ホンダ「フィット」の本気仕様現る!? RS復活を切望! トヨタの本気「ヤリス」と共演!
ホンダ「フィット」のスポーツ仕様でモータースポーツに挑戦! ライバルトヨタ「ヤリス(TGRラリー仕様)」も登場で街乗りコンパクトカーでも走りの楽しさが垣間見えたようです。
ホンダ「フィット」に本気のスポーツ仕様
2020年2月にフルモデルチェンジしたホンダ「フィット」は、先代に設定されていたスポーツグレードとなる「RS」は設定されていません。
しかし、ハイブリッド車(e:HEV)でもスポーツ走行を楽しめる仕様としてある試作車が存在します。それはどのような背景から誕生したのでしょうか。
2021年4月23日にホンダ・三部敏弘宏社長が、同社の目指す姿と取り組みの方向性について説明をおこないました。
注目は4輪の電動化戦略についてで、「EV/FCVの販売比率を2040年にグローバルで100%」を目指すと発表。
現在このキーワードだけが一人歩きしていますが、その後の質疑応答で「特定技術(=電動化)に対して決め打ちでシナリオを描かない」、「色々な技術に対して可能性を残しておくべきだと思う」と語っています。
筆者(山本シンヤ)は、プレゼンと質疑応答の矛盾は気になるものの、ホンダの本音は後者にあると思っています。
といっても、現時点では技術的な課題も多く、ここ10年近くはハイブリッドが主流になることは明らかでしょう。
現在、ホンダには1モーター式、2モーター式、3モーター式の3つのハイブリッドシステムが用意されていますが、現在のメインストリームは2モーター式です。
かつては「スポーツハイブリッドi-MMD」と呼ばれていましたが、現在は「e:HEV(イー・エイチ・イー・ブイ)と呼ばれて、コンパクトカーの「フィット」からセダンの「アコード」まで大小さまざまなモデルに展開されています。
このシステムを簡単におさらいすると、基本はエンジンが発電した電力でモーターを駆動させるシリーズ式ハイブリッドですが、高速巡航などモーターよりエンジンのほうが効率が良い場合はエンジン直結クラッチを用いてエンジン走行をおこなうホンダ独自のシステムです。
実際に乗ると、「ハイブリッドなのにハイブリッドらしくない」フィーリングに驚きます。
具体的には、アクセルを踏んだときの応答の良さや滑らかなフィーリングはモーターらしい感触ですが、発電用エンジンの車速とエンジン回転数の連動感を向上させる制御により、まるで良くできたガソリン車のようなシームレスで滑らかなフィーリングです。
これを「電動感がない」と見るか、「ガソリン車から乗り換えても違和感がないか」と思うかは人それぞれですが、筆者は後者です。ただ、「e:HEVスポーツできるか?」といわれると、即答できない自分もいます。
そんななか、筆者はJOY耐(ツインリンクもてぎで開催されている参加型の7時間耐久レース)に参戦するフィットe:HEVに試乗しました。
このマシンは次世代パワートレイン車でモータースポーツに挑戦する同業の先輩・石井昌道氏が立ち上げたモータージャーナリストチーム「TOKYO NEXT SPEED」とホンダのフィット開発チームのコラボによって開発されたマシンになります。
過去に「シビックハイブリッド」や「インサイト」、「CR-Z」などで参戦をおこなっています。
実は筆者もゲストドライバーで参戦したこともあります。このマシンのコンセプトは「公道走行を主軸に開発したe:HEVをクローズドサーキット環境で鍛え、走る愉しさとポテンシャルを最大限に引き出す」です。
つまり、ガソリン車が主流の参加型モータースポーツに電動車(=e:HEV)で挑戦することで、システムの可能性を検証すると同時に将来のハイブリッドスポーツの可能性を探ろうというわけです。
実は、2020年6月末に開催されるはずだったJOY耐に参戦する予定で準備を進めていましたがコロナの影響で中止。
その後、同年11月末に開催された姉妹イベント・ミニJOY耐(2時間の耐久レース)に参戦し、エントリー台数31台のなか、予選25位/決勝11位の成績を残しています。今回のマシンはそのときの仕様になっています。
