その走りは紛れもなくポルシェ!! 初の量産EVとは思えない完成度の高さを誇る「タイカン」

加速だけじゃない全方面でEVの魅力を発揮

 京都の街中からワインディングロード、高速道路をひととおり「タイカンターボS」で走ってみての結論は、紛れもなくポルシェであるということだった。もちろん、その感じ方は先ほども書いたとおり人それぞれで、普段から「911」の「GT3」あたりに慣れ親しんでいる方(マニア)にとっては同じポルシェというには“ほど遠い存在”だろうし、逆にSUVやパナメーラに乗っている人で911の乗り味を知っている方であればタイカンは“紛れもなくポルシェ”ということだろう。

 そう、少しだけサイズの大きい、けれどもクルマとしての商品性が似通った「パナメーラ」と比べると、タイカンの方が911に近い(SUVとの比較ではいわずもがな)。どのようなシチュエーションでも路面に近いところでフラットに駆け抜けるドライブフィールなどは確実に911寄りである。実はタイカンでホームワインディングの嵐山高尾パークウェイを駆けた一週間後に今度は「911ターボS」で走ったのだけれど、目を三角にしない程度で駆け抜けるドライブフィール(と速さ)は実によく似ていた。

 流石にここイッパツの加速は凄まじい。特にローンチコントロールを使っての発進では、ブガッティで経験して以来の、脳の血液が後頭部に寄ってしまうような加速を味わった。テスラ「モデルSプレイド」なら一層凄まじい加速を味わうこともできるのだろうが、タイカンターボSのそれはより確実で安定しており、しかも何度もトライ可能である。そういう意味ではテスラの方がスリリングだったということもできるが。

 もっともタイカンの魅力を加速のみで語ること、つまりはテスラとの比較で語ることは、あまり意味があるとは思えない。なぜならポルシェはテスラに勝つためにBEVのタイカンを出したわけではないと思うからだ。

ルーフ形状などはパラメーラと同じくクーペ風4セダン。アクティブエアロダイナミクスシステムには可動式リアスポイラーも含まれ、3段階で展開される(C)橋本玲
ルーフ形状などはパラメーラと同じくクーペ風4セダン。アクティブエアロダイナミクスシステムには可動式リアスポイラーも含まれ、3段階で展開される(C)橋本玲

 結論からいうとポルシェはただただEVのポルシェを作りたかっただけであった。結果、現時点で到達したベストミックスがこのスペックであり、この価格帯のBEVだったのだ。それをテスラと比較すること自体、ナンセンスであろう。

 要するにポルシェは最低でもパナメーラと同じ程度にはポルシェらしく振る舞い、らしく評価されるようなEVを作りたかった。実際に出来上がったタイカンは最新の911に勝るとも劣らぬ総合パフォーマンスを発揮するクルマに仕上がっている。

 総合パフォーマンスにおいて、ポルシェらしくないEVなど必要ない。たとえそれが0−100km/h加速2秒以下で走ったとしても、パイロンスラロームの途中で姿勢を崩すようなクルマなどポルシェでないのだ。吊るしでニュルをまともに走れないようなクルマにもポルシェのクレストをつけるわけにはいかない。街中での乗り味から高速クルージングの信頼感まで、すべてがポルシェでなければならなかった。

 わかりやすい数字だけでは比較などできない哲学がありとあらゆる性能や機能に含まれている。それがポルシェらしさとなって、乗り手に訴えかけてくる。タイカンはBEVだから感動的だったのではなく、それがポルシェらしく新しさをアピールしていたからこそ良いクルマだと思えたのだった。

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