19台限定でイゾ・リヴォルタ復活! ザガートの原田則彦氏が「GTZ」のデザインについて語る

熱狂的なカーエンスージアストたちの間で、いまなお語りつがれるブランド「イゾ・リヴォルタ」。この半ば伝説となったブランドが、ザガートの手によって蘇った。イタリア在住のレポーター野口祐子が、プロジェクトの中心人物であるマレッラ・リヴォルタと、ザガートのチーフデザイナー原田則彦氏から直接ブランド復活の経緯を伺った。

「グランツーリスモSPORT」で復活したイゾ・リヴォルタとは

Writer:野口祐子(NOGUCHI Yuko)
Photographer:Luca Danilo Orsi

 2017年、Play Stationのゲームソフト「グランツーリスモSPORT」に突如現れたIso Rivolta(イゾ・リヴォルタ)「ヴィジョン・グランツーリスモ」。イゾ・リヴォルタといえば、1964、1965年にル・マン24時間レースのクラス優勝を果たしたイゾ・リヴォルタ「A3C」の勇姿が思い出される。

マレッラの指揮によって完成したイゾ・リヴォルタ「GTZ」
マレッラの指揮によって完成したイゾ・リヴォルタ「GTZ」

 A3Cは、1963年のトリノショーのイゾ・リヴォルタのブースでデビュー。当時ベルトーネに在籍していたジウジアーロがデザインし、フェラーリのエンジニアとして「250GTO」などのエンジン開発に携わったジョット・ビッザリーニが車両全体の開発を担当、そしてシボレーのエンジンを搭載しイタリアとアメリカの融合のプロジェクトということで話題を呼んだクルマだった。

 イゾ・リヴォルタは、1939年に暖房器具や冷蔵庫などの熱交換器機製造会社を買取ったことからスタートする。戦後、オーナーのレンツォ・リヴォルタの決断でバイク、スクーターの製造に取り掛かり、その後クルマの製造にまで拡大していく。

 先ずは小型車「イセッタ」が誕生した。時代の流れをうまく察したこのバブルカーは大人気を呼び、海外製造ライセンス契約もおこない、BMWでは16万台という生産台数の大ヒットとなった。

 その後、グランツーリズモのクラスに参入し、1962年「IR300」を発表。そこから派生したスポーツタイプのA3Cはレースの世界で大活躍。(因みに同時に発表した「A3L」は後の「グリフォ」に続いていく)。

 ル・マン24時間レースで好成績をあげ、多くの人に感動を与えたイゾ・リヴォルタは、続いてF1の世界にもウイリアムズのチームで参戦という実績を作った。50年代から70年代はモータースポーツの世界に多くのカーメーカーが夢を抱いて参入していた時代。イゾ・リヴォルタも創設者、レンツォ・リヴォルタの夢をのせて多くのストーリーを生んだ、イタリアのカーメーカーのひとつである。

 ところが時代の流れには逆らえず、「IR300」、「IR340」、「グリフォ」、「Fidia」、「Lele」、「Veredo」と数々のモデルを発表しつつも経営難に陥り、残念ながら1974年倒産。その後1990年代に一度グリフォ復活の噂があったが実現せず、イゾ・リヴォルタの復活を耳にする事はなかった。

●プレステ4でイゾ・リヴォルタが蘇った

2017年、「グランツールーリスモSPORT」に登場した架空のクルマ、イゾ・リヴォルタ「GTZ ヴィジョン・グランツーリズモ」。写真はモックアップ
2017年、「グランツールーリスモSPORT」に登場した架空のクルマ、イゾ・リヴォルタ「GTZ ヴィジョン・グランツーリズモ」。写真はモックアップ

 さて、2017年にPlay Station「グランツールーリスモSPORT」で復活を遂げたイゾ・リヴォルタ。新モデルはイゾ・リヴォルタと同じミラノで生まれた老舗のカロッツェリア・ザガートがデザインを担当。フロントには懐かしいグリフォ(鷲獅子、鷲の翼と上半身とライオンの下半身を持つ伝説の生物)の姿が堂々と輝いでいた。

 このグリフォのマークを見て当時を知る人は、ル・マン24時間レースでの活躍を思い出したことだろう。そしてその時代に生まれていなかった若者もその姿に魅了されたのか、プレビュー数は1億5000万回を超えたという。こうしてヴァーチャルの世界ではあるが、イゾ・リヴォルタの存在が、世界中の多くのファンの目に触れることになった。

 そして、その3年後となる2020年、実物のイゾ・リヴォルタGTZが、ザガートのデザインにより蘇った。エンジンは60年代のグランツーリスモと同様に、アメリカのシボレー「コルベットZ06(C7)」のエンジンを搭載。660psの6.2リッターV8により、最高速度315km/h、0−100km/h加速3.7秒を達成した。そしてザガートが誕生した1919年の数字に因んで、19台生産と発表されるに至った。

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