エクステリアは、無限のエアロパーツ、大きく下げられた車高、Sタイヤ(アドバンA050)などにより、ホンワカ系のフィットが俄然精悍に見えます。
インテリアはノーマルの面影は残りますが、不必要な装備が取り外されロールケージの追加、フルバケットシートの装着などによりレーシングカーしています。
注目のパワートレインですが、「e:HEVの持つ潜在能力を限界まで出し切る」という考えの元で、量産パワートレインのハードには手を加えずにデータソフトの変更を実施。具体には下記のような内容です。
1.システム電圧の変更(570V→600V)による最大出力向上(109ps→131ps)/最大トルク継続時間の拡大/中間トルク・加速の向上。
2.駆動エネルギー確保のためにバッテリー使用領域の拡大とエンジン発電領域の拡大。
3.・アクセルセッティングを応答性重視のセットアップ(駆動力レート変更/駆動力フィルタ変更)の採用。
4.エネルギーマネージメントをサーキット走行に合わせて最適化(発電ロス低減/回生量アップなど)。
5.バッテリーアシストボタン(エンジン発電/ブレーキ回生で得られた電気を積極的バッテリーに貯めるモード)の採用。
6.熱マネージメント(IPU/バッテリーのエアコン強制冷却、電動水冷ポンプ回転数設定変更でPCU冷却)
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では、実際に乗るとどのような仕上がりなのでしょうか。今回は、ツインリンクもてぎの南コースでノーマル(標準仕様)と共に走らせてみました。
ノーマルは良くも悪くも電動車感は少なめですが、JOY耐仕様はモーターの特性(瞬時に高トルクが得られる)をフルに活かしている印象です。
そのため、アクセル一踏みでまるでローンチコントロールを使ったかのような鋭い加速をしてくれます。
恐らく0-50m加速くらいであれば、下手なスポーツカー顔負けのダッシュ力に感じました。
このときのエンジンは最高出力発生回転数(=6000rpm)固定で回っていますが、エンジンサウンドに雑味がないのとロードノイズなどのほかの音で相殺、さらにヘルメットをかぶっているのでそれほど気になりません。
ちなみにエンジン音は、ドライバーが加減速を感じる重要なポイントということで、アクセルOFF時には4000rpmくらいまで回転を落とします。この辺りの心配りもニクイ所です。
コーナーの立ち上がりでアクセルを踏んだときの応答性の高さもJOY耐仕様のポイントのひとつでしょう。
ノーマルはシステムの都合(アクセルON→発電エンジン始動→モーターに電力供給→駆動)でアクセルを踏み込んでもタイムラグが出てしまいますが、JOY耐仕様は前出のようなソフト変更で常に駆動のスタンバイが出来ているので、アクセルを踏んだ瞬間にパワーが路面に伝わります。
例えるならば「常にギア比が合っている状態」といったイメージで、むしろタイヤを空転させないようにアクセルコントロールが必要になるくらいでした。
フットワークは低重心化と専用サスペンション&Sタイヤなどにより、ノーズの入りの良さはもちろん旋回スピードの高さはノーマルとは雲泥の差。
路面の悪い所でリアのハネが気になったものの、本コース用でバッテリーの重さの影響を最小限にするためのセットアップだと聞いて納得しました。
一般的に量産車ベースのレーシングカーはシートポジションが低くロールケージが車内に張り巡らされているうえに、ドライバーはフルフェイスのヘルメットを被るので死角が増える傾向です。
しかし、新型フィットはレーシングカーでも視界が広く、視界の良さが安心感と正確なドライビングに繋がるのは一般道もサーキットも変わらないので、改めてありがたい機能のひとつだと感じました。
現状では、本コースでアタックすると1周持たないようで、「どこでバッテリーを貯め、どこで使うか?」を考えながら走る必要があるといいます。つまり、気合だけではダメで頭脳戦だそうです。
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