韓国ヒュンダイが日本で「年間販売ゼロ」記録も乗用車市場復帰をもくろむ訳

日本の乗用車市場への再参入はあり得るか?

 一方、ヒュンダイには別の噂もあります。それは乗用車部門の日本市場復帰です。

 前述のとおり、日本市場からは2009年をもって撤退しているヒュンダイの乗用車部門ですが、その後は、コストパフォーマンスとデザインに優れたクルマを続々と発売し、グローバルでは大きく成長しています。

 一部の海外市場では、日本車と同等以上の売れ行きを見せていることからも、かつてのヒュンダイ車と比べて、品質は大きく向上しているといえます。

 そんなヒュンダイにとって、世界の主要市場のひとつである日本において、売れ行きが悪いどころか販売すらできていないことについて、忸怩(じくじ)たる思いをもっていることでしょう。

 真のグローバルメーカーになるために、日本市場復帰はヒュンダイにとって悲願といえます。

 しかし、いくら品質が向上したからといって、日本市場と日本車と対抗するのは難しいでしょう。そこで、ヒュンダイは燃料電池自動車(FCV)である「ネッソ」を軸に、展開すると考えられます。

 水素と酸素の化学反応によって生じる電気を利用して走るFCVは、次世代のクルマとして期待されています。

 その技術は日本がリードしているといわれており、トヨタやホンダがFCVの市販に成功しています。一方、ヒュンダイもまた、ネッソによってFCVの市販化に成功しているメーカーのひとつです。

 ただ、FCVには水素を充填するための水素ステーションが必要です。水素ステーションの拡充には官民一体となった施策が必要であり、多くの国ではまだインフラ整備が整っていないのが実情です。

 ネッソも当初は北米市場をメインターゲットに展開していましたが、シェールガスの発掘によってガソリン価格が低下したことで、北米での水素ステーション拡充はトーンダウンしてしまいました。

 一方、日本は世界でもっとも水素ステーションが整備された国であり、将来的にも増加することが見込まれています。ヒュンダイはここに目を付けて、FCVであるネッソを日本で販売すると考えられているのです。

 実際、ヒュンダイはFCV関連のイベントにネッソを出展したり、一般向けイベントを開催したり、さらにはカーシェアリングにネッソを提供するなどのマーケティング活動をおこなっています。

 また、日本語かつ日本で撮影された写真素材を使用した公式ホームページも公開されています。

 ヒュンダイ・ジャパンの関係者は「日本市場復帰については未定」と話しますが、これらの背景を見ると、いつでも市場復帰できる準備はなされていると考えられます。

ヒュンダイの大型バス「ユニバース」(海外仕様、画像はヒュンダイ トラック&バス グローバルサイトより)
ヒュンダイの大型バス「ユニバース」(海外仕様、画像はヒュンダイ トラック&バス グローバルサイトより)

 しかしここで気になるのは、前述した商用車部門の不振です。商用車と乗用車では市場のニーズも考え方も異なり、また、日本における会社組織も異なるため、両者を同様に捉えることはできませんが、前向きに働かないことは事実でしょう。

 ただ、商用車も乗用車も、すべては新型コロナウイルスの動向に依存しているというのが正直なところでしょう。

 新型コロナウイルスが一定の収束を見せれば、商用車も乗用車も需要は回復すると考えられるほか、物流やアフターサービスネットワークの構築にも目処が立つため、いよいよ本格的に市場復帰を検討することができます。

 馴染みのない、あるいはあまりポジティブなイメージのない韓国車ですが、ユーザーにとって選択肢が増えることは決して悪いことではありません。

※ ※ ※

 ヒュンダイの商用車部門の撤退が事実となれば、新型コロナウイルスによる大きな影響のひとつといえます。

 また、乗用車部門の日本復帰が噂のまま立ち消えれば、それもまた新型コロナウイルスの影響といえるのかもしれません。

【画像】日本ではFCVで勝負!? ミドルサイズSUV「ネッソ」を見る(42枚)

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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