1台で1億円も!? 売らないクルマなぜ作る?「コンセプトカー」の目的は

「一品対応」のコンセプトカー、そのお値段は?

 コンセプトカーは当然自動車メーカー自身が企画していますが(バブル期に存在した台数合わせのような「コンセプト不明なコンセプトカー」は、社外の提案を採用したという噂も……)、製作に関しては必ずしも自社でおこなっているとは限りません。

 実は日本にもカロッツェリアが数多く存在し、自動車メーカーからの依頼で数多くの受託開発/生産をおこなっています。この辺りは量産メーカーが苦手な「一品対応」が得意な小回りの利いた体制が活きているのでしょう。

 彼らの存在はあまり表には出てきませんが、ダイハツ「X-021」(1991年)はダイハツと童夢の共同開発、日産「PIVO2」(2007年)は東京アールアンドデーが設計・製作をおこなっていると発表。またワークス系ではトヨタ・カスタマイジング&ディベロップメント(TCD)や、オーテックジャパンもコンセプトカー製作に協力しているそうです。

東京アールアンドデーが設計・製作した日産のコンセプトカー「PIVO2」。
東京アールアンドデーが設計・製作した日産のコンセプトカー「PIVO2」。

 多くの人が気になるのは「コンセプトカーって一体いくらなの?」というところでしょう。

 どのメーカーも価格は公表していませんが、一品対応ということを考えると推定で1台1億円超というのが一般的な相場のようで、実際に走行可能なモデルとなるとそれ以上の価格なのはいうまでもないでしょう。

 なぜ、そこまでしてコンセプトカーを製作する必要があるのでしょうか。

 自動車メーカーの関係者に聞くと、「法規に縛られずにピュアな形を提案できる」「実車でなければ表現できない何かが確実に存在する」といいます。すでに自動車メーカーでもバーチャル開発はかなりのレベルで進んでいるといいますが、やはり「現地現物」に勝るものはない――という判断だと思います。

 身近なところでいうと、ニューモデルが出た際に「写真で見るより実車の方がカッコいい」という声をよく聞きますが、画面を介して見るのと肉眼で見るのでは、感じ方や伝わり方は異なります。それだけ人間の感性は優れているのです。

 なかには「デジタルの時代に古典的で非効率」という人もいると思いますが、アナログかつ非効率なやり方でないと表現し辛いのがクルマのデザインです。

 あるデザイナーに話を聞くと、「CADや3Dプリンターの進化は著しいですが、どの自動車メーカーも工業用の粘土で作られたクレイモデルを経てデザインを決定しています。その理由は……お分かりですよね? 人間の目はどんな計測機よりも優れていますから」。

 そう考えると、仮に1億円以上かかったとしてもコンセプトカーを作る意味や価値はあるのです。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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