産学官連携でどう進む? 自動運転推進の国家プロジェクト「SIP-adus」の現状とは?

ホンダが2021年3月に自動運転レベル3を実用化した新型「レジェンド」を発売するなど、自動運転技術の進化が進むなか、東京都内で「SIP 第2期 自動運転 中間成果発表会」が2021年3月25日・26日に開催されました。いったい、どんな内容が発表されたのでしょうか。

SIP第2期の4つの重点テーマとは

 2021年3月25日から26日にかけて、東京都内で「未来を変える自動運転ショーケース」と題し「SIP 第2期 自動運転 中間成果発表会」が開催された。

東京臨海部実証実験参加車両(金沢大学) ※フォト:SIP cafe
東京臨海部実証実験参加車両(金沢大学) ※フォト:SIP cafe

 昨今、自動運転の実証実験が全国各地でおこなわれ、ホンダからは自動運転レベル3の新型「レジェンド」が発売されるなど、自動運転への関心も高まりつつある。

 じつは、自動運転の社会実装に向けて、2014年に府省が分野の枠を超えて連携し、産学官体制が発足。自動運転の基礎研究から実用化、事業化までを見据えた取り組みを「SIP-adus」という名のもと、国家プロジェクトとしてスタートした。

 SIP-adus(Automated Driving for Universal Services)は、自動車メーカーをはじめ、内閣官房、警察庁、総務省、国土交通省、経済産業省など関係省庁が参加。

 第1期では、自動運転に必要な高精度3D地図の構築と配信や、車両のサイバーセキュリティ評価手法の確立などを実施。

 2018年に始まったSIP第2期では、テーマ名を「SIP自動運転(システムとサービスの拡張)」に改め、技術開発中心のフェーズから自動運転の実用化に向けたシステムの進化とサービス拡張のフェーズに移行。

 東京臨海部及び中山間地域でさまざまな事業者や自治体等参加による実証実験などを重ね、社会実装に向け取り組んでいる。

 2020年度を実用化、事業化に向けた重要なマイルストーンと位置づけ、中間成果発表会が実施されたというわけだ。

 第2期では以下の4つの重点テーマが掲げられている。

1.交通環境情報の構築と発信
2.仮想空間での安全性評価環境の構築
3. サイバーセキュリティ(侵入検知システム)の評価手法の確立
4.地理系データの流通ポータルの構築

 高度な自動運転は、カメラ、ミリ波レーダー、LiDARなど、車両に搭載されたセンサーから得られる情報とインフラなどの車両外部から得られる情報、そして高精度3D地図情報を用いて自車位置を推定することで走行経路を計画する。

 SIP自動運転では静的情報である高精度3D地図情報と、さまざまな機関が所有し時間とともに変化する位置特定可能な動的データ(動的情報、準動的情報、準静的情報)とを紐づけたデータベースを“ダイナミックマップ”と呼び、その構築と配信、ならびに流通促進に取り組んでいる。

 現在のカーナビシステムよりも高度で情報量が多く、道路交通インフラなどさまざまな方法で得られる情報をダイナミックマップに反映させることで、自車の位置や周囲の状況を、高精度で切れ目なく把握することが可能になる。

 ふたつめの仮想空間での安全性評価に向けては、システムの外界との接点となるカメラ、ミリ波レーダー、LiDAR等の各種センサ ーを同時に評価ができるシミュレーション評価基盤(DIVP:Driving Intelligence Validation Platform)の構築が実施されている。

 これはシミュレーションに係るツールとインターフェースなどを自動車メーカー、サプライヤー間で共通化することにより、業界全体としてレベルアップを図り、産業競争力の向上を目指すもの。

 研究開発には専門的な知見を有す12のエキスパート団体が参加。物理現象に基づきセンサー原理をシミュレーションモデル化し、現実世界に対して高度な一致性を有するシミュレーション評価環境を実現した。

 今後はシミュレーション評価基盤の性能向上とプロセス化を進めると共に、2021年度からはデータベースの構築に着手。2022年の社会実装を目指している。

【画像】「未来を変える自動運転ショーケース SIP 第2期 自動運転 中間成果発表会」会場の様子を見る(10枚)

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