「ドアミラーをたたむ」は日本独自のマナー!? 狭い駐車場やドアロック連動が後押しに?

クルマ側にもドアミラーをたたむメリットが

 実は、ドアミラーをたたむことはクルマ側にもメリットがあると考えられます。

ホンダ「N-BOX」のドアミラー。
ホンダ「N-BOX」のドアミラー。

 ドアミラーに通行人が接触するのを減らすことで、ドアミラーが傷付いたり破損したりするのを防ぐというものです。あくまでオーナー目線の考え方ですが、マナーというよりはこれを目的としてドアミラーをたたんでいる人もいることでしょう。

 また、ドアロックに連動してドアミラーが自動的に折りたたまれるクルマも多く存在しています。ドアミラーがたたまれることによって、ロックされていることを確認しているドライバーも今では少なくないようです。

 駐車時にドアミラーをたたむ文化はここ数年で急激に広まったように思われますが、もしかすると最大の理由は、このドアロックに連動して格納するドアミラーの普及かもしれません。

 その機能が備わっていないクルマのオーナーにも、駐車時にミラーがたたまれているクルマを多く見ることによってたたむ行為が波及したというわけです。

 ところで海外に目を向けると、駐車時にドアミラーをたたむという文化はほぼありません。

 駐車場スペースが広いアメリカはもちろん、路上での縦列駐車が多いヨーロッパでもドアミラーをたたんでいるクルマはそう多くはないのです。

 そこには、そもそもドアミラーが倒れるのは折りたたむためではなく歩行者と接触した際に衝撃を吸収するためであり、頻繁に動かすと壊れる要因になる(ことが多かった)という構造上の理由があります。

 また、アメリカでもヨーロッパでも並列駐車する際に日本ほどバックで止めず、前から突っ込んで止めることが多いことも影響しているようです。その止め方だと、クルマの脇を通る際にドアミラーが張り出していても邪魔にはならないからです。

 加えてアメリカや欧州では日本と違い、高級車以外は電動格納式ドアミラーの普及が遅かったという事情があります。たとえば、ポルシェに電動格納式ドアミラーが組み込まれたのは、991型の「911」が登場したわずか10年前のこと(それも標準採用ではなくオプション)。日本でも、手動式のドアミラーをたたむ人はかなり少ないのではないでしょうか。

 話を日本に戻すと、ドアミラーをたたんで駐車している人のなかには、マナーと考えてやっている人もいることでしょう。しかし、ドアロック確認や他人に傷を付けられないためなど、単に思いやりだけではない事情があります。

 ドアミラーをたたむ行為自体は総合的に考えるとやったほうがよいですが、とはいえ「マナーだから必ずやるべき」と強制する部類のものではないことも覚えておくとよいでしょう。

【画像】ドアミラーは「カメラ」「きのこ」タイプもあります(8枚)

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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