19台限定でイゾ・リヴォルタ復活! ザガートの原田則彦氏が「GTZ」のデザインについて語る
創業者の孫がイゾ・リヴォルタを復活させた
さて、このイゾ・リヴォルタGTZ誕生にあたり、なくてはならない人物がいる。
それは、イゾ・リヴォルタの創設者、レンツォ・リヴォルタの孫にあたるマレッラ・リヴォルタだ。彼女は1996年にザガートの株主となり、以降ザガートの経営に携わっている。
その彼女が、イゾ・リヴォルタGTZのアートディレクターとしてプロジェクトの指揮をとったのだ。
今回、直接マレッラ・リヴォルタに話を伺う機会を得ることができた。
ベージュのセーターにピンクのマフラーとピンクのパンツ。彼女はいつも洗練された出立で現れる。まず、初対面の殆どの人は彼女の透き通るようなブルーの瞳に吸い込まれてしまうだろう。そして聴く人を飽きさせない、力強い彼女の語りにも魅了されるだろう。
「私は女性というより、男性的といわれるの。」と自らもいうように、決断力、行動力といったリーダーに必要な要素をすべて備えた女性だ。
彼女が生まれた時には祖父のレンツォは既に亡くなっており、父のピエロもクルマの世界とは別の仕事に携わっていたので、家のなかではあまりイゾ・リヴォルタに纏わる話はしなかったようだ。大学に通う頃に周りからイゾ・リヴォルタの話を聞くようになり、そこで初めて祖父が起こしたイゾ・リヴォルタの数々の偉業を知ることになったそうだ。
彼女はアメリカの大学を卒業後、仕事の関係でアンドレア・ザガートと出会い、1996年、カロッツェリア・ザガートの株主のひとりとなった。
●ブランド復活の環境は整った
「カロッツェリア・ザガートの経営者として、もっと前にイゾ・リヴォルタの復活のクルマを開発することでもできたのでは?」との質問に、彼女は次のように答えた。
「ブランドを蘇えさせるということは、とくに自動車の世界では簡単なことではないのよ。時代の状況を察知すること、軸となるしっかりとしたコンセプトを立て、それに沿って綿密なプログラムを立てることが重要。それに伴うエネルギー、勿論大きな投資もしなくてはならないでしょ。
過去、投資家や情熱家が昔のブランドを蘇えらせようといくつかのクルマが復活したけれど、プロトを出してその後、続いている話はあまり聞かないと思わない?
私はイゾ・リヴォルタの孫として、この名前に傷つける事はしたくなかったの。心の準備、そのほか、確実な環境が整うまで待っていたかった。
数年前にPlay Station『グランツーリスモSPORT』の話が来て、仮想の世界のなかでイゾ・リヴォルタがグリフォのマークを付け参加することになったの。今まで眠っていたイゾ・リヴォルタへの世間の反応を知るためにもね。
その結果、世界中にファンの存在を確認することができて、確かな手応えを感じることができたのよ。ファンの心を目覚ませることができたの」
彼女はこれで環境は整ったと判断し、実車製作を決断する運びになったという。
実車はヴァーチャル上のアグレッシブなイゾ・リヴォルタと違い、イゾ・リヴォルタのコレクターをターゲットにプロジェクトを開始することとなった。
コンセプトはエレガントと同時にスポーティであること、無駄なものを排除したシンプルなラインであること、そしてクルマ全体にハーモニーがあること。
60年代のイゾ・リヴォルタのレトロなテイストを、新しいイゾ・リヴォルタGTZに取り入れることになった。祖父のレンツォは大のスピードファン。彼のコンセプトはレースにも参加可能な公道を走るGTカーを作ることだった。そして彼はその夢を見事にル・マン24時間レースのクラス優勝で果たした。そんな彼のスピリットはサーキットで果敢に戦ったイゾ・リヴォルタA3Cにある。プロジェクトはこのA3Cを中心に始まった。
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