【フェラーリ戦線異状あり】バリモノ「テスタロッサ」が不人気なのは北米仕様のせい?
コンクール・コンディションで維持された1台の落札結果は?
このほどシルバーストーン・オークション社と英国フェラーリ・オーナーズ・クラブが共催したオークション、「The Sale of Ferraris in Association with Ferrari Owners’ Club of Great Britain」に出品された1987年型フェラーリ・テスタロッサは、かつてサンディエゴのフェラーリ代理店だった「コーンズ・モータース」社によって販売された、アメリカ仕様の左ハンドル車である。
●どのようなヒストリーを持つ「テスタロッサ」なのか
マイナーチェンジによって5穴ホイールとなったばかりの時期の中期型で、当時13万5050ドルで販売されたという記録が残されている。
この個体における最大のトピックは、カリフォルニア州サンディエゴに隣接する高級リゾート地、ラホーヤ在住の著名なカーコレクターにして、コンクール・デレガンス上位入賞の常連でもあるケネス・C・スミス氏が新車として購入したこととされる。
スミス氏のコレクションは、ロールスロイス、フェラーリ、パッカード、アストンマーティン、ジャガー、シボレー「コルベット」など多岐にわたるものとのこと。マーケティングおよび広告事業から引退したのち、ラホーヤのハーシェルアベニューに置かれた自身のオフィスを拠点に、コレクタブルなクラシックカーの販売にも携わり、欧米のクラシックカー界における名士として認知されているそうだ。
当然のことながら、スミス氏の所有するすべてのクルマは「コンクール・コンディション」だ。2014年の「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」において部門賞を獲得したロールス・ロイス「ファントムVセダンカ・ド・ヴィル」と同様に、全車とも正しい考証に基づいた最上級のコンディションで維持されているとのことである。
そんな最高のコレクターが30年以上にわたって愛蔵していたこともあって、この黒いテスタロッサも最高クラスの1台と思われる。ともに「ネロ(黒)」で仕立てられたエクステリア/インテリアは、1万4280マイル(約2万3000km)というローマイレージを物語るように、あたかも新車のような美しさを保持している。
2019年に、アメリカとイギリスに半年ずつ在住する現オーナーによって英国に輸入されたのち、ノッティンガムのフェラーリ正規代理店「グレイポール・フェラーリ(Graypaul Ferrari)」社に直行。テスタロッサでは肝要なタイミングベルト交換を含む、エンジンのフルサービスや、細かいメンテナンスサービスを受けたという。
また今回のオークション出品に際しては、オリジナルのドキュメントにレザーウォレット入りのブックセット、純正オプションだったスケドーニ社製ラゲッジセット(出荷時に入れられる麻袋つき)も添付されるなど、クラシック・フェラーリを手に入れる際に求められる条件は、すべて満たしているかに思われる。
さらに今回のオークション落札者には、英国のフェラーリ・オーナーズ・クラブの無料会員資格を受ける一年分の権利も付与されるとのことであった。
●アメリカンな「テスタロッサ」の最終ジャッジは?
シルバーストーン・オークション社は「これは素晴らしいコンディションと非常に少ない走行距離で保有され、ドライバーに極上の楽しさと冒険を与える準備の整ったテスタロッサを手に入れる最高のチャンスです」という謳い文句とともに、9万から11万英ポンド、つまり日本円換算で約1382万円から約1690万円というエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが競売では入札が進まず、あえなくNo Sale(流札)に終わってしまったのだ。
車両コンディションや来歴からすれば、エスティメートが高すぎだったとも思えないいっぽうで、やはりサイドマーカーやリアバンパーの巨大な樹脂製ガーニッシュなど、北米仕様特有の追加パーツが「無粋」と評されたか、あるいはポリッシュ仕上げの施された「アメリカンな」アロイホイールがイギリスのフェラーリ愛好家には敬遠されたのか、などの理由も推測される。
たとえ著名コレクターが大切に保有してきたテスタロッサであっても、オークション現場の「流れ」を獲得できない限り、高価落札とはならないことを証明したかにも感じられた1台である。
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