近い将来 ガソリン車は消えてなくなる!? これからクルマは本当にEVだけになるのか
最近の報道を見ると、あと10年か20年かで世界中が電気自動車(EV)で埋め尽くされるというような論調が目立つ。極端な報道だと、近い将来ガソリン車はすべて淘汰され、ハイブリッド車も生き残れないというものまである。はたしてそれは本当なのか。モータージャーナリスト大谷達也氏によるEV連載、最終回だ。
10年後20年後に、クルマはすべてEVになっている!?
EVに関する連載も今回が最終回。第1回では、世界各国で大躍進を遂げているとされるEVが実は各国政府の助成金などを得て販売台数を伸ばしているのであって、しかも新車販売全体に占める比率はまだ2%から7%に過ぎないことを述べた。
続く第2回では日本市場で手に入る代表的な3台のEVについてその長所と短所を解説。既存のエンジン車と同じ利便性を備えたEVがいまだ登場していないことを指摘した。そして第3回では、いろいろと不便なところがあるEVでも、自分のライフスタイルを変えることでその魅力を享受できる可能性があることを示した。
最終回となる今回は、「EVは未来の自動車の切り札となりうるか?」という問いかけに対する私なりの見解について説明するつもりだ。
最近の報道を見ると、あと10年か20年かで世界中がEVで埋め尽くされるとの論調が目立つ。
いま、世界中の多くの自動車メーカーが電動化時代に向けて巨額の投資をおこない、製品を開発したり生産体制を整えているのは事実だ。でも、あと10年か20年でこの世からエンジン車がすべて消え去ってしまうというのは幻想に近いような気がする。
世界エネルギー機関(IEA)は2017年に自動車のドライブトレインに関する技術普及のシナリオを示した。それによると、2040年でもEVが自動車全体に占める比率は15%ほどで、FCVが約1%。残る80%以上は、それがプラグインハイブリッド(PHV)にせよ通常のハイブリッド(HV)にせよ、なんらかのエンジンを積んだクルマになると予測している。
日本貿易振興会(JETRO)が昨年12月に報じたところによると、「2030年までにEVを少なくとも3000万台に増やす」というEUの発表に対し、欧州自動車工業会は「現実的でない」と批判したそうだ。
なるほど、ヨーロッパ市場でEV比率が7%を越えたといっても、残る93%はPHVにせよHVにせよエンジンを積んだ既存のクルマであり、これに携わる労働者の大半を解雇し、生産設備を大幅に刷新しない限り、EUが示した目標は達成できない。そしてそんなことをしたら、社会が大混乱に陥るのは目に見えている。
おそらく、EVは今後も台数を伸ばしていくだろう。だからといって10年か20年で、いまあるエンジン車がすべてEVに置き換わると考えるのは現実的ではない。私がそう考える根拠は、ここにある。
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