5000万円を切った! 悲運のスーパーカーBMW「M1」の北米での評価とは

「M1」に下された予想外の落札価格とは

 RMサザビーズ「AMELIA ISLAND」オークションに出品されたBMW M1は、まばゆく輝くホワイトのボディに、ブラックのレザー/ファブリックのコンビ内装の組み合わせ。1980年5月27日にラインオフし、当初は西ドイツ(当時)国内フランクフルトのBMWディーラーに販売されたとのこと。

 車両に添付された登録証のコピーによると、1980年9月16日に最初のオーナーが経営するエレクトロニクス関連企業の名義で登録されたことが示されている。

設計はジャン・パオロ・ダラーラ、マルケージの鋼管フレームを採用し、ジウジアーロデザインのFRPパネルエクステリアを纏うBMW「M1」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
設計はジャン・パオロ・ダラーラ、マルケージの鋼管フレームを採用し、ジウジアーロデザインのFRPパネルエクステリアを纏うBMW「M1」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●極上コンディションながら、安価な約4572万円で落札

 1984年11月、このM1はアメリカ合衆国に上陸を果たす。カリフォルニア州サンタアナの専門業者によって、合衆国での登録と排出ガスの変更が完了した。アメリカでの使用に合わせたマイル表示の速度計を含むメータークラスターは、この時点で交換されたと考えられているようだ。

 それから3年後となる1987年、このM1はカリフォルニア州ロサンゼルス在住のエンスージアストから、今回のオークション委託者である現オーナーに譲渡されたのち、入念なメンテナンスを受けつつ、時おりのドライブに供されてきたようだ。

 そして2018年以来、現オーナーは愛車のリフレッシュを決意した。北米ノースカロライナ州グリーンズボロのクラシックBMWスペシャリスト「コーマン・オートワークス(Korman Autoworks)」社によってコンプリートされた注目すべき作業には、オリジナルの燃料タンクの取り外しと改装、調整の難しさで知られるクーゲルフィッシャー機械式燃料噴射システムのオーバーホールなども含まれ、5万ドル以上の費用が贅沢に投下されたという。

 また追加のサービスとして、ブレーキシステムと電気系にも同様のレベルのケアが施されている。もちろんクーラントや油脂類もフラッシングののちに交換し、フィルター類もすべて取り替えられた。インテリアでもスピーカーの新調を含むリフレッシュが図られるとともに、細心の注意を払って再調整が施されたとのことである。

 さらに2019年10月、コーマン・オートワークス社は自社ファクトリーにてBMW純正カラーのホワイトでリペイント。ジウジアーロのデザインによる独特かつ魅力的なスタイルのアロイホイールもレストアし、ミシュラン社製パイロットスポーツと組み合わせた。

 そして現在、30余年ぶりにマーケットに現れることになったこのM1は、ナンバーマッチングのエンジンと、新車時から残されたマッチングのスペアホイールにサービス請求書、ヒストリーを示すドキュメントの存在を確認する「BMWクラシック」発行の証明書が添付されている。

 また、委託者のコレクション内で追加されたマイレージ(走行距離)は、3075マイルに満たないとのことである。

 RMサザビーズ社の調査によると、アメリカに輸出されたM1はかなり少数とのこと。それゆえ北米のBMWエンスージアストの間では、常に渇望されるアイコン的な1台なのだ。

 そんなM1ゆえに、2010年代中盤の最盛期には、100万ドル(約1億円)越えも散見され、新型コロナウイルス禍の現在にあっても、高級クラシックカー・ディーラーなどでは6000万-7000万円の正札が付けられるのが通例となっている。

 ところが、今回のアメリア・アイランド・オークションでは41万7500ドル、日本円に換算すれば約4572万円で落札されることになった。

 この落札価格は近年の各オークションにおける結果、あるいは現在の国際マーケットに流通しているM1たちと比べても相当にリーズナブルといえる。また、来歴・コンディションともに申し分のない人気モデルでありながらも、時には予想外に安価な価格で入手できることもあるオークションの面白さを、図らずも提示する結果となったともいえるだろう。

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