【別注モデル】世界にたった2台! 964型ベースのルーフ「CTR」はどうして生まれた?

964ベースの貴重なCTRにつけられたプライスとは

●「イエローバード」とはこんなクルマ

 RUFの最初のこだわりは、エアロダイナミクスの向上と軽量化にあった。リペアが楽なようにとスチール素材を用いていたドアやフェンダー、エンジンカバーなどは軽量なアルミニウム製に改められ、前後のバンパーにはグラスファイバーも使用されている。

 リアバンパーに設けられたエアアウトレットやコンパクトなミラーなどを見れば、RUFのエアロダイアミクスへの取り組みがいかに積極的だったかを伺い知ることができる。

 リアには当時のターボ風のウイングが装備され、キャビンにはレカロ製のレーシングバケットシートやロールケージなどのエクイップメントが装備される。

当時のターボ風のウイングが装備された RUF「CTR カレラ4」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
当時のターボ風のウイングが装備された RUF「CTR カレラ4」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 リアに搭載されるエンジンは、排気量を3.2リッターから3.4リッターへと拡大したツインターボチャージャー付きの水平対向6気筒SOHCだった。

 最高出力は469ps、最大トルクは553Nmと発表されたが、RUFは常に世界中どこでもその環境下で得られるパワー表示しかしないのが常であるので、おそらくこのCTRも実際には500ps前後の最高出力を発揮していたと思われる。トランスミッションは5速MT。これもまたRUFによるオリジナルである

 1987年から生産されたコンプリートのCTRは、諸説あるものの30台といわれている。

 さらに2台のみ、930型の次世代モデルとなる964型911のホワイトボディから製作されたものが存在する。

 正確にはアメリカに在住する964型911のカスタマー、ヘッドドール兄弟が各々の911をCTR化することを望み、ドイツへとクルマを送って作り上げられたものである。

●オークションに出品されたCTRのヒストリーとは

 アロイス・ルーフにとっても、964型でCTRを製作することは歓迎すべき話だった。ヘッドドール兄弟は、アメリカのさまざまなモータースポーツイベントで優秀なリザルトを残しており、何よりその964型911はAWDの駆動方式を持つカレラ4だったからだ。

 アロイス・ルーフはかねてからAWDに強い興味を抱いており、それが最善の駆動方式であるという確信を持っていた。つまり964型911カレラ4でCTRを製作できるのは、RUFとしても大いに価値のあることだったのだ。

 ホワイトとブラックのカレラ4はほどなくRUF社へと届けられるが、そのうちの1台、ホワイトのモデルが今回アメリア・アイランド・オークションに出品されることになったのだ。

 オークションの結果は、34万6000ドル(邦貨換算約3740万円)であった。世界でわずか30台ほどしか生息しないイエローバードのなかでも、さらに珍しい1台。それを実際に見るのは、絶滅危惧種の生物を見るより難しいのは確かだ。

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