まだまだ憧れていた時代? アメリカナイズされた車3選
日本の自動車製造の歴史は100年以上前に始まりましたが、戦後に本格化した後でも欧米のクルマがお手本でした。なかでもアメリカは独自の自動車文化があり、それをなぞったようなモデルも存在。そこで、アメリカナイズされた日本車を、3車種ピックアップして紹介します。
アメリカナイズされた日本車を振り返る
日本で自動車製造が始まったのは大正時代で、すでに100年以上もの歴史があります。本格的かつ近代的な量産体制が敷かれたのは第二次世界大戦後のことで、急激な成長を遂げました。
一方で、戦前戦後における日本車は、すでに自動車大国だった欧米のクルマをお手本としたモデルが、大多数を占めていたといえます。
とくにアメリカ車は1970年代までは富の象徴であり、たとえば国産大型セダンはアメリカ車のデザインを模したモデルが散見されたほどです。
さらに、独自の自動車文化を構築していたアメリカへの憧れもあったのか、アメリカ車のトレンドを色濃く反映したようなモデルも存在。
そこで、昭和の時代に誕生したアメリカナイズされた日本車を、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「サニーカリフォルニア」
かつて日産の大衆車として主力車種だった「サニー」。4代目の「310型」でライトバンだけでなく、シリーズ初のステーションワゴンが加わりました。
1979年に登場したサニーのステーションワゴンは「サニーカリフォルニア」と命名。まさにアメリカ西海岸のライフスタイルへの憧れがあったのでしょう。
外観は積載量を重視するライトバンとは異なるボディパネルを採用した凝ったつくりで、リアハッチを大きく傾斜させて、よりスタイリッシュなフォルムを採用。
そして、サニーカリフォルニア最大の特徴が、オプションで設定されたボディサイドの木目調デカールです。
当時、この木目調デカール(パネル)は、アメリカのステーションワゴンやSUVでは定番のドレスアップアイテムでした。
アメリカの自動車文化を取り入れたサニーカリフォルニアは、見事に若い世代のユーザーから人気となり、オプションの木目調デカールは後継モデルにも設定されています。
ちなみに、日産はサニーカリフォルニアをステーションワゴンではなく「5ドアスポーツセダン」と呼称していました。
●トヨタ「ハイラックスサーフ」
現在、国内市場で販売されている唯一のピックアップであるトヨタ「ハイラックス」は、誕生から50年以上を経過するほど長い歴史のあるモデルです。
1984年にはこのハイラックスをベースに、車体後部へFRP製キャノピーを取り付け、ステーションワゴンタイプのSUVに仕立てた初代「ハイラックスサーフ」が誕生しました。
ハイラックス サーフは3ドアワゴンというスタイリッシュなデザインと、ピックアップトラックよりも日常での使い勝手に優れていたこともあり、アウトドアレジャーを楽しむユーザーを中心に人気となります。
当初は4ナンバー登録のライトバンとしてデビューし、ハイラックス ダブルキャブ4WDと同じ4輪リーフリジッド式サスペンションを採用。クロカン車ならではの悪路走破性や信頼性は高かったのですが、乗り心地や高速安定性は良好とはいえませんでした。
そこで、1985年のマイナーチェンジでフロントサスペンションの形式をダブルウイッシュボーンに改良して、乗り心地、走行安定性を向上。
搭載されたエンジンは2リッター直列4気筒ガソリンと2.4リッター直列4気筒ディーゼルを設定し、後にディーゼルターボが加わり、1986年には5ナンバーの乗用車モデルを追加したことでさらにユーザー層の拡大に成功しています。
SUVの起源は、アメリカの若者がピックアップトラックの荷台にキャノピーを取り付けたのが始まりといわれ、ハイラックスサーフはまさにSUVの作法に則ったモデルといえるでしょう。
●マツダ「ロータリーピックアップ」
前出のハイラックスサーフはピックアップトラックをベースにつくられていますが、アメリカでは現在もピックアップトラックがベストセラーの座に君臨しています。
これは、アメリカではピックアップトラックの税金や保険料が優遇されているためで、ちょうど日本の軽自動車のようなイメージです。
昔からアメリカではピックアップトラックの人気が高く、働くクルマとしてだけでなく普段使いも考慮されて、パワフルなエンジンを搭載していたり、豪華な装備とされるなど、乗用車と大きく変わりません。
1950年代のピックアップトラックでは「パンプキン」の愛称で呼ばれるフォード「F100」のように、丸みを帯びた独特のフォルムが主流でしたが、1960年代から1970年代にはスクエアなフォルムに変化。
そして、同時期には日本のメーカーも小型ピックアップトラックを次々とアメリカで発売しました。
そのなかの1台で、非常にユニークかつアメリカ的なモデルだったのが、1974年に発売されたアメリカ専用モデルのマツダ「ロータリーピックアップ」です。
前述のとおりスクエアのフォルムは当時の流行であり、フロントグリルなどにメッキパーツを多用するのもアメリカ流でした。
また、ロータリーピックアップ最大の特徴だったのが、車名のとおりロータリーエンジンを搭載していたことです。
112馬力を発揮する654cc×2ローターの「13B型」ロータリーエンジンをフロントに搭載し、外観では前後のフェンダーはオーバーフェンダー状に拡大して、フロントにはディスクブレーキを採用するなど、高性能なエンジンにふさわしいモディファイが施されています。
また、フロントグリルにはロータリーエンジンのローターを模したエンブレムが装着され、ロータリーエンジン搭載車であることを主張。
当時のアメリカ製フルサイズピックアップトラックでは、7リッター超のV型8気筒エンジンを搭載することも珍しくなく、まさにロータリーピックアップも特別なエンジンを搭載することで、ライバルにアドバンテージを築いたといえるでしょう。
しかし、1977年に発売からわずか3年ほどでロータリーピックアップの生産を終了。累計で約1万8000台が販売されましたが、現在は希少なモデルとなっています。
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冒頭に紹介したサニーカリフォルニアと同じく、「スカイライン ワゴン」やホンダ「シビックカントリー」なども木目調デカールを採用していました。
現在はほとんど見られなくなってしまいましたが、いま見ても淡色のボディカラーとマッチしています。
そして驚かされるのが、アメリカではこの木目調を手塗りで再現する職人がいることで、カスタマイズ文化が古くから定着しているアメリカならではといえるでしょう。
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