AT車全盛の現代でMT車に乗るのはなぜ? オーナーが語る「あえてMTを選ぶ理由」

性能面は最新AT車が有利? MT車ならではのメリットは?

 MT車を選んだ理由で、操作感の次に多かったのが「MT車しか設定がなかったから」というものです。

 MT車しか設定がないモデルといえば、少し前まではスバル「WRX STI」がありましたが、いまは販売終了しています。

 また、MT車の設定しかないホンダ「シビックタイプR」も現行モデルは予定の販売台数が完売。現在は新車で購入することができなくなっており、MT車しか用意していない国産の乗用車は存在しません。

5速MTか3速ATの設定だったスズキ2代目「ジムニー(JA11)」
5速MTか3速ATの設定だったスズキ2代目「ジムニー(JA11)」

 細かく見れば、トヨタ「GRヤリス」の1.6リッターターボ車やトヨタ「カローラ/カローラツーリング」の1.2リッターターボ車のように、MT車しか設定されないグレードは存在しますが、今回のインタビューで「MTしかなかった」と答えたのは少し前のモデルのオーナーだけでした。

 変わったところでは、スズキの先々代「ジムニー」(2代目)オーナーのTさん(30代)の「ATもあるんですが3段ATなので……」というもの。高速走行時の静粛性や燃費性能などからAT車は実質「ない」との判断で、5速まであるMT車を選んだというケースもありました。

 同じように実質「ない」と考えてMT車を購入したというのが、アルファロメオ「アルファ147」が愛車のMさん(40代)。

 同車には「セレスピード」と呼ばれるセミATがラインナップされていましたが、当時としては先進的なメカニズムゆえ熟成不足と故障への不安を感じ、「オーソドックスなMT車しかない」と選んだのだそうです。

 かつては変速の速度や燃費はMT車のほうが優れていましたが、進化を遂げた現代のAT車に性能面では敵いません。

 MT車にメリットを見出すとしたら、それは部品点数の少なさによる「軽さ」や「トラブルの少なさ」で、Mさんのアルファ147のMTは理にかなった選択といえるでしょう。

 そのほか、「AT車みたいに踏み間違えによる誤発進がないから」という意見もありましたが、クルマが動いている状況でブレーキと間違えてアクセルを踏んでしまった場合はAT車もMT車も関係なく加速してしまうため、どちらにせよ注意は必要です。

※ ※ ※

 MT車をチョイスする理由はさまざまですが、どのオーナーも一様に、99%がAT車という現状や今後を憂いていました。

 その理由は「次に欲しくなるクルマにMTの設定がないかもしれない」といったもので、ほとんどの回答者が次のクルマもMT車を選びたいと考えていることが分かります。

 2019年にはAT限定免許取得者の比率はおよそ68%を占めており、この比率は年々上昇していますが、逆に32%はMT車も運転できる普通免許を取得しているともいえます。

 新車で買えるMT車はどんどん減っているなかでも、MT車を運転できる人はそこまで減っていないともいえ、将来的には中古MT車の需給バランスから相場が高騰する可能性もありそうです。

 MT車愛好家にとってはますます苦難の時代となるかもしれません。

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Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ

2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。

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