モバイル免許に小型低速車…「車ユーザーの生活」今後5年でどう変わる? 交通政策の影響は
新しい乗り物や高齢ドライバー対策は?
新しい乗り物については、トヨタが発売している「C+pod」のような超小型モビリティの普及をさらに進めます。
一方で、欧米で普及している電動キックボードについては、警察庁の有識者会議が2021年4月に公開した中間報告で「小型低速車」という新しいカテゴリーを設けるとしています。最高時速15kmで車道を走行し、ヘルメット着用は任意とする方向性が示されています。
さらに、フランス、ドイツ、イタリアなどでの法規制の内容を鑑み、日本でも電動キックボードについて年齢制限を決めて運転免許証を不要とする可能性も視野に入れた議論が進むようです。
人口における高齢化率が今後も上昇することが確実な日本では、高齢ドライバーへの対応も大きな社会課題です。
いわゆる“池袋暴走”など、高齢ドライバーによる重大事故に対しては、事故の防止・被害軽減に資する先進安全技術を搭載した安全運転サポート車(サポカー)の性能向上・普及促進を進めるとしています。
注目されるのは、今回の交通政策基本計画のなかでは、高齢ドライバーが自主的に免許の取り消しを申請する、いわゆる免許返納を強く後押しするというスタンスではないところです。運転を継続、または免許返納というような二者択一ではなく、新技術を導入したサポカー限定免許の普及などにより、日常生活の中で運転の継続を必要とする高齢ドライバーに運転に対する選択肢を増やす姿勢を示しています。
さらに、免許返納後の移動については、生活の質が維持できるような施策を強化します。
具体的には、地方自治体が主体となり、地域住民同士が助け合う姿勢と公共交通の再編を融合させ、住民ファーストの観点から地域交通を根本的に見直していきます。
このほか、高速道路の通行料金、鉄道・バス・タクシーなどの運賃を交通量や利用者数に応じて変動させるダイナミックプライシング(運賃変動制)の導入が検討されています。
また、自然災害に対する防災や、新しい生活様式における二地域居住やワーケーションにおける、社会とクルマの新しい関係についても検討が進んでいます。このなかでは、最近流行しているキャンピングカー活用についての議論も始まっているところです。
これから2025年度までの約5年間で、日本のクルマ事情はどのように変化していくのでしょうか。その移り変わりをしっかりと見守っていきたいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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