三菱の頼みの綱は「デリカD:5」のみ!? SUVが軒並み不調に陥る意外な理由とは
デリカD:5以外の三菱車の売れ行きは?
デリカD:5には、発売から時間を経過しても色褪せない魅力が備わるため、売却時の金額も高く、デリカD:5を乗り継ぐユーザーが増えました。
このデリカD:5の高人気を考えると、ほかの三菱車は売れ行きがいま一歩といわざるをえません。

小型/普通車で設計の新しい車種には、2018年に登場した「エクリプスクロス」がありますが、2020年の登録台数は5374台です。1か月平均は448台で、デリカD:5の半分以下に留まります。
また「アウトランダー」の登録台数は2020年に3600台、1か月平均は300台でした。なぜエクリプスクロスとアウトランダーは登録台数が少ないのでしょうか。
三菱の販売店は次のようにいいます。
「エクリプスクロスはスポーティな運転感覚が特徴で、アウトランダーは落ち着いた大人っぽい雰囲気です。両車ともに個性的ですが、ボディサイズに大きな差はありません。そのためにお客さまを取り合う面はあるでしょう。
とくにアウトランダーはすでに次期型が公表されているので、以前に比べて売れ行きが下がりました。しかし次期型の発売時期などは現時点でメーカーから聞いていません」
三菱のSUVは、エクリプスクロス、アウトランダー、「RVR」の3車種で、プラットフォームは全車共通です。
ホイールベースも2670mmで等しく、確かに身内同士で競います。
そしてアウトランダーは次期型がすでに北米で発売され、日本への導入にも期待がかかるところです。また、RVRは2010年に登場し、すでに11年を経過しています。
こうなるとデリカD:5以外で堅調に売れそうな車種は、小型/普通車ではエクリプスクロスですが、販売店スタッフがいうようにボディサイズなどアウトランダーと共通点も多いです。
しかもエクリプスクロスは、2020年にクリーンディーゼルターボを廃止して、アウトランダーと同じPHEVに切り替えました。ディーゼルを用意したときに比べると両車は重複する部分が増えて、さらに競合しやすくなっています。
三菱の店舗数はトヨタの13%、ホンダや日産の30%前後と販売網が小さいことが、ライバル車との力関係も売れ行きに影響を与えています。
デリカD:5は、先に述べた通り外観と走破力はミニバンスタイルのSUVで3列目シートも快適です。アルファードや日産「セレナ」では得られない魅力的な個性が備わり、息の長い人気車になりました。
その点でエクリプスクロスは、トヨタ「RAV4」、日産「エクストレイル」、マツダ「CX-5」などのライバル車と競うところが多いです。デリカD:5に比べて、顧客を奪われやすいのです。
そのためにエクリプスクロスは、残価設定ローンの3年後の残価率も45%で、デリカD:5の55%に比べて見劣りします。エクリプスクロスは設計が新しいのに、下取りの際にデリカD:5ほど高値で売却できないことを示しています。
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このように見てみると、デリカD:5が優秀な商品であることに改めて気付きます。
エクリプスクロスや今後登場する次期アウトランダーにも、デリカD:5のような唯一無二の価値を与えることが大切です。
後輪のモーターを強力にしたPHEVの安定したスポーティな運転感覚などは、もっと強くアピールすべきでしょう。
また三菱のブランドイメージは、SUVと4WDを備えたスポーツモデルです。エクリプスクロスにも、かつての「ランサーエボリューションシリーズ」に相当する付加価値の高いスポーツモデルを加えるとイメージリーダーカーになるでしょう。
優れた商品開発のヒントはデリカD:5に秘められているように思います。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。












































