ストイックにダイエットしたモデルもある? 非スポーツカーでも軽量な車5選
クルマの運動性能を高める手法のひとつが軽量化です。車重は「走る・曲がる・止まる」すべてに影響を与えるため、生粋のスポーツカーでは軽量化が重要となります。一方で、スポーツカーでなくても軽量なモデルも存在。そこで、非スポーツカーながら軽い車重に定評があったクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
燃費命のモデルや、必然的に軽くなったクルマとは?
クルマの性能を語るうえで重要な要素のひとつが車重です。近年は衝突安全性の向上や安全装備、快適装備の充実が当たり前なので車重が増える傾向にありますが、それでも各メーカーとも軽量化に対しての努力は続いているといえるでしょう。
車重はクルマの「走る・曲がる・止まる」すべての性能に影響があります。そのため、運動性能を高めた生粋のスポーツカーでは、高価な材料を使ったり余計な装備を省くなど、軽量化のためには惜しみません。
さらにクルマを軽くすることは燃費性能の向上にも大きく関わるため、いわゆるエコカーと呼ばれるクルマのなかには、スポーツカー並に軽量化にこだわったモデルもあります。
そこで、非スポーツカーながら軽い車重に定評があった平成に誕生したクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
●スズキ「アルト エコ」
1979年に誕生したスズキ初代「アルト」は、47万円という衝撃的な低価格によって大ヒットを記録。後の軽ボンネットバンブームの火付け役となりました。
その後、アルトはスズキの主力モデルとして代を重ね、現行モデルの8代目は、普段使いからビジネスユースまで幅広く使われるベーシックカーとして販売されています。
この歴代アルトのなかでも低燃費を追求するためストイックなまでに軽量化をおこなったモデルが、2011年に登場した「アルト エコ」です。
アルト エコは7代目アルトをベースに、最大のライバルであるダイハツ「ミライース」に対抗するべく開発されました。
エンジンルームまわりの骨格をはじめエンジン本体や足まわり、内装に至るまで、さまざまな部品の見直しによってベースモデルから20kgもの軽量化を実現しました。
また、停車直前にエンジンをストップさせる新たなアイドリングストップシステムを搭載し、エンジン本体では摩擦損失を徹底的に低減。
ほかにも車高を15mm下げつつバンパー形状の変更で空気抵抗を低減。さらに低転がり抵抗タイヤの採用とブレーキの引きずり抵抗の低減などによって、JC08モード燃費30.2km/Lというクラストップの低燃費を達成しました。
それだけにとどまらず、2013年の改良ではさらに20kgも軽量化して車重が710kgとなり、減速エネルギーから発電して電装品を駆動するシステム「エネチャージ」の採用などから燃費は33.0km/Lまで向上。モデルライフ末期の2014年には35km/Lを実現しました。
なお、アルト エコの燃料タンク容量は、ベース車が30リッターだったのに対し20リッターとオートバイ並に少なくなっており、まさにストイックに軽量化を追求していたということでしょう。
●ホンダ「インサイト」
1997年、トヨタは世界初の量産ハイブリッド車、初代「プリウス」を発売。28.0km/L(10・15モード)という、同クラスのおよそ半分の燃料消費量となる驚異的な低燃費を実現しました。
この初代プリウスに対抗するために1999年に誕生したのが、ホンダ初のハイブリッド車、初代「インサイト」です。
外観はスポーツカーのような流麗なウェッジシェイプを採用し、リアタイヤまわりをスパッツで覆うなど、徹底的な空気抵抗削減をおこなっています。
そして、軽量化についてはもはやスポーツカーを凌駕するほどでした。
まず、シャシは「NSX」で培った技術を使いアルミ製モノコックを採用。ボディ外板にもアルミ製とプラスチック製パネルを導入し、さらに室内はリアシートを排除して2シーター化をおこない、バッテリーとモーターを搭載しながらも車重は820kg(MT車)まで軽量化されました。
これら軽量化と空力性能の向上に加え、1リッター直列3気筒エンジンにアシスト用モーターを組み合わせた新開発のハイブリッドパワーユニットによって、量産車で世界最高となる35km/L(10・15モード)を達成し、初代プリウスを上まわることに成功。
その後もインサイトとプリウスは燃費競争を繰り広げましたが、最終的には2代目プリウスに引き離されたかたちで、インサイトは2006年に生産を終了しました。
軽量化のために高価な素材を惜しみなく使うなど、初代インサイトはまさにホンダの威信をかけたクルマでした。
●フォルクスワーゲン「ルポ 3L TDI」
フォルクスワーゲンの現行車で、もっともコンパクトなモデルといえば「up!」ですが、このup!の前身が1998年に誕生した「ルポ」です。
同社のコンパクトカー「ポロ」よりもさらに小さく、ボディサイズは全長3530mm×全幅1640mm×全高1480mmと軽自動車をひとまわり大きくしたくらいの3ドアハッチバックで、日本では2001年から発売されました。
当初、日本仕様は1.4リッター直列4気筒ガソリンエンジン車のみでしたが、欧州では最高出力61馬力の1.2リッター直列3気筒ターボディーゼルエンジンを搭載した「ルポ3L TDI」をラインナップ。
100kmの距離を3リッターの燃料で走ることが可能となった世界初のモデルから車名に「3L」が使われ、燃費は33.3km/L以上を実現していたことになります。
低燃費化の手法はエンジンの熱効率向上にとどまらず、標準モデルよりシャシやボディの鋼板と各ガラスを薄くし、ボンネットやドアだけでなくシートフレームまでアルミ製に変更。
さらにリアゲートの一部とステアリングのフレームにマグネシウム合金が使われ、パワーステアリングにパワーウインドウ、エアコンもオプションとした結果、車重は830kgを達成。
トランスミッションはシングルクラッチの5速AMTのみとされ、走行モードの「ECO」を選択すると、アイドリングストップや、走行中には積極的に高いギアを選択するなどのプログラムが実装されていました。
ほかにもフロントグリルやバンパーも専用形状のものが採用されて空気抵抗を低減し、専用の軽量アルミホイールと低転がり抵抗タイヤを装着しています。
ルポ 3L TDIは実験的なモデルでしたが、そのつくりは、まさにレーシングカー並といえるでしょう。
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