隣接県で10円/L差も!? ガソリン価格の地域差なぜ存在?「輸送費だけじゃない」理由とは
輸送費だけじゃない? ガソリン価格に地域差ある理由とは
しかし、話はそれだけではないようです。
資源エネルギー庁からは石油製品に関する卸売価格の調査もおこなっており、都道府県ごとの平均価格が公表されています。
その最新データ(令和3年1月分なので前出の小売市況調査とはタイミングが若干ずれている)を見ると、埼玉県の卸売価格平均はレギュラーガソリン1リッターあたり108.4円。
いっぽう長野県は110.8円と、価格差があるにはあるものの、販売価格ほどの開きはないから不思議です。
ガソリン小売価格が安めの千葉県、宮城県、和歌山県、岡山県はそれぞれ107.8円、109.4円、109.2円、108.0円。一方、高めだった山形県、福井県、島根県、長崎県、鹿児島県はそれぞれ109.8円、109.8円、109.6円、112.8円、109.7円。
比べてみると、長野県と同様に卸売価格には販売価格ほど大きな価格差がないことがわかります。仕入れ値には輸送コストも含まれています。
つまり、一般論としてガソリン価格の高い地域は輸送コストを反映した仕入れ値も高めではあるものの、その価格差がそのまま販売価格に反映されているわけではないということです。
むしろ、仕入れ値には小売価格ほど大きな地域ごとの価格差はないといっていいでしょう。

販売価格は、卸売価格以上に地域ごとの価格差がついているということになります。
果たして、大きな価格差のある地域が存在する理由はどこにあるのか。
その答えは一概に結論付けられるものではありませんが、ふたつの理由が考えられます。
ひとつは「販売量の違い」。販売価格が高い県は山間部や過疎地域など人口の少ない地域も多く、そういった地域ではガソリンスタンドあたりのガソリン販売量が少なくなります。
そのため店の経営を成り立たせるためには、利益率を上げるしかありません。そこでガソリン価格が高くなりがちなのです。
もうひとつ、「競争原理が働きづらい」ともいえそうです。山間部や過疎地域にはもともとガソリンスタンドの数が少なく、隣り合うガソリンスタンド同士が激しい価格競争をしている都市部とは事情が異なるのです。
そういった要因の結果として、安い地域に比べるとレギュラーガソリンが1リッターあたり10円以上も違うという状況が生じてしまうと考えられます。
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ガソリンスタンドの数はここ25年ほどで約半減したという統計があります。クルマの平均燃費が向上したことで、以前に比べてガソリン消費量が減りました。
そのためガソリンスタンドのおかれている状況が厳しいのは都市でも山間部など人口の少ない地域でも変わりませんが、ガソリン価格が高い地域には輸送コストだけでは片づけられない事情があるといっていいでしょう。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

















