ミニバンにハイパワーなエンジンは暴挙か快挙か? 高性能ミニバン3選
1990年代の中頃から普及が加速したミニバンは、今ではファミリーカーの定番車種として不動の地位を獲得しています。ファミリーカーの責務として高い経済性が求められますが、かつてミニバンながら高性能なエンジンを搭載したモデルも存在。そこで、往年の高性能ミニバンを3車種ピックアップして紹介します。
ハイパワーなエンジンを搭載したミニバンを振り返る
今やファミリーカーの定番車種に君臨しているミニバンの起源はアメリカで、フルサイズバンに対して小型のバンをミニバンと呼称しました。ただし、決してコンパクトなモデルではなく、フルサイズバンよりも小さいという意味です。
日本では1990年代の中頃から急速に普及が始まり、数多くの車種が各メーカーから発売されました。
また、ファミリーカーというと高い経済性も不可欠で、ミニバンでも低燃費が要求され、現在はダウンサイジングターボ車や、ハイブリッド車が主力です。
一方、かつてはミニバンながらハイパワーなエンジンを搭載したモデルも存在。そこで、往年の高性能ミニバンを3車種ピックアップして紹介します。
●日産「プレーリーリバティ ハイウェイスターGT4」
日本でまだミニバンという言葉が広まる以前の1982年、日産はステーションワゴンタイプの3列シート車、初代「プレーリー」を発売。
リアドアは両面スライドドアでセンターピラーレス構造、超低床レイアウトを採用するなど、現在のミニバンに通じる基礎を築いていました。
しかし、セールス的には成功せず、2代目からは「ブルーバード」をベースにしたトールワゴンタイプのミニバンとして進化。
そして1998年に登場した3代目では、車名が「プレーリーリバティ」に改められました。
現在も「セレナ」などで展開しているカスタマイズモデル「ハイウェイスター」もすでに設定されており、1999年には「プレーリーリバティ ハイウェイスター4WD」に、S14型「シルビアK’s」やU12型「ブルーバードSSSアテーサリミテッド」で採用された、日産が誇るスポーツユニットの「SR20DET型」エンジンを搭載する「プレーリーリバティ ハイウェイスターGT4」が登場。
最高出力230馬力を発揮する2リッター直列4気筒ターボエンジンは、ミニバンには少々オーバースペックと思われますが、多人数乗車でも余裕ある走りを実現しました。
高性能なエンジンにふさわしく、足まわりはフロントがストラット、リアがマルチリンクの4輪独立懸架を採用するなど、乗り心地の良さと高い走行安定性を両立。
しかし、人気はそれほど高まらず、2001年のマイナーチェンジでハイウェイスターGT4は廃止となり、今ではかなりレアなモデルです。
●三菱「シャリオ リゾートランナーGT」
前出の初代プレーリー誕生の翌年、1983年には三菱も3列シートミニバンの「シャリオ」を発売しました。
その後、1991年にはトールワゴンの「RVR」と、主要なコンポーネンツを共有する兄弟車となった2代目シャリオがデビュー。
そしてミニバンというジャンルも定着した1995年には、ハイルーフに前席チルトアップガラスルーフを備えた「シャリオ リゾートランナー」に、「ランサーエボリューション」と同じ2リッター直列4気筒DOHCターボの「4G63型」エンジンを搭載した、「シャリオ リゾートランナーGT」が追加ラインナップされました。
最高出力230馬力(5MT車)と、ランサーエボリューションよりはマイルドなセッティングでしたが、ミニバンらしからぬ走行性能を実現。
しかし、ミニバンに高性能なターボエンジンというニーズは少なかったのか、1997年に登場した3代目の「シャリオ グランディス」ではGDIエンジンが主力となり、ターボエンジンは廃止されました。
●ホンダ「エリシオン プレステージ」
ホンダは1994年に初代「オデッセイ」、1996年に初代「ステップワゴン」を発売。両車とも大ヒットを記録し、ミニバン市場をけん引する存在となりました。
その後、ホンダはミニバンラインナップの拡充を図り、1999年にはカナダで生産される北米仕様のオデッセイを日本でも「ラグレイト」として販売を開始しますが、日本の道路事情ではボディが大きすぎて販売は低迷しました。
そこで、2004年に日本市場にマッチしたプレミアムミニバンの「エリシオン」を投入します。
しかし、プレミアムミニバンのライバルである日産「エルグランド」やトヨタ「アルファード」に対し、エリシオンは全高の低さから車格がひとまわり小さく見え、押し出し感も弱いことから販売は苦戦。
その対策として2007年に、より高級かつパワフルな「エリシオン プレステージ」が登場しました。
エリシオン プレステージに搭載されたエンジンは、同社のフラッグシップカー「レジェンド」と同じ、最高出力300馬力を発揮する3.5リッターV型6気筒SOHCで、スペック的にはライバルを大きく上まわるアドバンテージを獲得。
さらにフロントフェイスには、より押し出し感の強いデザインの大型フロントグリルを採用して、プレミアムミニバンに相応しい顔つきとなります。
ところが、その後もエリシオン プレステージはライバルを凌駕するほどの人気とはならず、2013年には生産を終了。現在は中国市場で、後継モデルが販売されています。
※ ※ ※
日本でミニバンの普及が始まって、すでに25年以上が経とうとしています。その間にさまざまなミニバンが登場しては消えていき、今では背が高くリアが両面スライドアのモデルというスタイルが完全に定着しました。
ある意味ミニバンに対するニーズが画一化されてしまったといえますが、それだけ市場も成熟したということでしょう。
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