シトロエンの「ハイドロサス」は壊れない!? 勇気を持って世界遺産と向き合ってみよう!【中古車至難】

最新テクノロジーを使って乗り心地を向上させたクルマが増えている。一方で未だに乗り心地といえばフランス車だ、というクルマ好きの方は多い。それは1955年、ハイドロニューマチック・サスペンション(ハイドロサス)を搭載したシトロエン「DS」の登場を起因としている。それ以降、各社がハイドロサス搭載車を販売していたが、今回はどのメーカーよりも積極的にハイドロサスを採用していたシトロエンを解説。いまなお色あせない、ハイドロ搭載シトロエンが持つ魅力について紹介したい。

90年以上前から尖ったメーカーだったシトロエン

 非常にギラついた顔立ちのクルマ。あるいは「コンピュータの満漢全席」とでも評したくなるクルマ。

 筆者はそういった物々を一概に否定する感性は持ち合わせていないが、それでも時おり、そういったクルマばかりとなった路上の風景に疲れることはある。

 そんなとき、選びたくなるのが「ハイドロニューマチック・サスペンション」を採用していた往年のシトロエン各車だ。

 ご承知のとおりシトロエンは、ダブルヘリカルギア(やまば歯車)の製造で財を成したフランス人、アンドレ・シトロエンが1919年に興した自動車メーカーである。

 欧州の自動車メーカーとしては初めてオール鋼製ボディのクルマを大量生産するなど、初期段階から先進性が目立ったシトロエンだったが、1934年登場の「トラクシオン・アヴァン」(世界的に見てきわめて早い時期に前輪駆動とモノコック構造のシャシを採用したモデル)で、その企業キャラクターは決定的となった。

 さらに決定づけたのが、1955年登場のDSというモデルに採用された「ハイドロニューマチック・サスペンション」だった。

●魔法の絨毯の乗り心地はこうして生まれた

シトロエンDSはフォルクスワーゲン「ビートル」やBMC「ミニ」に次ぐ世界のクルマ史に残る名車だ。斬新なデザインと構造を持ったDSはフランスを代表するクルマとして今でも絶対的な認知度を誇っている。そんなDSだが、サスペンション以外に安価パーツを使用した「ID」という廉価モデルも存在していた(C)Stellantis N.V.
シトロエンDSはフォルクスワーゲン「ビートル」やBMC「ミニ」に次ぐ世界のクルマ史に残る名車だ。斬新なデザインと構造を持ったDSはフランスを代表するクルマとして今でも絶対的な認知度を誇っている。そんなDSだが、サスペンション以外に安価パーツを使用した「ID」という廉価モデルも存在していた(C)Stellantis N.V.

 賢明なるVAGUE読者各位には今さらな話だろうが、シトロエンのハイドロニューマチックとは、一般的な金属バネの代わりにオイルと窒素を使っているサスペンションシステムのこと。

 エンジンルームの左右に「スフェア」という球体があり、その内部に高圧の窒素ガスとオイルが封入されている。これらが普通のクルマでいう金属バネとショックアブソーバーの役割を果たし、路面からの衝撃をあくまでもやわらかく吸収し続ける仕組みになっているのだ。

 その乗り味は、簡単にいうなら「魔法の絨毯」である。

 そしてその車台の上に乗るボディおよびインテリアの意匠がまた素晴らしい。

 当時のアバンギャルド(前衛)が今なおアバンギャルドであり続け、それでいて人間味というか、「人間本来の生理に合っている感じ」も見て取れる意匠なのだ。

 ただし問題は、「それって今でもフツーに乗れるのか?」という点だ。

 年式的に古いDSはおくとして、ある程度現実的な選択肢となる「GS/GSA」でも35年から51年前の品であり、往年のハイドロ系シトロエンのなかでは新しいといえる「BX」でさえ28年から39年前のクルマだ。

 なおかつ、いささかややこしいハイドロニューマチックである。

 2021年の今、それに乗るという行為は実際のところ、どうなのか?

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1件のコメント

  1. 昨年末に2006年製のC6(2.2L HDi 6MT)を思い切って購入しました
    毎日の通勤の足として使っていますが、もったいないかも…でも、最終進化型のハイドロ車をMTで走らせる時間は至福の一言に尽きます!

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