VW新型「ゴルフ」絶好調! だがEVシフトが進むこの先 ゴルフは生き残っていけるのか

欧州ではEVの「ID.シリーズ」のラインナップが続々と登場

 とはいえ、VWゴルフが急に消えてなくなることはないと筆者は思います。

 その理由は、2021年3月7月にドイツのVW本社が発表した「将来の課題にプラットフォームモデルを使用」と「NEW AUTO」というふたつの2030年までの企業戦略にあります。

 この基本的な内容は、VWは2030年までにEV専用プラットフォームとソフトウェア、電池、サービスをつくっていくというもの。EVが拡大していき、内燃機エンジン(ICE)車が縮小していくというシナリオです。

VWの電気自動車「ID.3」(写真左)と「ID.4」(右)。日本ではまだ発売されていない
VWの電気自動車「ID.3」(写真左)と「ID.4」(右)。日本ではまだ発売されていない

 ところが、VWのこれから10年の計画を見ると、EVシフトの道程はそれほど急激なものではなかったのです。

 計画の一部を抜き書きすれば「(2030年までに)電気自動車のシェアは50%に増加すると予想していますが、2040年にはグループの各ブランドが主要市場で提供する新車のほぼ100%をゼロエミッション車にする予定です」「ICE市場は今後10年間で20%以上減少すると予測しています」「2030年までに、ヨーロッパにおける電気自動車の販売比率を最大60%に引き上げる予定です」「一次エネルギーの利用状況および規制条件の地域差を考慮して、内燃エンジンテクノロジーの終了に関する日付を確定しない方針です」とあります。

 確かに今後EVシフトが進むという内容ですが、よく読むと、10年後のエンジン(ICE)の市場の減少はおよそ20%に過ぎず、VWが2030年に欧州で販売するクルマの4割はEVではないというのです。しかも、内燃エンジンテクノロジーの終了は決めていないとも書かれています。つまり、10年後に「世界がEVだけになる」とは考えていないのです。

 一方、次世代のゴルフ、つまり「ゴルフ9」の登場は、2020年代の後半となるはず。つまり2030年よりも前です。

 そのころのVWは、計画では確かにEVを増やしていますが、まだまだエンジン(ICE)車を4割も販売しています。そういう意味で、9世代目のゴルフはエンジン搭載のまま販売されることでしょう。販売比率はEV版のID.3が勝っているかもしれませんが、エンジン車を望む人のためにゴルフも併売されているはずです。

 また、VWの新車がすべてカーボンフリー(EVやFCV、そして別の新しい技術を使ったパワートレイン)になるのは2040年ということですから、さらにエンジン(ICE)車が生き延びる猶予はその先10年もあります。もしかすると、次の次である「ゴルフ10」もエンジン(ICE)車の可能性もあります。

 どれだけのスピードでEVシフトが進むのかは、技術の進化に頼る部分が大きいといえます。EVが、エンジン車よりも便利で安くなれば、もっとシフトは早くなって「ゴルフ」の寿命は短くなるかもしれません。逆に技術が停滞すればその寿命は伸びるということです。

 どちらにせよ、長い目で考えれば、世代が交代するのは時代の流れであり、避けることはできません。かつてのVWの主力は空冷エンジンの「ビートル」でしたが、時代の流れとともに水冷エンジンのゴルフとなりました。

 同じように、エンジン車のゴルフが、将来的に主力の座をEVであるID.3に譲ることは間違いないと思います。ただし、その日がやってくるのは、ずいぶんと先のことのような気がしてなりません。

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