その走りは紛れもなくポルシェ!! 初の量産EVとは思えない完成度の高さを誇る「タイカン」

自動車の環境規制がますます厳しくなってきた現在。普通車のEVだけでなくスポーツ志向の強いEVも、数々の車メーカーが発売を始めている。ポルシェも量産EVとしては初めてのスポーツセダンEV「タイカン」を発売。ポルシェらしいというフィーリングとは一体なんだろうか。

タイカンのクルマとしての魅力に迫る

 なぜ今、EVが注目されるのか。答えはシンプルだ。それが目新しいからである。

 地球環境を考えて脱炭素社会を目指したいから? もちろん大義としてはそうだ。けれどもひとたび己の頭にEVの存在が大義とともにインプットされたのち、そこからさらに買おうという動機付けになっていくためには、特に日本の場合は欧米と違って個人の環境意識に頼るだけでは難しい。商品が見るからに新しい魅力を発していなければならないし、実際に乗っても新しさを十分に感じさせるようなナカミでなければならない。

 名実ともに目新しい品物でないのであれば、趣味的もしくは嗜好品的な性質の強い高級ブランドからBEVが出てくる理由もまた見当たらないと思う(もちろん、二酸化炭素の排出規制という大義もあるが)。

 マイクロモビリティ(シティカー)領域と高級ブランド車領域という両極がBEVとの親和性が高いというのが昔からの筆者の見立てで、BEVには現状においてなお様々な制約(充電インフラ、航続距離、バッテリーの危険性とリサイクル、電力事情など)がある以上、そういう制約の影響を最小限に抑えることのできる小型車か、制約を経済パワーで乗り越える高級車のいずれかからBEVは一般化していくのだと思う。もちろん、国家の強力な後押しと電池の進化と価格の低下があって、ユーザーコストが劇的に下がるのであれば個人ユースの小型車クラスまで一気にBEV化が進むと思われるが。

2020年に発売が開始されたタイカン。グレード構成は下から標準仕様のほかに、「4S」、「ターボ」、「ターボS」。EVなのに何故ターボと思うだろうが、ポルシェには上位グレードに”ターボ”と付ける伝統があることからそうネーミングされたのだ。2021年には新たにオフロード仕様の「クロスツーリスモ」の予約を開始した(C)橋本玲
2020年に発売が開始されたタイカン。グレード構成は下から標準仕様のほかに、「4S」、「ターボ」、「ターボS」。EVなのに何故ターボと思うだろうが、ポルシェには上位グレードに”ターボ”と付ける伝統があることからそうネーミングされたのだ。2021年には新たにオフロード仕様の「クロスツーリスモ」の予約を開始した(C)橋本玲

 というわけでポルシェ初のBEV、「タイカン」である。既に詳しい解説と試乗リポートはひととおり出回った。実際にディーラーで試乗したというポルシェオーナーやEVファンも多いことだろう。さらには本命というべき「クロスツーリスモ」の予約も始まっている。今回は純粋にタイカンという“クルマ”の商品力に迫ってみたい。

 日頃からありとあらゆるブランドのクルマに試乗する機会のある筆者は、ポルシェらしさの枠組みというものを、歴戦の911マニアたちよりは間違いなく広く、さりとてポルシェをまったく知らない人よりは確実に狭く掴んでいると自負している。ポルシェに限らず、秀でたブランドには必ず“らしさ”がある。その境界線をどこで感じるか。それは経験が決めることでもあった。

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