「ジャミロクワイ」ジェイ・ケイが仕上げたBMW「3.0CSL」にプレ値はつくのか?
元ジェイ・ケイのヒストリーつき3.0CSLが、約1750万円で継続販売中
今回、シルバーストーン・オークション社「The Race Retro Live Online Auction 2021」に出品されたシルバーメタリックのBMW3.0CSLは、イギリス市場向けに500台が製作されたとされる右ハンドル車の1台である。
中期型にあたる1972年の生産車両で、エンジンは206ps/5500rpmの最高出力を発生する3003ccバージョンを搭載する。
●1973 BMW「3.0 CSL directly from Jay Kay」
また、この時期から選択可能となったフロントの巨大なエアダムスカートやボンネット左右のフィンなどを装備する一方で、「バットモービル」というニックネームの起源となった、巨大なリアウイングは装備されていない。
ポップス界のレジェンドであるジェイ・ケイは、新車から数えて6人目のオーナーとして、2008年にこの3.0CSLを入手したという。
この個体はジェイ・ケイが購入した段階で、すでに一度レストアを受けていたとされる。新車時の元色は鮮やかなイエローだったそうだが、1984年にこの個体を手に入れたウェールズ在住の元オーナーのオーダーにより、BMW純正の「ダイヤモンド・シュヴァルツ(ダイヤモンドブラック)」に塗り替えられた。
次いで、この修復を担当したピーター・ウォルシュ氏が自ら入手。イーストサセックス州シェルウッドゲートのBMWスペシャリスト「ミュンヘン・レジェンド(Munich Legends)」社を介してジェイ・ケイに販売されるまでの間には、BMWカークラブなどが主催する様々なコンクールイベントなどに出品された事実も判明しているようだ。
また、再塗装に伴ってベアメタルの状態まで剥離してボディワークを施す傍ら、エンジンについてもマーレ社製高圧縮ピストンとハイカム、タイミングチェーンのフィッティングまで含めた完全なリビルドがおこなわれていたことも、車両に添付されたヒストリーファイルには事細かに記されている。
加えてビルシュタイン社製のスプリングとダンパーは、アルピナ製のアロイホイールともに新品に交換されたが、これらのアフターパーツは現在では事実上入手不可能とのことである。
2度目のレストアは、ジェイ・ケイのオーダーにより購入元のミュンヘン・レジェンド社でおこなわれた。当時7000ポンドを費やしたボディ総剥離の再塗装により、現在のBMW純正「ポラリスシルバー」に色替えされた。また、作業工賃だけでも2万650ポンドをかけてメカニカルパートのオーバーホールを行った上に、このプロセス中に取り付けられた部品のために、さらに8232ポンドが支払われたという。
この個体は、現在でもジェイ・ケイ本人がかなりの頻度でドライブを楽しむ一方、2020年10月には「クラシックヒーローズ」社に940ポンドを支払って燃料ポンプ、リレー、フィルターを新調。2020年12月には、ブレーキフルード交換などのフルサービスでさらに1295ポンドを費やしたばかりであることも、すべてサービスファイルに記載されている。英国での車検も残されており、手に入れたらすぐに走らせられる状態にあるのだ。
ちなみに、2020年5月の「THE MAY LIVE ONLINE AUCTION 2020」に出品された、同じく「元ジェイ・ケイ」の白い1972年型3.0CSLは、エアロパーツつきの「バットモービル」ではなく、当時の英国マーケットで選択可能だった「シティパッケージ」仕様。当時のロードユーズを見越して前後のバンパーなども装備された個体だった。
そしてエスティメート(推定落札価格)は13万5000ポンド−15万5000ポンド、日本円換算で約1814万円−2082万円に設定されていたものの、入札は振るわなかったようで、残念ながら「Not Sold(流札)」に終わっている。
一方、今回のシルバーの3.0CSLは、なぜかドル換算の14万−16万ドルでエスティメートが設定されていたが、オークションハウス側とジェイ・ケイとの間で合意していた「リザーヴ(最低落札価格)」にはまたしても届かず、前回の白い個体と同じく「Not Sold」という結果となってしまった。
現在ではシルバーストーン・オークション社営業部門によって、11万5000ポンド、日本円に換算すれば約1750万円のプライスで「Buy it now(継続販売)」となっている。
2000万円前後で推移してきた、近年のBMW3.0CSLのマーケット相場価格。さらに「元ジェイ・ケイ所有車」というヒストリーも合わせれば、なかなかリーズナブルとも思われるのだが、読者諸兄はいかが感じられるであろうか?
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