クルマで走ると路面から音楽!? 不思議な舗装路「メロディロード」の謎に迫る
全国各地に、「メロディロード」と呼ばれる道路が存在します。メロディロードは走行するとロードノイズが音楽に聞こえる特殊な舗装路のことを指しますが、一体どのような仕組みなのでしょうか。メロディロードを開発・施工している企業にインタビューしました。
走るとメロディが聞こえる! 秘密は舗装路に刻まれた溝にあり
クルマで走ると、路面から音楽が聞こえてくる道路があります。これは「メロディロード」と呼ばれていますが、一体どのような仕組みで音楽が聞こえるのでしょうか。
メロディロードの開発を手掛け、2011年に特許を取得した北海道の施工会社「篠田興業」の篠田社長のひらめきから生まれたそうです。
メロディロードは、タイヤと路面の接触時に発生する摩擦音、いわゆる「ロードノイズ」を意図的に生み出すことで、あたかもメロディのように聴こえるという特殊な舗装が施されています。メロディロード誕生の経緯について、篠田社長に聞きました。
「メロディロードが生まれたきっかけは、北海道特有の事情が関係しています。道内の道は農業機械や工事用重機が走行することも多く、路面がダメージを受けてデコボコが発生しやすいのです。
また、スリップ防止のために溝が刻まれた道路も多く、その上をクルマが通過するときに走行速度によって音階が変わることに気づき、メロディにしようと思いつきました」
その後、北海道立総合研究機構工業試験場との共同開発で、音階の精度を高める実験を繰り返して商品化に至ったといいます。
音階の秘密は、路面に切削される溝にあります。深さ3mmから6mm、幅6mmから24mm、長さ2.9mから3.1mの溝を調整して配置することで、音階とメロディが生まれるのだそうです。
溝と溝の間隔が狭いと高音になり、広いと低音になるのだとか。また溝の深さによって音量の調節も可能です。
このメロディロードには適正なスピードへの速度抑制効果があり、さらに雪が多い地域特有の排水性の向上や凍結防止、制動力向上なども期待できるといわれています。
この発想自体が、近年話題になっている「仕掛け学」そのものだといえます。仕掛け学とは、「問題解決に資するよう人の行動をいざなうもの」を研究する学問のこと。
たとえば、ゴミをゴミ箱に投げ入れたくなるように、ゴミ箱上にバスケットゴールを設けるとか、ゴミの不法投棄を防ぐために路地に小さな鳥居を設置するなど、強制や禁止ではなく、ついつい人が興味を持って自ら行動したくなるような仕掛けのことをいいます。現在はさまざまなマーケティングでも応用されています。
このメロディロードも、施工された道路脇に表示を設けてドライバーの「メロディ聴いてみたいな」という心理を利用しており、最適な速度(時速40km程度)で走行するように誘導することで、気がつけば速度を抑制して走っているというわけです。
ちなみに、日本で最初にメロディロードが設置されたのは、北海道標津郡標津町の川北北七線道路の基線から東側です。制限速度で走行すると、「知床旅情」のメロディが聞こえてきます。
現在では全国で約30か所の道路にメロディロードが施工されており、交通安全だけでなく地域のPRにも役立っているそうです。
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メロディロードの進化系として、現在試験的に施工されたのが「しゃべる」バージョンです。標津町内に2か所設置されています。
ひとつめは、「交差点です」という声が2回繰り返されたあとに「止まってください」と聞こえるように施工されています。
もうひとつは、カーブの200m手前から「カーブです」と警告したあと「スピードを落としてください」と聞こえるように施工されました。
音階と違い、言葉は非常に難しくどこまで聞き取れるかは微妙ながら、聞こうとすることで交通安全に寄与する効果を狙っているそうです。
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