「ジープ」にしか見えないアルファ ロメオがあった! 「マッタ」の数奇な運命とは

「1900M」は、ミッレ・ミリアで優勝していた!

 アルファ ロメオ1900Mは「51年式偵察車両」として正式採用されたことから「AR(Autovettura da Ricognizione=偵察車両)51」の名のもとに、イタリア陸軍に納入。生来の目的である偵察のほか、牽引車両などにも重用されることになった。

後世に撮影されたオフィシャル写真
後世に撮影されたオフィシャル写真

 また、翌1952年には民生用モデルにあたる「AR52」も追加され、警察/軍警察(カラビニエリ)や消防署などに採用されたほか、農業用動力車としても使用された。さらに、戦後アメリカ軍から大量放出されたジープによって、ヨーロッパ大陸で新たに生まれた購買層である、4輪駆動車でクロスカントリー走行を行うことをスポーツとして楽しむ顧客や、アウトドア的なファッションとして使用するユーザーにも、ごく一部ながら販売されたといわれている。

●ニックネーム「マッタ」の由来は?

 ちなみに、このモデルが一般的に「マッタ(Matta=狂った、常軌を逸したの意)」のニックネームで呼ばれたのは、「どこでも走る」と大々的に謳われた当時の広告コピーが原因ともいわれている。

 たしかに同じアルファ ロメオでも、第二次大戦中のイタリア軍が使用していた「6C2500コロニアーレ(Coloniale)」は、同時代の超高級ツーリングカー「6C2500トゥリズモ」の車高を上げ、簡素なオープンボディを組み合わせた後輪駆動車であり、それに比べたら、モダンな4WDの1900Mはまさしく「どこでも走るクルマ」と映ったに違いない。

 さらに、アルファ ロメオが歴史上初めて、スポーティではないクルマを一般向けに販売したことについて、古くからのアルフィスタ(アルファ ロメオ愛好家)は「スキャンダル」と評価。これも「マッタ」というニックネームの要因となったのは間違いないだろうが、それでもイタリア発のジープ型多目的クロスカントリーカーとして、一定の評価は得ることができたようだ。

●マッタが短命に終わった理由とは

 ところが、同じ1951年にイタリア最大の自動車メーカー、フィアットから同様の多目的ビークル「カンパニョーラ(Campagnola)」が登場したことで、アルファ ロメオ1900Mシリーズの行く末には暗雲が立ち込める。

 戦後フィアットの最上級ベルリーナ「1900」から流用した、1901ccの直列4気筒OHVのガソリンないしはディーゼルエンジンを搭載し、車体構造もアルファ ロメオ1900Mより格段とシンプルだったカンパニョーラは、軍隊でのヘビーデューティな使用環境には適していると判断された。

 そのうえ、イタリアの戦後復興には欠かせない存在であった巨大コングロマリット、フィアット・グループとの関係を良好にしておく必要性もあったことから、すでに1951年に採用されていたアルファ ロメオと並行して、1954年からフィアット・カンパニョーラもイタリア国軍およびNATOに正式配備。結果として、アルファ ロメオ1900Mにとって代わるかたちとなった。

●伝説の都市間ロードレース“ミッレ・ミリア”で大活躍

 AR51は、生産開始の翌1952年までに1921台がラインオフ(ほかに2012台説や2054台説もあり)され、軍に配備された。そして、民生用としてマーケットの拡大が期待されたAR52も、1954年ごろまでにわずか154台でフェードアウトを余儀なくされてしまった。フィアット・カンパニョーラが1974年に2代目へと移行し、1987年まで生産されたことを思えば、いささか寂しいといわざるを得ない。

 しかし1900Mマッタには、いかにもアルファ ロメオらしい素晴らしいエピソードがあることを、ここに特記しておきたい。

 当時としては市販スポーツカーでさえも珍しかったDOHCエンジンを搭載した高性能車らしく、1952年の「ミッレ・ミリア」軍用車カテゴリーに2台体制でワークスエントリーした「1900M-AR51」の1台は、アントニオ・コスタ中尉/フランチェスコ・ヴェルガ准尉組のドライブにて、堂々のクラス優勝を果たしたのだ。

 当時のイタリアにおけるもっとも重要なレース、ミッレ・ミリアに、軍人のドライブによる軍用車部門があったことにまず驚かされるが、この勝利もまた、まさしく「マッタ」と呼ぶべきエピソードであろう。

 ちなみにこの時の1900Mマッタは、同じく2台体制でエントリーしていた宿敵フィアット・カンパニョーラよりも40分以上早く、ブレシアのゴールに到着を果たしていたという。

* * *

 2016年に、アルファ ロメオ初のSUV「ステルヴィオ」がデビューした際、当時の報道ではその祖先として1900Mの存在も取り上げてはいたものの、詳細が深く掘り下げられるまでには至らなかったようだ。

 しかし「マッタ」こと1900M-AR51/52は、誕生から70年を経ても語り継がれるに相応しい、伝説のアルファ ロメオだったのである。

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