EVで復活する「ハマー」に続きコルベットも電動化!? アメ車のEVシフトの課題とは
コルベットやタホのEVはいつ登場するのか?
一方で、小型乗用EVのシボレー「ボルトEV」はグローバルで2万6552台と全体の1割強にとどまっており、とくにアメリカでは本格的なEVシフトが始まっているという状況ではありません。
アメリカの自動車ディーラー関係者の大半が「ユーザーはまだEVを本気で買おうと思っていない」と分析しているという印象がありますし、アメリカの自動車メディア関係者の多くもディーラーと同じような意見を持っていると感じます。
EV市場をけん引するテスラは、EVに特化することで独自の世界感を作り上げて成功しました。
しかし、GMを含めて既存の大手自動車メーカーがこれからEVシフトを実現させるためには、ディーラーやユーザーにどうやってEVに振り向いてもらうのかといったレベルの課題があるのが実情です。
それでも、2040年カーボンニュートラルに向けてGMはEVシフトを加速させ、2025年までにグローバルで30車種の新型EVを投入する予定です。
このうちの約20車種が2025年までに北米で、キャデラック、GMC、シボレーそれぞれのブランドで設定されますが、その筆頭が前述のGMCのハマーEVとなります。
キャデラックでは2022年前半に導入予定のクロスオーバーモデル「リリック」がワールドプレミアされていますが、さらにセダンモデルの「セレスティック」を近く公開予定。シボレーはすでに販売されているボルトEVの販売を拡大していきます。
このうち、ハマーEV、リリック、セレスティックについては、GMが新たに開発したEVプラットフォームの「アルティウム」を採用します。
韓国LG化学と共同開発したリチウムイオン二次電池を車体中央の下部に電池パック化し、電池容量は最大で200kWhという大容量が可能で、これは現状のテスラの2倍に相当します。
モーターは車体の前もしくは後、または前後に配置し、最大でハマーEVのような3モーター式を設定。
たとえば現行モデルリアミッドシップ化したシボレー「コルベット」をアルティウム化するとなると、まったく新しい設計要件で作り直す必要があり、新生コルベットEV誕生は2030年代以降になる可能性が高いと思われます。
また、アメリカで人気の高いシボレーのタホやサバーバン、GMC「ユーコン」、キャデラック「エスカレード」などのフルサイズSUVや、フルサイズピックアップトラックのシボレー「シルバラード」の場合、ラダーフレームを採用している基本設計をアルティウム化するのは2030年代後半になるのではないでしょうか。
今後、アメリカ政府や各州政府の電動化施策によって、GMのEVシフト戦略が大幅に前倒しされる可能性はあると思いますが、アメ車の本格的なEV化にはまだまだ時間がかかりそうです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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