国内最高峰で戦い続けるTOM’S なぜ強豪でいられるのか? 舵を取る谷本社長に聞いた!
トムスが意識する「強くあること」の真意とは?
――では、もう一つの「強くあること」に関してですが、新たな取り組みなどは?
モータースポーツ活動で伸び代があるのは「データ分析」だと考えています。
F1などはスーパーハイテクな印象があると思いますが、日本ではそこまでではないのが現状です。そのため、従来よりもデータエンジニアの採用や育成を行なうなど、力を入れています。
――データ分析が進むと、どのようなことが可能になるのでしょうか?
レース前に予選/決勝共に想定セットを持ち込み、実際に走らせて調整していきますが、精度の高いデータを使うことができれば強みになります。
例えば、ドライバーがいうアンダーステアの原因をフィーリングだけでなくデータで解析できると短時間で解決が可能となりますよね。
実はその積み重ねが重要で、その結果常にトップ争いが可能となり、トータルで年間チャンピオンを争えるチームになれると考えています。
ドライバーはこれまでの実績から速いドライバーが集まるので、ここ3年で力を入れている部分です。
――データという意味では、36号車のメインスポンサー「au」は2016年からタッグを組んでいますが、彼らとのコラボなどは?
レースの魅力を伝えるには現状のメディアだけでは足りないと考えています。
そこでauの5Gを使った放映の形、車載動画の見せ方など、エンターテイメントの分野でテストマーケティングをおこなっています。
――何か取り組んでいることは?
例えばメインカメラ以外に各コーナーにいる観戦者がインターネットに5Gを介して映像を上げることでカメラワークは無限大になります。
その映像をAIを使って画像分析すれば常に36号車が映るような映像の提供も可能となります。現在、技術的な検証を進めているところです。
――つまり、auとは単純なスポンサーの関係ではないわけですね?
その通りです。ほかのスポーツは最新の技術を駆使して色々な情報を出してエンターテイメントコンテンツ化しているのに、日本のモータースポーツは昔と変わらないのは勿体ない。レースは面白いので、その伝え方ももっと変えていきたいなと。
――ちなみに先日提携発表をおこなった「デロイト・トーマツ」とはどのようなことを?
デロイト・トーマツとは「データ解析」の部分でタッグを組んでいます。彼らはアナリティクスチームを持っているので、レース人材の育成やマシンセッティング、次期マシン開発に活用していくことになります。
――ちなみにトムスはレース業界で正社員比率が高いと聞きますが、結束力やチーム力はもちろんですが、データの“蓄積”という部分でも強みだと思いますが?
メンバーが変わらないのは強みですが、その一方で同時に悪い面も滞留します。ただ、うちは世代交代が上手く進んでいて若手も多いです。
ドライバーだけでなく、メカニックもエンジニアも勝ちたいと思って所属しているので、「強くあること」は大事です。
――色々とお話しをお伺いしてきましたが、「今までのトムスと違うぞ」という部分が見えたような気がします。
社内では「伝統と革新」といっていますが、やはり本業であるレースで勝たなければダメです。優勝は時の運もありますが、常に勝てる位置にいることが重要です。
※ ※ ※
そんな36号車は岡山県の岡山国際サーキットで行われた2021年スーパーGT開幕戦「2021 AUTOBACS SUPER GT Round1 たかのこのホテル OKAYAMA GT 300km RACE」は、予選3位/決勝2位という結果でした。
しかし、関口選手は「予選で前からスタートできていたら展開は違っていたと思う。次戦では絶対ポールポジションを狙って、優勝したい」。
坪井選手は「周囲から良いレースをしたといわれたが、勝てるレースで勝てなかったのは本当に残念で悔しい」とドライバーの二人はコメント。
また、舘信秀チーム総監督のも「ペース的にはウチのほうが速かった。ドライバーとチームの頑張りは評価したいが、勝てるレースを勝てなかったことが残念でならない」厳しいコメント。
つまり、速かったのは36号車でしたが、強かったのは優勝した14号車だったわけです。
ただ、「2位でも悔しい」と思う気持ちこそが、強いチームである証だと感じました。
次戦は5月3日-4日に富士スピードウェイでおこなわれる「2021 AUTOBACS SUPER GT Round2 たかのこのホテル FUJI GT 500km RACE」ですが、その目標は……いうまでもないでしょう。
トムスって、GRブランドが出来てから存在が曖昧になったよな。