定の人気を保っています。
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