19台限定でイゾ・リヴォルタ復活! ザガートの原田則彦氏が「GTZ」のデザインについて語る

原田則彦氏、19台中12台が売約済みの「GTZ」のデザインを語る

 25年以上ザガートのチーフデザイナーとして活躍しているのは、日本人の原田則彦氏だ。今回、原田氏にもこのプロジェクトについて語って頂いた。

●受け継がれたイゾ・リヴォルタのDNA

マレッラ・リヴォルタ(左奥)と原田則彦氏(右)
マレッラ・リヴォルタ(左奥)と原田則彦氏(右)

「マレッラから、A3Cの雰囲気を出来るだけ再現するようにいわれましたが、もともと、A3Cはとても現代のロードカーでは再現不可能な、驚異的に低いプロポーションがハイライトなクルマです。

 また、レースカーとして仕立てられたせいもあってか、即興的に作られたように見える部分も多かったのです。しかし、60年代当時の最先端の技術が盛り込まれており、弾けるように奔放で、成長過程の自動車の持つ溌剌さが見る人を圧倒する、魔力的なクルマです。

 これは、たやすい事では達成できない、難しい仕事になると初めから感じていました。何よりも、自然と美しいと感じられるデザインで無くてはならず、私は、育ち盛りの少女が、その雰囲気や身のこなしはそのままにし、さまざまに経験を積み、立派な成熟した大人の立ち振る舞いを習得した美しい女性に成長した様なイメージを目指すことにしました。

 つまり、60年代と現在のギャップをポジティヴなものとして自然に捉えてゆこうと思ったのです」

 そしてマレッラは、最後にGTZを前に笑顔で次のように語ってくれた。

「ノリ(原田氏)は、誰よりもザガートのことを理解しているデザイナー。絶対の信頼のもと、私の要望をすべてこのクルマに取り入れてくれたわ。

 祖父が考える新生イゾ・リヴォルタはまさにこういう形になると思う。とても満足しているわ」

 この難しいプロジェクトは、ザガートのスピリットを誰よりも把握し、マレッラの人となりをよく理解している原田氏だからこそできた作業だろう。

イゾ・リヴォルタ「GTZ」の1号車
イゾ・リヴォルタ「GTZ」の1号車

 コロナ禍のなかで誕生したイゾ・リヴォルタGTZ。人の行き来もクルマの行き来もできない。そんなカスタマーが実車を実際に見る機会が無かった時期にも関わらず、すでに、スイス、アメリカ、イギリス、日本、フランスなどから12台の予約が入っており、現在4台目を製作中とのことだ。

 イゾ・リヴォルタのDNAが、マレッラを通してしっかりとこのクルマに受け継がれた。GTZの第1号車がザガートから旅立つ時、彼女の目から涙がこぼれ落ちたという。このような感動は彼女にとっては初めてのことだった。

 残念ながら彼女が生まれた時には、すでに祖父はこの世にいなかった。彼のスピリットを現代のイゾ・リヴォルタに取り入れるという作業はリヴォルタ家の一員として非常に責任が重かったという。

 このクルマを作る過程において、彼女はイゾ・リヴォルタの歴史をもう一度紐解き、クルマに対する祖父の情熱を感じ、想像のなかで祖父との会話や旅が出来たのではないだろうか。そして自分の体のなかにもイゾ・リヴォルタのDNAがしっかりと受け継がれいることを確信したに違いない。

 各業界で女性の進出が目立つ今日この頃。しかし自動車業界の経営陣の女性はまだまだ少ない。マレッラのような女性の活躍はこれからの自動車業界にとって、重要なのではないだろうか。イゾ・リヴォルタの次の展開も楽しみだ。

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