高速道路で右車線を走るトラックがいるのはなぜ? ゆっくり追い越しするのには理由があった
高速道路でトラックが右側車線を走るのには理由があった
さまざまな規制があるトラックですが、高速道路で右側車線を使って追い越しするケースがあるのはなぜでしょうか。
高速道路でトラックが左側の第一車両通行帯以外を走行する理由について、現役トラックドライバーS氏に話を聞いてみました。

「トラックのなかでも大型トラックは、高速道路では時速80kmまでと制限されており、搭載されるスピードリミッターによって出せても時速90kmです(総重量8t超の場合)。
荷物を含めると10t近くも重量があるため、1.5t程度の乗用車から見れば加速も鈍く、かなり遅く感じるかもしれません。
また、制動距離も数倍必要になります。デジタルタコグラフによって制限速度を遵守しながら、安全かつ正確に荷物を届ける必要があります。
ほとんどのトラックドライバーはできるだけ同じ速度で巡航したいと考えており、通常の左側車線でスムーズに走れるならそうしたいのが本音なんです」
ちなみに、トラックによっては運送会社独自の自主規制速度があり、搭載される「デジタルタコグラフ」という機器で速度などを常時記録されています。そのため、昔のような爆走トラックはほとんどいなくなったそうです。
そして、一定の速度で走行することで燃費を稼ぎ、無駄なブレーキも踏まずに走りたいトラックにとって、高速道路の高低差による速度変化もできれば避けたいところです。
しかし上り坂になって速度が低下していることに気がつかない乗用車ドライバーも多く、トラックとしては一定の速度を保ちたいがゆえに車線変更して追い越し車線に出るしかない、というのが実情なのだといいます。
「一度スピードが落ちてしまうと、重量が重いトラックが巡航しやすい速度に戻すまでに時間も燃料もかかってしまいます。また積荷のことを考慮しながら走行するので、急ハンドルや急制動は避けるために車線変更していると考えていただいて結構です」(トラックドライバー S氏)
ちなみに、トラックが別のトラックを追い越すのもこの巡航スピードを維持したいためであり、追い越し速度が遅く感じるのは乗用車のような加速ができないのとスピードリミッターが作動して速度が上がらないからなのだとか。
アクセルをベタ踏みしても時速90kmしか出ないのであれば、追い越しに時間がかかるのも当然です。
「昔と違ってドラレコも装着されて記録も残りますので、あおり運転のようなムチャな運転をするトラックドライバーはほとんどいないと思います。
もしトラックにあおられていると感じた場合は、勾配などによってご自身のクルマの速度が遅くなっている可能性もあります。
こちらも丁寧な運転を心がけているので、トラックの追い越しも優しい目で見ていただければ嬉しいです」(トラックドライバー S氏)
※ ※ ※
制限速度は時速80kmで、デジタルタコメーターで速度を監視されるなど制約の多いなかでトラックは走行しています。
右側車線を走るのは、あくまで一定の速度を保つためで、追い抜きが完了すれば左側の車線にできるだけ早く戻りたいのだそうです。
厳しい条件下でもプロとして走り続けているトラックが高速道路で右側に車線に出て追い抜きしようとしていたら、乗用車側は車間距離を空けて追い越しが完了するまで待つという心の余裕を持ちましょう。
Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ
2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。













