EV化進むもなぜ日産「リーフ」販売落ち込む? 今後は防災需要に期待か

充電サポートの値上げも要因?

 さらに、日産が提供する充電サービスの内容に変更があったことも、リーフの売れ行きにブレーキがかかった一因と指摘されています。

 2019年12月16日、日産はリーフのマイナーチェンジに合わせて充電サポートプログラム「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム」の内容を変更しました。

 これまで提供されていた「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム2」では、月額2000円(税抜)を支払えばNCS(合同会社日本充電サービス)の充電スポットにある急速充電器を無料で使い放題でした。

 しかし、「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3」ではこれが廃止され、コースごとに設定された月額基本料金にプラスして、充電回数に応じた料金を支払うシステムに変更されました。

 その結果、自宅に充電設備を持たない、マンションなどの集合住宅に住むユーザーなどにとっては、充電料金の負担が増すこととなります。

 日産は変更の理由について「自宅に充電設備があるユーザーも急速充電での運用をすることが多くなり、一部の急速充電器の順番待ちが恒常化」していることを挙げています。

 これについて、前出とは異なる日産の販売スタッフは、次のように話します。

「走行条件にもよりますが、『ノート』や『セレナ』などのe-POWER搭載車のほうがお得だと判断されるケースは多くなりました。

 また、他社からも多様な電気自動車が登場したことで、お客さまの選択肢が増えてきたことも要因だと思います」

 国内での電気自動車では、2009年の初代リーフや三菱は「i-MiEV」を皮切りに、2011年に「ミニキャブMiEV」、2013年に「ミニキャブMiEVトラック」を投入。

 テスラは2014年「モデルS」、2016年に「モデルX」、2019年に「モデル3」が登場しました。

 2020年に入ると、ホンダ「Honda e」、プジョー「e-208」、DS「DS 3 CROSSBACK E-TENSE」、レクサス「UX300e」、2021年はマツダが「MAZDA MX-30 EV MODEL」を発売するなど、国産、輸入車メーカー問わずライバルも増えてきています。

 こうしたライバルが増えてきた状況について、日産の販売スタッフは以下のように話します。

「リーフは進歩的なお客さまには根強い人気があります。競合が増えることはEVに関する理解が深まることになり、発売10年を越える実績のあるリーフには追い風になると思っています」

V2H (Vehicle to Home)のイメージ図(画像:日産)
V2H (Vehicle to Home)のイメージ図(画像:日産)

 また、日産はリーフを防災対策としての活用する動きを進めており、次のように説明しています。

「防災対策にぴったりな蓄電池は、従来の定置型蓄電池だと消防法の関係上17.76kWhまでの容量しか設置出来ません。

 しかし、リーフとV2H(クルマの電器を過程で使用するシステム)を組み合わせることで、40kWh仕様と62kWh仕様のふたつの大容量バッテリーを搭載しています。

 そのため、4人家族で2日から4日間過ごす電力を家全体に供給することが可能で、万が一の災害時も密を避けて自宅をシェルターに出来るから安心だといえます。

 また、コスト面では例えば定置型蓄電池(7.2kWh)が約200万円となり、1kWhあたり28万円です。

 しかし、クルマとしても使えるリーフ(40kWh)で約400万円、さらにV2Hが約80万円と一見割高ですが、1kWhあたり12万円と経済的です。

 さらに、【令和2年度第三補正予算】にて既存の『CEV補助金』に加えて『環境省補助金』または『経産省補助金』が新設されました。

 これにより、電気自動車と充放電器(V2H)や外部給電機(V2L)などに対しての補助金が出るため、より電気自動車のハードルが下がったと考えられます」

※ ※ ※

 世界一との称号を受けていたリーフですが、世界的にEV化が進み、ますます新技術が搭載されたクルマが登場してくることでしょう。

 ですが、実際のところ人気に陰りが見えているとはいえ、月に1000台前後の販売台数を誇る電気自動車は国内にはなく、まだまだ電気自動車におけるけん引役といえるでしょう。

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