日産ガソリン車早くも無くす? なぜ新型車「ノート」「キックス」はHV専用車になったのか

価格の面で法人需要に応えられないと他社に顧客が流出する可能性も

 さらに、ノートのようなコンパクトカーは、価格の安さを重視する法人の需要も多く、まとまった台数を定期的に乗り替える手堅い顧客でもあります。

 しかも新型ノートがe-POWERのみになって価格が高くなり、法人の予算に合わなくなりヤリスに乗り替えられると、その法人が使っている日産「NV350キャラバン」や「NV150AD」までトヨタ「ハイエース」や「プロボックス」に切り替わる可能性があります。

日産新型「ノート」
日産新型「ノート」

 トヨタのセールスマンが積極的なら、ヤリスへの乗り替えで生じた新しいつながりを生かし、その法人が使うほかの車両も自社製品に変えてもらおうと売り込むでしょう。

 いい換えると自社の顧客は、なるべく他社とは接触させず囲い込みたいということです。

 そこで、例えば軽自動車の事業から撤退したマツダやスバルなども、それまでと同じようなモデルのOEM車を導入しています。

 軽自動車のOEM車を売ってもほとんど儲かりませんが、商品ラインナップの穴を塞ぎ、顧客が他社へ流出するのを防ぐわけです。

 その意味では、新型ノートでガソリンエンジン車を廃止したことは、ほかの日産車の売れ行きにも影響を与える可能性があるといえます。

 新型ノートにはないガソリンエンジン車の穴を埋められる車種に「マーチ」があります。以前は衝突被害軽減ブレーキなどを装着していませんでしたが、2020年7月の改良で採用されました。実用装備を充実させた「X・Vセレクション」の価格は148万5000円です。

 マーチの売れ行きを見ると、安全装備を充実させる前に比べて少し上向きましたが、それでも2021年1月と2月の平均は約880台です。この販売規模ではノートのガソリンエンジン車の代わりにはなりません。

 現行マーチは2010年の発売で設計が古く、発売直後には1か月平均で約3300台登録されましたが、いまは大幅に減りました。

 これでは先代ノートのガソリンエンジン車を使う人達は、乗り替える車種がなくて困っているのではないでしょうか。

 ノートやキックスがe-POWER専用車になった事情も含めて、販売店に尋ねると、以下のような返答でした。

「いまの日産はe-POWERをブランドイメージの柱にしているので、ノートやキックスのグレード構成もe-POWERのみです。その代わり価格も高くなりました。

 とくにノートは、安価なグレードを求めるお客さまも多く、そこで『デイズ』と『ルークス』を推奨しています。軽自動車ですが車内は広く、安全装備も先進的です。運転支援機能の『プロパイロット』も選べます。

 マーチも改良により安全装備を充実させましたが、プロパイロットなどは、デイズやルークスのほうが先進的です。車内も広く、デイズの価格はマーチと同程度なので、従来型のノートも含めて幅広いお客さまに推奨しています」

 最近は軽自動車の人気が従来以上に高まり、2020年に国内で販売された日産車のうち、軽自動車が43%を占めました。

 そのために低価格帯は軽自動車に任せる考え方もありますが、上級車種のルークスでも、価格帯の上限は約170万円です。

 ノートの売れ筋になる「S」は218万6800円で、これにプロパイロットを含めたセットオプション(42万200円)とLEDヘッドランプのセットオプション(9万9000円)を加えると、総額は270万6000円に達します。

 キックスXも、プロパイロットやLEDヘッドランプを標準装着して275万9900円です。

 こうなるといまの日産のラインナップでは、170万円から220万円という日本車の中心的な価格帯が抜けています。

 今後の展開として、少なくともノートのガソリンエンジン車は、150万円から180万円で設定する必要があるでしょう。

 マーチを直近にフルモデルチェンジするなら話も変わりますが、いまの日産の動向を考えると期待しにくいです。

 さらにキックスのガソリンエンジン車も190万円から240万円で設定すれば、ラインナップが整います。

 SUVタイプの電気自動車「アリア」のように、イメージリーダーになり得る車種も大切ですが、お求めやすい価格で手に入るノートやキックスのガソリンエンジン車は欠かせません。

 今後これらのグレード構成を充実させると、日産の快進撃が始まると思います。

日産・ノート のカタログ情報を見る

日産・キックス のカタログ情報を見る

【画像】スタイリッシュなノート&キックス! プレミアムなカスタムカーをチェック(40枚)

まさか自分のクルマが… 高級外車のような超高音質にできるとっておきの方法を見る!

画像ギャラリー

Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

1 2

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー