クルマの顔に横長ライトなぜ増えない? リアは続々採用もフロントデザインに採用されない理由

後ろは採用増加も前に横一文字デザインを見かけない訳とは

 横一文字型、もしくはリアエンドを横断するようなデザインのLEDテールランプは、今後も増えていくことが予想されます。

 一方、フロント部分には横一文字型のヘッドライトを採用している車種はほとんど見当たりません。

 前述のLS600hを皮切りに、ヘッドライトにもLEDが採用されることが多くなってきました。

 また、欧州では早い段階から事故防止などのために義務化され、2016年に日本国内でも規制緩和により採用される事例が増えた「デイタイムランニングライト」は、LEDの普及と大きく関係しています。

 しかし、保安基準上の制限が多いヘッドライトは、リアコンビネーションランプ以上にデザイン上の自由度が低くなってしまうというのが各メーカーの本音のようです。

水平基調のデザインは最近のトレンドといえる(画像:ホンダ新型ヴェゼル)
水平基調のデザインは最近のトレンドといえる(画像:ホンダ新型ヴェゼル)

 ヘッドライトの最大の目的は、前面を明るく照らすことです。当然のことながら、明るさについても各国で厳格な基準が設定されています。

 日本の場合、ハイビームは「前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること」、ロービームは「自動車の前方40mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有すること」などの規制があります。

 LEDランプは極めて小さい点光源の集合体であり、大きな光量を得るためには、多くのLEDを集積させ、かつ大きな電流を流す必要があります。

 そうすることでヘッドライトとして十分な光量を得ることは可能です。しかし、熱に弱いというLEDの特性を考慮すると、ヘッドライトに使用されるほどの大光量に耐えうるだけの耐熱・放熱設計を施す必要があります。

 比較的大きなコストをかけやすい高級車にLEDヘッドライトの採用が偏っているのはこうした理由があります。

 したがって、横一文字型のヘッドライトを実現するためには、十分な光量を得られるようLEDを集積させ、なおかつ十分な耐熱・放熱設計を施すことが必要不可欠ですが、コスト面なども含めて、まだまだ実用的ではないと考えられます。

 しかし、2021年4月に発表された韓国ヒュンダイの多目的ミニバン「スターリア」では、横一文字型のヘッドライトが採用されました。

 とくに、最上級モデルである「スターリア プレミアム」では、その近未来的なスタイリングが話題になっていますが、SFチックなこのヘッドライトがそうしたイメージづくりに一役買っているといえます。

 スターリアは日本市場に導入する見込みが低いため、日本国内の保安基準に適合するかどうかは不明ですが、韓国以外にも東南アジアなど複数の市場で展開されることを考えると、一定の基準は満たしていると考えられます。

 スターリアの動画を見ると、横一文字型のヘッドライトだけで前面を照射しているわけではなく、フロント下部の両サイドに設けられた大型の副照明と組み合わせることで十分な光量を確保しているようです。

 したがって、横一文字型の部分に過度にLEDを集積させる必要がなく、その分耐熱や放熱にかかるコストの抑えられているといえるでしょう。

 こうした工夫によって、横一文字型をはじめとするまったく新しい形状のヘッドライトが、日本国内でも今後見られるようになるかもしれません。

※ ※ ※

 ヘッドライトのデザインは、クルマの印象を決定づけるものというデザイン上の大きな役割を持っています。

 保安基準などの制約も多い部分ではありますが、技術の進歩とメーカーの創意工夫によって、新たなデザインのヘッドライトが登場することを期待しましょう。

【画像】フロント横一文も良いかも! 豪華な韓国ミニバンを見る! (39枚)

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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